五月病

有様





五月病。



五月晴れ、とはいつの事か?

昨日とはうって変わって、梅雨真っ只中のような天気。


雨は嫌いだ。


 あいつの笑顔が見れないから。
 太陽のような笑顔が見れないから。


+ + + + + + + + + +




「くくくっ、白馬君…面白いっ。」


止まない雨を眺めていた、昼休み。
隣から聞こえてきた声に振向いて。

---え?
---…青子?


 今日は雨が降っているはずなのに。
 今日は太陽が見えないはずなのに。


そう思ったのと同時だった。


「ちょっ、快斗!?」

青子の手をつかみ、教室から校庭へ連れだす。

後ろから聞こえる抗議の声も無視して。




降り続く雨も気にせず、快斗は青子を強く抱きしめた。




「…快斗?」

不思議そうに目を丸めて、青子が声をかける。

その声にはっと我にかえった。


 あの笑顔は誰にも渡したくなくて。
 あの笑顔は俺だけに向けられて欲しくて。


只、無我夢中になってた。



「…ごめんな、急に。」

雨音に掻き消されそうになりながら、
聞こえてきた声。

いつもとは違った快斗の様子に戸惑いながらも、
青子は微笑んだ。

「ううん、快斗の腕…
     …あったかくて大好きだから。」


 この笑顔は俺だけのもの。
 輝く太陽は俺の腕の中に。


このままずっと、離さない。
      ---この五月の雨のせいにして。










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