闇き棺に眠れ 〜猫〜
最初のご注意!!
これはパラレルです。
完全なオリジナルと考えてください。
現代モノです。
剣心が内閣お抱えの特殊公務員になってたりします。
危険一杯の任務を日夜遂行してたりします。
死と隣り合わせってヤツです。
薫ちゃんの家に下宿してます。
勿論仕事の事は内緒です。
お気楽スチャラかフリーターと偽ってます。
まだ二人は恋人同士じゃないです。
以上の事を踏まえてそれでも読んでやろうと思った方は下をどうぞ・・・
戻るのならこちら(>_<)
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痛む右肩を騙し騙し、ようやく家に辿り着いた時にはもう剣心は立っているのがやっとの状態だった。
それでも家に帰ってきたのは偏に薫を心配させたくないからだ。
門をくぐったら普通の顔をして、おはようの挨拶を言って学校に行く薫を送り出せば良い。
だが妙に勘の鋭い薫を何処まで騙しきれるかが問題で、いっそのこと怪我の事は隠さずに上手く誤魔化す方が良いのだろうか?
早朝家の門の前で立ち尽くす剣心に一人関心を寄せた人物がいた。
それは・・・
にゃぁ〜
剣心の足元に何時の間にか全身真っ黒の猫が擦り寄っていた。
金色の瞳が真っ直ぐに剣心を見上げる。
「ノアール。こんな時間に散歩かい?」
優しく話し掛けて抱き上げると猫は軟らかな体を剣心に凭せ掛けて安心しきった欠伸を漏らす。
ノアールは剣心が雨の日に拾って来た捨て猫で、今は薫が飼っている。
ずぶ濡れになった艶の有る黒い毛に目を奪われて剣心はつい足を止めてしまった。
自分が猫など飼える筈など無いのに気が付いたら腕に抱きかかえて家に連れて帰ってしまったのは、きっとその黒い毛並みの為に捨てられてしまった猫に自分を重ねてしまったから。
安い同情だったかも知れない。
ただ、放っては置けなかったから・・・
にゃ?
ノアールがふと顔を上げて声を上げる。
剣心が耳を澄ますと通りを走ってくる軽い足音。
多分女性のもの。
息を切らして走っているような気配がする。
「薫・・・殿・・?」
こんな早朝に出歩く筈の無い人物を思い描いて剣心が驚愕に目を見開いていると、見間違え用の無い愛らしい少女が青い顔をして剣心に駆け寄っ来た。
「どうしようっ!ノアールが帰って来ないのっ!」
掠れた声でそう訴える薫に剣心は腕の中でのんきに丸まっているノアールを見せてやる。
「さっき帰って来たでござるよ。」
訳も無く申し訳なさそうに剣心が薫に告げると、薫はそのまま地面にへたり込みそうになり慌てて剣心が右手でその腕を支える。
「薫殿?!しっかりするでござるよ。」
「もうやだ。この子ったら人に心配掛けさせといてのんきにしてるんだもん!」
良く見れば薫は顔面が蒼白で明らかに貧血気味だった。
剣心はノアールを腕から降ろすと、有無を言わせず薫を抱き上げて玄関をくぐり直接居間へ向かった。
暖かな腕の中から放り出されたノアールは不満そうな顔で二人の後を付いてくる。
普段の薫だったら突然抱き上げられたらこうも大人しくはなかっただろうが、今はぐったりとその身を剣心に預けてじっとしている。
ソファに薫を横たえると剣心はその傍らに膝を突き、薫のおでこにそっと手を乗せた。
すっかり冷え切ってしまっているおでこに眉を寄せるが、取り敢えず熱の無い事にほっとする。
「薫殿、もしかして一晩中ノアールを探し回っていたのではあるまいな?」
「探してたけど。」
薫が弱々しい声でそう答えると剣心はますます眉を寄せる。
「女性が一人で夜中に出歩くなんて自殺行為でござるよ。世の中おかしい輩は大勢いるのに何故そんな危ない事をするんだ!」
「・・・だって心配だったんだもの。」
「ノアールは猫なんだから、夜中に出歩く事も有るしそう心配する必要はないでござる。
寧ろ、夜中に出歩く薫殿の方がよっぽど心配でござるよ。」
剣心が言い聞かせるように言うと、薫はぷいっと顔を背けてしまった。
剣心は内心今ここに薫が無事で家に帰ってきている事に安堵を感じつつも、今後自分の預かり知らぬ所で薫が危険な事をしないで欲しいと切に願っていた。
しかし、その剣心の気持ちも薫には上手く伝わらない。
もどかしい気持ちを持て余しつつ剣心は薫の背中にゆっくりと大きな手に平を乗せる。
「薫殿?拙者がいない時にそういう危険な事はしないで欲しいんでござるよ。
じゃないと拙者安心して仕事に行けないでござる・・・」
薫は剣心の言葉を聞いているのかいないのか背中を向けたままピクリとも動かない。
何とか薫に分かって欲しくて剣心は優しく薫の背中を擦りながら、なおも言い募る。
「薫殿?拙者の言い方が悪ければ謝るでござるから。頼むからあまり無茶は・・・」
「だって!このまま居なくなっちゃうかもって考えたら胸が潰れそうだったの!」
剣心の言葉を打ち消すように強い口調で薫は叫んだ。
振り向いた薫は、何かに脅えているように目が潤んでいる。
あまりの激しさに剣心は驚いて背中に置いていた手を放してしまった。
薫はソファにちゃんと座り直すと剣心を真っ直ぐに見た。
静かな早朝の室内に時計が時を刻む音だけが流れている。
「ノアールってふっと居なくなっちゃうような気がするの。」
「それは、薫殿の勘?」
「ううん違うの。・・・私の勘って結構当たっちゃったりするから、そういう悲しい事に関する勘は嫌なものだけどノアールの事に関しては『そうなったらやだな』って疑心暗鬼に囚われてるのかも・・・・」
薫は拳をきゅっと握って俯く。
「きっと・・・剣心とノアールを重ねているから心配性になっちゃってるんだわ。」
剣心は何も言えずに俯く薫の頭を見ていた。
沈黙だけが時を渡っていく。
居間の時計が丁度6時の鐘を鳴らした。
ボーーンッ・ボーーンッ・ボーーンッ・ボーーンッ・ボーーンッ・ボーーンッ
薫は何かを振り切るように勢い良く立ち上がって顔を上げる。
剣心と足元に来ていたノアールににっこりと笑った。
「ごめんなさい。これからは気を付けるわ。」
「薫殿・・・」
「ちょっと早いけどご飯作るね!剣心はノアールに牛乳でも上げててよ。」
薫はそのまま台所に消えてしまった。
取り残された剣心はソファに勢い良く座ると、ノアールを救い上げて膝の上に乗せる。
「『拙者とノアールを重ねているから』か・・・
拙者がいつか居なくなる事が心配だという事か・・・」
この仕事に就いている限りその可能性はかなりの確立で常に剣心と薫の上に存在し続けるという事が、剣心のみならず薫にまで察せられているという事なのだろうか。
いつか自分がここに帰ってこれなくなった時には彼女は拙者を探して真夜中に街に飛び出して行くのだろうか。
そんな事にならない様に剣心は静かに祈った。
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