日商簿記検定試験問題

 簿記を学ぶ機会がありました。せっかく学んだのだから、日商簿記検定も受けてみようかと思い、3級、2級と受験しました。試験があって問題が解けないといろいろ考えるから理解も深まります。試験は必要悪と言われるように試験があって初めて理解が深まる所があります。けれど試験に通るにはテクニックがあるように思います。簿記検定で80点超の高得点を取る人と、60点未満の人では、明らかに実力差があるのでしょうが、60点以上80点以下の21点の間では大きな実力差はなく、テクニックを知っているかどうか、計算ミスがあったかなかったか、ケアレスミスがあったかなかったか、配点が有利に働いたか不利に働いたかのようなことで、決まると思います。今回の経験から、日商簿記検定に合格するには、このようにすればよいのでないかと感じたテクニックがあります。それを今後受験する人のために書いてみたいと思います。
 簿記に出てくる数字は結構大きいです。建設工事代金総額 30,000,000円 修繕費 800,000円という具合です。日商簿記検定は電卓を使うことを許されていますが、30,000,000を電卓に入力しようとすると0を7回打たなければなりません。00キーのある電卓でも00を3回、0を1回打たなければなりません。キーを打つことが多いと打ち間違いも当然多くなります。0を1つ多く打ってしまったり、1つ少なく打ってしまうことも出てきます。2017年6月12日の為替は1米ドル110円、1ユーロ123円です。日本の円は米ドルやユーロの100分の1の価値しかありません。もともと円と米ドルは1米ドル1円で始まりました。しかし敗戦等があり、円の価値は大きく落ち米ドルの100分の1の値打ちしか持たなくなっているのです。他の先進国並みにするには、100分の1にデノミしてちょうどよいのです。今の円では、物価を表示するのに0が多くなり過ぎ不便なのです。それで数字は1000分の1に考えるべきだと思います。100分の1にしないのは、3桁ごとにコンマを打つのに合わせるためです。上の例だと、建設工事代金総額 30,000円 修繕費 800円と考えます。額面総額 800,000、利率 0.42%の社債が与えられ、この年利息を計算しなければならない時、800×0.42%=と電卓に打ち込んで計算します。3.36と電卓に出ますから、これを解答用紙に書き写す時に1000倍して、3,360と書くのです。
 このやり方のよい所は打ち込む0が少ないから計算が速くなること、打ち込む0が少ないから入力ミスが少なくなること、数字が小さくなるから小さなスペースに書き込みやすいことです。数字を試験問題に書き込んだり、自分が書いたボックス図の中に数字を書き込むことがありますが、30,000,000のような大きな数字では、長すぎ、限られたスペースに入らないことがあります。また0が少ないと、書き写しミスも少なくなります。なお数字を省略して書く時は「,」は書きません。「,」を書かなくても、数字が小さいから位はわかります。またコンマを打たないほうが少しでも時間の短縮になります。少しの時間の短縮でも、試験中はたくさんの数字を書きますから、少しの時間も集まると馬鹿にできない時間になります。だから30,000,000は、1000分の1にして、30000と書きます。
 このやり方の欠点としては、80円のような小さな数字が出てきた時に0.08とすべき所をうっかり0.8とするミスが出ることがあること、小数点を軽く書いてしまったために、3.36の例なら、うっかり小数点が見えず、336と考えてしまうことがあることです。
 こういう欠点はありますが、それを上回るメリットがあります。それで以後の計算では、数字を1000分の1にして計算したり、仕訳したりすることにします。
 「額面総額 800,000円の社債を額面100円につき99.5円の裸相場で買い入れた。」とあり、取得原価を計算しなければならない時、「100円につき99.5円」は感覚的にわかりにくいため、「1円につき0.995円」と考えます。だから取得原価は、800×0.995=と電卓に打ち込み、計算します。796と電卓に出ますから、解答用紙には1000倍して796,000と書きます。なお裸相場とは、経過利子(端数利息)を含まない値です。
 2級の第146回の第3問に「買掛金の中にドル建買掛金¥22,000(200ドル、仕入時の為替相場1ドル ¥110)が含まれており、決算時の為替相場は、1ドル ¥115であった。」とあります。これの決算時為替差損益を出すために、決算時の円建買掛金を計算する必要があります。これは0.115×200=と電卓に打ち込んで計算します。為替相場のほうを1000分の1にし、ドルはそのまま使います。ドルを1000分の1にし、為替相場をそのまま使うことはしません。これはドルは円の約100倍の値打がありますから、円より数字が小さく、1000分の1にするとかえってわかりにくくなることがあるからです。だから数字が大きくなる円を1000分の1にし、ドルはそのまま使います。上の計算は電卓には23と常時されますから、22との差の1が為替差損益になります。解答用紙には、1000倍して1,000と書きます。
 借方、貸方という簿記の用語があります。これは明治時代に福沢諭吉がDebit、Creditを訳して使われるになったと言われています。仕訳の左側に書くのが借方で、右側に書くのが貸方です。何もこういう日常離れした言葉を使わなくても、左、右と考えていいと思います。ただ、解答用紙では、左、右では正式の言葉でありませんから、借方、貸方と書く必要があります。
 勘定科目は性質の類似した取引につけられた名前です。現金、普通預金、売上のような勘定科目があります。勘定項目には、売買目的有価証券のような長いものがあります。解答用紙に書く時は、勿論正式な勘定科目名を書かなければなりませんが、仕訳を考える時に、メモとして仕訳をする時があります。こういうときにいちいち「売買目的有価証券」ときちんと書いていたら時間がかかります。それで、勘定科目を省略して書くことをします。勘定科目は増える時に左(借方)に書き減る時に右(貸方)に書く借方の勘定科目と、増える時に右(貸方)に書き、減る時に左(借方)に書く貸方の勘定科目があります。勘定科目を省略して書く時、借方の勘定科目なのか、貸方の勘定科目なのか、区別できるように省略することが大事です。
 私は勘定科目を次のように省略しました。
借方の勘定科目
省略科目勘定科目
ウケ手受取手形
ウケ手外営業外受取手形
うり×売掛金
うり割売上割引
うり原売上原価
かりば仮払金
きゅう料給料
く引貸倒引当金繰入
く修修繕引当金繰入
く商商品保証引当金繰入
く賞与賞与引当金繰入
く返返品調整引当金繰入
く役役員賞与引当金繰入
現金
ゲヨ現金預金
げん役役務原価
げん償減価償却費
材料
しいれ仕入
しか仕掛品
しは家支払家賃
しは手支払手数料
しは利支払利息
しょう商品
しょう費消耗品費
しょう耗品消耗品
しリリース資産
すい熱水道光熱費
製品
その有その他有価証券
そん圧固定資産圧迫損
そん火火災損失
そん固固定資産売却損
そん手手形売却損
そん除固定資産除去損
そん商商品評価損
そん貸貸倒損失
そん棚棚卸減耗損
そん廃固定資産廃棄損
そん有有価証券評価損
ソ償ソフトウェア償却
たい給退職給付費用
ちょ貯蔵品
つう信通信費
でんけん電子記録債権
当座預金
のれん償のれん償却
ばい有売買目的有価証券
はっそう発送費
まえば前払
まん債満期保有目的債券
み収未収入金
りょ交旅費交通費
  
貸方の勘定科目
省略科目勘定科目
為差為替差損益
仮受仮受金
繰剰繰越利益剰余金
減累減価償却累計額
減累リリース資産減価償却累計額
材副材料副費
仕割仕入割引
支手支払手形
支手外営業外支払手形
資本金
資準資本準備金
受家受取家賃
受手数受取手数料
受利受取利息
修当修繕引当金
商当商品保証引当金
賞当賞与引当金
前受前受
貸当貸倒引当金
退当退職給付引当金
電務電子記録債務
買×買掛金
評差その他有価証券評価差額金
返当返品調整引当金
未払未払金
未払費未払費用
務リリース債務
役当役員賞与引当金
有利有価証券利息
利準利益準備金
益固固定資産売却益
益補国家補助金受贈益
益役役務収益
益有有価証券評価益
 この省略の特徴は借方の勘定項目はひらがな、カタカナで始まるようにし、貸方の勘定項目は漢字で始まるしたことです。ひらがな、カタカナで始まる勘定科目なら、増える時に左(借方)に書き、減る時に右(貸方)に書けばよく、漢字で始まる勘定科目なら増える時に右(貸方)に書き、減る時に(借方)に書けばよいのです。
 日商簿記3級検定試験問題、第141回 第1問 2 に次のような仕訳問題があります。
銀行で当座預金を開設し、¥3,000,000を普通預金口座からの振り替えにより当座預金口座に入金した。また、小切手蝶の交付を受け、手数料として¥2.000を現金で払った。
 「¥3,000,000を普通預金口座からの振り替えにより当座預金口座に入金した」のですから、普通預金は減り、当座預金は増えています。普通預金は「フ」と省略し、当座預金は「ト」と省略しました。両方とも借方の勘定科目です。だから増えている当座預金は左に来て、減っている普通預金は右にくるはずです。それで仕訳は
ト  3000     フ  3000
となります。
 「手数料として¥2.000を現金で払った」のは、「支払手数料として¥2.000を現金で払った」ということです。支払手数料は「しは手」と省略し、現金は「ゲ」と省略しました。両方とも借方の勘定項目です。¥2.000の手数料が発生しているから、手数料は増えています。現金を払ったのだから、現金は減ります。すると、支払手数料が左になり、現金が右になるはずです。
しは手  2     ゲ  2
となります。二つを合わせて、
ト  3000     フ  3000
しは手  2     ゲ  2
となります。解答用紙に書く時は、きちんと
当座預金3,000,000 普通預金3,000,000
支払手数料2,000 現金2,000
と書きます。解答用紙は数字のコンマがないと、得点になりません。もしコンマを落として、
当座預金3,000,000 普通預金3,000,000
支払手数料2000 現金2000
と書けば、これだけで4点を失ってしまいます。
 特に簿記の勉強を始めたばかりの時はよく左右を間違えて記入します。かなり慣れてきても、少しの思い違いから左右を間違えることがあります。支払手数料を左に書いたから、相手勘定科目は当然右になると考えて記入すると、支払手数料を左右間違えて右に書いた時の間違いに気がつきません。左に書いた「しは手」は増えているから、左でいいし、右に書いた「ゲ」は減っているから右でいいと、二つの勘定科目で二重チェックして書くことが大事です。すると、支払手数料の「しは手」を右に書いても、「ゲ」は減っているのに、左に来る、これはおかしいと気がつきます。
 日商簿記3級検定試験問題、第144回 第1問 3 に次のような仕訳問題があります。
消耗品¥30,000を購入し、代金は後日支払うこととした。
 消耗品は「しょう費」と略したから、借方の勘定科目です。未払金は「未払」と略したから、貸方の勘定項目です。消耗品を購入したのだから、消耗品費は増えています。後日お金を払うのだから未払金は増えます。「しょう費」は増えると左(借方)に来ます。「未払」は増えると右(貸方)に来ます。だから仕訳は、
しょう費  30     未払  30 になります。
解答用紙には、
消耗品費30,000 未払金30,000
と書きます。
 日商簿記2級商業簿記 簿記の問題集 TAC出版 模擬試験第1回に次のような仕訳問題があります。
備品を取得するため国から交付された補助金¥1,000,000と自己資金により、備品¥2,500,000を取得し、代金は今月末に支払うこととした。
仕訳は、
備品2.500,000 国庫補助金受贈益1,000,000
   未払金1,500,000
でいいように思います。省略の勘定科目で書くと、
び品2500   益補1000
  未払1500
になります。び品は借方の勘定科目だから、増加して左に来ており、これでよく、未払は借方の勘定科目だから増加して右に来ている、これもいいです。ところが、益補は貸方の勘定科目ですが、補助金を使ったのだから減っているのに、右に来ています。貸方の勘定科目なら、減れば左にくるはずです。これはおかしいと気づきます。正しい仕訳は
び品2500   未払2500
になります。国庫補助金を使って買ったのだから、国庫補助金受贈益の勘定科目を使いたくなりますが、使わないのです。国庫補助金をもらった時に
現金、預金1,500,000 国庫補助金受増益 1.500,000
という仕訳をしています。備品を国庫補助金を使って買ったのなら、その後圧縮記帳をします。
固定資産圧縮損1,500,000 備品1,500,000
この二つの仕訳から国庫補助金を使って備品を買ったのだろうと推測できます。国庫補助金受贈益を「益補」と漢字で省略し、貸方の勘定科目であることを明白にしておけば、上記のような誤った仕訳をしてもその誤りに気づきやすいのです。
材料1,500,000円を購入し、その2%を材料副費とし、代金は掛けとした。
という仕訳問題の時、材料副費は費用だから借方に来ると考え、
材料1,500,000 買掛金1,530,000
材料副費30,000
としたくなります。省略して書くと、
1500   買×1530
材副30     
となります。「ザ」は借方の勘定科目であり、増えているから、借方(左)に来る、これはいいし、「買×」は貸方の勘定科目であり、掛けにしたのだから、買掛金は増えている、貸方の勘定科目が増えているのだから貸方(右)に来る、これもこれでいいです。材料副費は「材副」と省略しているから、貸方の勘定科目です。材副は増えているのだから、貸方(右)に来なくてはなりません。ところが上の仕訳では材副は左に来ています。これはおかしいと気づきます。正しい仕訳は、
1530   買×1500
    材副30
になります。つまり
材料1,530,000 買掛金1,500,000
   材料副費30,000
となります。
 現金過不足、為替差損益、製造間接費配賦差異、原価差異のような勘定科目があります。これは単に差異を言うだけの勘定科目ですから、どういう場合に借方(左)になり、どういう場合に貸方(右)になるのかわかりにくいものです。こういう勘定科目は損をする場合、不利な場合に借方になり、得をする場合、有利な場合に貸方になります。
 日商簿記3級検定試験問題、第142回 第1問 5の仕訳問題に次のような問題があります。
月末に金庫を実査したところ、紙幣¥100,000、硬貨¥5,800、得意先振出しの小切手¥10,000、約束手形¥20,000、郵便切手¥1,000が保管されていたが、現金出納帳の残高は¥116,000であった。不一致の原因を調べたが原因ははっきりしなかったので、現金過不足で処理することにした。
 この中で現金になるのは、紙幣 100、硬貨 5.8、得意先振出しの小切手 10 です。約束手形は受取手形の勘定項目で処理されているはずだし、郵便切手は通信費の勘定科目で処理されているはずです。電卓に100+5.8+10=と打ち込むと、115.8と出ます。これが実際にある現金です。現金出納帳の残高の116より、0.2少ないです。帳簿の残高より少ないのですから、損をしています。不利な場合です。だから現金過不足は借方(左)にきます。仕訳は
現金過不足0.2   0.2
になります。正式に書くと、
現金過不足200 現金200
です。
 日商簿記2級検定試験問題、第146回 第3問 に次の一文があり、為替差損益を求めなければなりません。
買掛金の中にドル建買掛金¥22,000(200ドル、仕入時の為替相場1ドル ¥110)が含まれており、決算時の為替相場は、1ドル ¥115であった。
 電卓に0.11×200=と打ち込むと23と出ます。買掛金が22から23に増えます。買掛金は支払うものですから、勘違いしないように「支払う」と計算用紙に書きます。支払うお金が増えているから、これは損です。不利な場合です。1だけ損をしています。だから為替差損益は借方に来ます。仕訳は
為差  1    買×  1
になります。正式には、
為替差損益1,000 買掛金1,000
です。
 もしこれが買掛金でなく、売掛金ならどうなるでしょうか。次のような場合です。
売掛金の中にドル建売掛金¥22,000(200ドル、売上時の為替相場1ドル ¥110)が含まれており、決算時の為替相場は、1ドル ¥115であった。
売掛金が22であったのが、23になります。売掛金はお金がもらえるから、勘違いしないように、「もらえる」と計算用紙に書きます。22もらう予定が23になっています。これは1得をしています。有利な場合です。だから為替差損益は貸方になります。仕訳は
売×  1    為差  1
になります。正式には
売掛金1,000 為替差損益1,000
です。
 日商簿記2級検定試験問題、第142回 第4問 に次のような問題があります。
当社は製品Aを量産しており、パーシャルプランの標準原価計算を採用している。
製品Aの1個当たり標準価格が以下のように求められた。
直接材料費   標準単価  600円/kg    標準消費量  0.8kg    480円
直接労務費   標準賃率  2000円/時間    標準直接作業時間  0.6時間    1,200円
製造間接費   標準配賦率  4000円/時間    標準直接作業時間  0.6時間    2,400円
                  4,080円
月間製造間接費予算は変動費 2,500,000円と固定費 1,500,000円の合計 4,000,000円で、月間正常直接作業時間は1,000時間であったとする。当月の実際直接作業時間は920時間であったとする。

問2 仕掛品勘定から原価差異勘定へ振り替える仕訳をしなさい。
 実際原価は実際の直接材料費、直接労務費、製造間接費をたしたものですから、電卓に792.6+1812+3890= と打ち込んで求まります。6431.6と出ます。標準原価は、1個が4.08でそれを1500個生産するのですから、4.08×1500= と電卓に打ち込んで計算できます。6120と出ます。6120-6431.6= と電卓に打ち込むと、-311.6と出ます。標準原価よりも、実際原価が311.6高いのです。これは不利です。損です。だから原価差異は借方に来ます。仕訳は
原価差異311.6   しか311.6
となります。正式には、
原価差異311,600 仕掛品311,600
です。
 日商簿記3級検定試験問題の第3問は試算表の作成問題が出題されます。たくさんの取引が与えられ、それを仕訳し、勘定科目ごとに集計し、試算表を完成します。時間が余れば仕訳と計算をもう一度見直すことができるのですが、第2問、第4問、第5問で難しい問題が出ると、それらに時間を取られ、第3問を見直す時間がないことがあります。だから第2問は一度で勘違いや計算ミスなく、きちんと解けるようにしておくことが必要です。
 第2問の解き方は、仕訳を皆書いてからTフォームに書き込方法、仕訳を皆書いてから、Tフォームに書き写さずに、仕訳から直接勘定科目ごとに集計していく方法、Tフォームを最初につくり、仕訳を書かずに直接Tフォームに書き込む方法があります。仕訳とTフォームの両方を書く方法は時間がかかり過ぎ、問題を解く方法としては好ましくありません。仕訳をすべて書いて仕訳から直接集計する方法は、勘定科目があちこちに散らばるために集計がしにくく集計ミスが出やすいです。直接Tフォームに書き込む方法は、仕訳を書かないため仕訳がしにくいことがありますが、集計は容易で集計ミスは少なくなります。Tフォームに直接書き込む場合でも難しい仕訳は書いてからします。またTフォームをつくる勘定科目はよく出てくる勘定科目に限られ、それ以外の勘定科目が出てくると、仕訳を書きます。その後Tフォームにある勘定科目はTフォームに書き写します。借方の勘定科目は増えた時に左に来て、減った時に右に来る、貸方の勘定科目は増えた時に右に来て、減った時に左に来ると考えて書き込んでいくとミスは少なくなります。だから私は最初にTフォームをつくり、Tフォームに直接書き込んでいく方法を勧めます。
 Tフォームをつくる勘定科目はよく出てくる、受取手形、現金、当座預金、売掛金、仕入、支払手形、買掛金、売上だけです。他の勘定科目は、日商簿記検定3級の第3問では、1~2回出てくる程度ですから、出てきたら仕訳を書きます。1~2個なら、仕訳から直接集計しても集計ミスをすることは少ないです。
 試験会場によって違うようですが、A4の紙1枚を計算用紙に与えられる所が多いようです。A4の紙を横に2回折ると、折り目が3つ入り、下のようになります。
                               
                               
                               
                               
 この一番左の折り目の上に上から、ウケ手、ゲ、ト、うり×、しいれ といくらかのスペースをあけて書きます。これは、受取手形、現金、当座預金、売掛金、仕入 の略です。受取手形は出てくることが比較的少ないですから、ウケ手の下のスペースはあまり必要でありません。次に一番右の折り目の上に上から、支手、買×、売上 といくらかのスペースをあけて書きます。支払手形、買掛金の略です。私は売上は省略形は使っていません。ここも支払手形は出てくることが比較的少ないため、支手の下のスペースは少なくてもよいです。次のように書きます。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
       
  ×
       
 
       
うり ×    
       
しい    
       

 なお「ゲ」と「ト」は折り目の左になっていますが、これはHTMLでは罫線の上に文字を書くのが、難しいためです。実際に書く時には、折り目の上に書いて下さい。
 問題によっては普通預金の勘定科目がたくさん出てくることがあります。その時は「ゲ」の下にスペースをあけて「フ」を書き、普通預金のTフォームをつくる必要があります。
 貸方の勘定項目は3つと少ないため、貸方の勘定項目の下にスペースができます。ここにTフォームをつくった勘定項目以外が出てくる仕訳を書きます。
 それでは、取引をいくらか書き込んでみます。
9日 品川商店より商品¥180,000を仕入れ、代金は小切手を振り出して払った。
 商品を仕入れているこの数字180は仕入の所に記入することになります。数字は1000分の1にして記入します。仕入は「しいれ」と省略することからもわかるように、借方の勘定科目です。仕入れたのだから、仕入は増えます。借方の勘定科目が増えているから、左に来ます。次のようになります。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
       
  ×
       
 
       
うり ×    
       
しい    
  ⑨ 180      
       

 ⑨は9日のことです。丸をつけるのは、金額と区別するためです。⑨を書いておくとどの取引を記入したのかがわかりますから、後で見直す時に便利です。与えられた取引に日にちがない場合、こちらで取引ごとに丸数字を問題文に書きこみ、取引を区別するようにします。
 この仕入が仕入勘定の左(借方)に来るなら、相手勘定が来る所は2つです。

                               
                               
                               
                               

 相手勘定科目が借方の勘定科目なら、青の所に来ます。相手勘定科目が貸方の勘定科目なら赤の所に来ます。白の所に来ることはいずれにしてもありません。青か赤の所に来るという意識を持って相手勘定科目の数字を記入すると、白の所に記入するミスが少なくなります。
 この場合小切手を振り出したのですから、相手勘定科目は当座預金です。当座預金は「ト」と略するように借方の勘定科目です。当座預金は小切手を振り出せば減りますから、借方の勘定科目が減っています。だから「ト」の右に来ます。次のようになります。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
       
  ×
       
 
    ⑨ 180    
       
うり ×    
       
しい    
  ⑨ 180      
       

 この時、「ト」が減っているから、「ト」の右に来るという位置確認と、「しいれ」の相手勘定科目が借方の勘定科目だから、青の所に来るという位置確認が一致することを確認して下さい。第2問は時間がなければ、見直す時間がなく、一度でミスなく正答ができなければなりません。そのために二重チェックが必要なのです。。もしこの二重チェックが合わなければ最初の⑨ 180 を左右間違えて書いているか、その仕訳が間違っているか、2回目の⑨ 180 を左右間違えて書いているか、その仕訳が間違っているか、です。もう一度チェックします。
 次の取引です。
10日 千葉商店から商品¥300,000を仕入、代金の¥80,000は小切手、残額は約束手形をそれぞれ振り出して払った。
 300を仕入れたのだから仕入は増えます。仕入の左に300が来ます。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
       
  ×
       
 
    ⑨ 180    
       
うり ×    
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      
       

 今度は相手勘定科目が2つあります。当座預金 80 と支払手形 220です。小切手で払うから当座預金は減ります。「ト」は減っているから、右に80が来ます。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
       
  ×
       
 
    ⑨ 180    
    ⑩ 80    
       
うり ×    
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      
       

 300-80=220ですから、220を約束手形で支払うことになります。約束手形は支払手形と受取手形があります。問題文ではどちらも約束手形と書かれます。お金を払うほうが支払手形で、お金がもらえるほうが受取手形です。仕訳には支払手形と受取手形を区別しなければなりません。だから勘違いしないために、お金を払う手形は支手、お金がもらえる手形はウケ手と問題文に書き込みましょう。この場合支払手形を振り出しているから、支払手形は増えます。支払手形は支手と略するように貸方の勘定科目です。貸方の勘定科目が増えているから、220は支手の右に来ます。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
        ⑩  220
       
  ×
       
 
    ⑨ 180    
    ⑩ 80    
       
うり ×    
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      
       


                               
                               
                               
                               

 仕入の相手勘定科目という観点から、位置確認をすると、「しいれ」の⑩ 300は黄色の所に書きました。相手勘定項目の「ト」は借方の勘定科目ですから、青の所に来るはずです。相手勘定項目の「支手」は貸方の勘定項目ですから、赤の所にくるはずです。確かに一致しています。
 次の取引です。
11日 山梨商店より、先月販売した商品の掛代金¥400,000 について当座預金への振込を受けた。

 先月販売した商品の掛代金とは、売掛金のことです。売掛金はうり×と略するのからわかるように借方の勘定科目です。借方の勘定科目が減っているからうり×の右に200が来ます。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
        ⑩  220
       
  ×
       
 
    ⑨ 180    
    ⑩ 80    
       
うり ×    
    ⑪  400    
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      
       

 当座預金にお金が振り込まれているから、当座預金は増えます。トの左に400が来ます。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
        ⑩  220
       
  ×
       
 
  ⑪  400   ⑨ 180    
    ⑩ 80    
       
うり ×    
    ⑪  400    
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      
       

 下の設問によっては、商店ごとの売掛金、買掛金を集計しなければならない場合があります。その場合は売掛金、買掛金の勘定科目に金額を記入するたびにどこの商店のものであるのかも、記入していきます。取引のすべてを記入し終わった後で、売掛金、買掛金を商店ごとに集計します。商店名はフルネームを書くのでなく、最初の一文字だけを書くほうが、記入に時間がかからず、スペースもとらず、また集計もしやすいです。だから山梨商店は「山」と略して書きます。日商簿記検定試験の商店名は都道府県名や都市名を使っています。山から始まるものは、山口、山形もあります。山梨商店、山口商店と出てくる場合は「山」では区別できなくなりますから、後ろの「梨」「口」で略します。次のようになります。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
        ⑩  220
       
  ×
       
 
  ⑪  400   ⑨ 180    
    ⑩ 80    
       
うり ×    
    ⑪  400 (山)    
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      
       


                               
                               
                               
                               

 売掛金の金額は上記の黄色の所に書き込みました。すると相手勘定科目は青の所に書き込むか、赤の所に書き込むかです。相手勘定科目が借方の勘定科目なら青の所に来ます。相手勘定科目が貸方の勘定科目なら赤の所に来ます。この場合白の所に来ることは決してありません。相手勘定科目は当座預金で借方の勘定科目であり、金額を青の所に書きました。この観点から二重チェックしても正しく記入できています。
 次の取引です。
12日 山梨商店に商品¥350,000を売上げ、手付金¥70,000を差し引き、残額は掛けとした。
 この手付金というのは、前受金のことです。これはTフォームをつくっていない勘定科目なので、仕訳を書きます。前受金を差し引いているから、前受金は減ります。前受金は「前受」と略するように貸方の勘定科目です。貸方の勘定科目が減るのだから、前受金は左に来ます。売上げがあったのだから、売上げは増えます。売上の勘定科目は省略せずに売上と漢字で書きました。貸方の勘定科目です。貸方の勘定科目が増えているから、売上は右に来ます。350-70=280だから売掛金は280です。売掛金は増えます。借方の勘定科目が増えるからうり×左に来ます。仕訳は、
前受70   売上350
うり×280   
 これは貸方勘定科目の下のスペースに書きます。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
        ⑩  220
       
  ×
       
 
  ⑪  400   ⑨ 180    
    ⑩ 80    
       
うり ×    
    ⑪  400 (山)   ⑫  前受  70   売上  350
          うり×  280  
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      
       

 ⑫ の仕訳の売上とうり×はTフォームがありますから、金額を書き込みます。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
        ⑩  220
       
  ×
       
 
  ⑪  400   ⑨ 180     ⑫  350
    ⑩ 80    
       
うり ×    
  ⑫  280(山)   ⑪  400 (山)   ⑫  前受  70   売上  350
          うり×  280  
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      
       

 Tフォームに間違いなく書き込んだということをはっきりさせるために、書き込んだ後、書き込んだ仕訳には、マークをつけます。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
        ⑩  220
       
  ×
       
 
  ⑪  400   ⑨ 180     ⑫  350
    ⑩ 80    
       
うり ×    
  ⑫  280(山)   ⑪  400 (山)   ⑫  前受  70   ○売上  350
          ○うり×  280  
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      
       

 HTMLでは、横線や斜線を文字や数字の上に書くのが難しいため、前に○ をつけましたが、実際では横線や斜線を文字や数字の上に書いたほうがよいでしょう。
 次の取引です。
13日 千葉商店に振り出していた約束手形¥100,000の支払期限が到来し、当座預金から引き落としが行われた。
 振り出していた約束手形とは支配手形のことです。問題文に支手と書き込みましょう。支手が減っているから、支手の左に100が来ます。トが減っているからトの右に100が来ます。次のようになります。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
      ⑬  100   ⑩  220
       
  ×
       
 
  ⑪  400   ⑨  180     ⑫  350
    ⑩  80    
    ⑬  100    
うり ×    
  ⑫  280(山)   ⑪  400 (山)   ⑫  前受  70   ○売上  350
          ○うり×  280  
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      
       

 支手の左に100を書いたのですから、下の図の黄の所に書いています。相手勘定科目が来るのは、下の図の青か赤の所に限られます。白の所に来ることは決してありません。

                               
                               
                               
                               

 相手勘定科目が借方の勘定科目なら、青の所に来ます。相手勘定科目が貸方の勘定科目なら、赤の所に来ます。この場合は借方の勘定科目だから、青の所に来ています。この観点からのチェックとも合います。
 実際の試験問題は、まだまだ取引が出てきますが、このぐらいにして集計すると、次のようになります。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
      ⑬  100   ⑩  220
       
  ×
       
 
  ⑪  400   ⑨  180     ⑫  350
    ⑩  80    
    ⑬  100      /360    
うり ×    
  ⑫  280(山)   ⑪  400 (山)   ⑫  前受  70   ○売上  350
          ○うり×  280  
       
しい    
  ⑨ 180      
  ⑩ 300      /480      
       

 この場合当座預金と仕入れは数字が2つ以上あるので、集計した値を書きました。ここで集計した数字を残高試算表、合計試算表、合計残高試算表に書き込みます。
 次に実際の試験問題を解いてみましょう。日商簿記検定試験問題 第3級 第145回 第3問に次のような問題があります。

 次の [12月中の取引] にもとづいて。試算表の [12月中の取引高] を集計し、[11月30日の合計] と合算して [12月31日の合計] を計算し。試算表を完成しなさい。

[12月中の取引]
  5日北海道商店より商品 ¥450,000 を仕入れ、発注時に支払った手付金 ¥70,000 を差し引いた残額は掛けとした。なお、引取運賃 ¥1.000 は現金で払った。
  8日沖縄商店に対して掛売りした商品 ¥10.000 が品違いのため返品され、掛代金から差し引くこととした。
10日岐阜商店より商品売上の対価として受け取っていた同店振出しの約束手形 ¥190,000 につき、手形期日である本日、当座預金口座に入金済みの連絡を受けた。
12日未払金 ¥79,000 を当座預金口座から支払った。
13日福島商店に商品 ¥100.000 を売り上げ、代金のうち ¥40.000 を同店振出しの約束手形で回収し、残額は掛けとした。発送費 ¥2,000 は現金で支払った(当店負担)。
15日水道光熱費 ¥40.000 および通信費 ¥500 が当座預金口座から引き落とされた。
17日愛媛商店に対する買掛金 ¥90.000 につき、約束手形を振り出して支払った。
19日兵庫商店からの商品仕入代金として同店に振り出していた約束手形 ¥140.000 の支払期日が到来し、当座預金口座から引き落とされた旨、連絡を受けた。
20日来月分の家賃 ¥21.600 が当座預金口座から引き落とされた。
21日従業員の出張にあたり、旅費の概算額 ¥30.000 を現金で渡した。
22日得意先である広島商店に対する売掛金 ¥150.000 につき、¥50,000 は同店振出しの約束手形で回収し、残額は当座預金口座に入金済みの連絡を受けた。
24日21日に出張した従業員が帰店し、旅費を精算して残額の ¥2.000 を現金で受け取った。
25日給料 ¥300.000 につき、所得税の源泉徴収額 ¥30.000 を差し引き、残額を当座預金口座から支給した。
27日東京商店に対して商品 ¥600,000 を売り上げ、代金のうち ¥350.000 は当座預金口座に降込みがあり、残額は掛けとした。なお、先方負担の発送費 ¥2.000 は立て替えて現金で支払い、売掛金に含めて処理した。
29日前年度の売上げにかかる売掛金 ¥50.000 が得意先の倒産により貸し倒れた。
次のような解答用紙が与えられています。
試      算      表
借方勘定科目貸方
12月31日の合計12月中の取引高11月30日の合計 11月30日の合計12月中の取引高12月31日の合計
  948,650 現金 413,250  
  14,447,300 当座預金 8,799,500  
  3,100,000 受取手形 2,300,000  
  6,747,400 売掛金 4,197,400  
  513,000 前払金 243,000  
  100,000 仮払金 100,000  
  623,000 繰越商品    
  2,400,000 備品    
  2,100,000 支払手形 2,850,000  
  6,836,100 買掛金 7,488,800  
  928,000 未払金 1,807,000  
  152,000 所得税預り金 274,100  
    貸倒引当金 60,000  
    減価償却累計額 1.600,000  
    資本金 8.000,000  
    売上 9.577,000  
  5,146,300 仕入 50,000  
  2,741,000 給料    
  362,800 水道光熱費    
  216,000 支払家賃    
  25,000 発送費    
  180,000 旅費交通費    
  193,500 通信費    
  47,760,050   47,760,050  

 このTフォームをつくると下記のようになります。この問題はTフォームを書く勘定科目以外がたくさん出てくるため、貸方の勘定科目の下に書ききれず、借方の勘定科目の下にも書いています。

                                     ウケ 手                                                                                支 手                                        
  ⑬  40   ⑩  190   ⑲  140   ⑰  90
  ㉒  50          /90      
  ×
  ㉒  2   ⑤  1   ㉗ 2   ⑰  90   ⑤  380
    ⑬  2    
    ㉑ 30                 /35    
 
  ⑩  190   ⑫  79    ⑳  21.6   ⑧  10   ⑬  100
  ㉒ 100   ⑮  40.5   ㉕ 270     ㉗ 600          /700
  ㉗ 350          /640   ⑲  140                 /551.1    
うり ×    
  ⑬  60   ⑧  10    ⑤  ○しいれ  451    まえば  70
  ㉗ 252          /312   ㉒ 150       ○買×  380
    ㉙ 50           /310   ⑫  未払  79     ○ゲ  79
しい   ⑬  ○ウケ手  40     ○売上  100
  ⑤ 451          ○うり×  60  
           はっそう  2  
      ⑮  すい熱  40    ○ト  40.5
           つう信  0.5  
  ㉕  きゅう料  300    預り金  30   ⑳  しは家  21.6    ○ト  21.6
     ○ト  270   ㉑  かりば  30    ○ゲ  30
  ㉙  貸当  50    ○うり×  50   ㉔  りょ交  28    かりば  30
           ○ゲ  2  

 ここで集計した金額を解答用紙の「12月中の取引高」に書き込むと下のようになります。

試      算      表
借方勘定科目貸方
12月31日の合計12月中の取引高11月30日の合計 11月30日の合計12月中の取引高12月31日の合計
 2,000948,650 現金 413,25035,000 
 640,00014,447,300 当座預金 8,799,500551,000 
 90,0003,100,000 受取手形 2,300,000190,000 
 312,0006,747,400 売掛金 4,197,400210.000 
  513,000 前払金 243,00070.000 
 30,000100,000 仮払金 100,00030,000 
  623,000 繰越商品    
  2,400,000 備品    
 14,0002,100,000 支払手形 2,850,00090,000 
 90,0006,836,100 買掛金 7,488,800380,000 
 79,000928,000 未払金 1,807,000  
  152,000 所得税預り金 274,10030,000 
 50,000  貸倒引当金 60,000  
    減価償却累計額 1.600,000  
    資本金 8.000,000  
 10.000  売上 9.577,000700,000 
 451,0005,146,300 仕入 50,000  
 300,0002,741,000 給料    
 40,000362,800 水道光熱費    
 21,600216,000 支払家賃    
 2,00025,000 発送費    
 28,000180,000 旅費交通費    
 500193,500 通信費    
  47,760,050   47,760,050  
 解答用紙に書き込んだ勘定科目は、確かに書き込んだということを示し書き落としがないようにするために、Tフォームや仕訳にマークをつけて置きます。マークは何でもいいのですが、私は✓ △やその勘定科目のアルファベットを使っています。次のようになります。

                                     ✓ウケ 手                                                                                ✓支 手                                        
  ⑬  40   ⑩  190   ⑲  140   ⑰  90
  ㉒  50          /90      
✓ゲ   ✓買 ×
  ㉒  2   ⑤  1   ㉗ 2   ⑰  90   ⑤  380
    ⑬  2    
    ㉑ 30                 /35    
✓ト   ✓売
  ⑩  190   ⑫  79    ⑳  21.6   ⑧  10   ⑬  100
  ㉒ 100   ⑮  40.5   ㉕ 270     ㉗ 600          /700
  ㉗ 350          /640   ⑲  140                 /551.1    
✓うり ×    
  ⑬  60   ⑧  10    ⑤  ○しいれ  451    Mまえば  70
  ㉗ 252          /312   ㉒ 150       ○買×  380
    ㉙ 50           /310   ⑫  △未払  79     ○ゲ  79
✓しい   ⑬  ○ウケ手  40     ○売上  100
  ⑤ 451          ○うり×  60  
           Hはっそう  2  
      ⑮  Sすい熱  40    ○ト  40.5
           Tつう信  0.5  
  ㉕  ▽きゅう料  300    A預り金  30   ⑳  Yしは家  21.6    ○ト  21.6
     ○ト  270   ㉑  Kかりば  30    ○ゲ  30
  ㉙  C貸当  50    ○うり×  50   ㉔  Rりょ交  28    Kかりば  30
           ○ゲ  2  

 Tフォームをつくった勘定科目以外が複数個出てくるなら、たした金額を書かなければなりません。この場合「かりば」が2つ出てきますが、左右に1個ずつ出てきますので、たす必要はなく、書き写すだけです。
 今回は勘定科目の左にマークをつけました。見直す時は勘定科目の右にマークをつけます。
 次に12月中の取引高と11月30日の合計をたして、12月31日の合計を求めます。試算表は合計試算表、残高試算表、合計残高試算表があります。残高を書かなければならないのに、合計を書けばほぼすべて間違います。ここで30点近くを失えば合格することはまず不可能です。私も過去問を解いている時に、残高を要求しているのに、合計を書いた経験があります。解答用紙の合計の所に○をして合計を要求しているということを確認しましょう。

試      算      表
借方勘定科目貸方
12月31日の合計12月中の取引高11月30日の合計 11月30日の合計12月中の取引高12月31日の合計
950,6502,000948,650 現金 413,25035,000448.250
15,087,300640,00014,447,300 当座預金 8,799,500551,0009,350,600
3,190,00090,0003,100,000 受取手形 2,300,000190,0002,490,000
7,059,400312,0006,747,400 売掛金 4,197,400210.0004,407,400
513,000 513,000 前払金 243,00070.000313,000
130,00030,000100,000 仮払金 100,00030,000130,000
623,000 623,000 繰越商品    
2,400,000 2,400,000 備品    
2.240,00014,0002,100,000 支払手形 2,850,00090,0002.940,000
6,296.10090,0006,836,100 買掛金 7,488,800380,0007,868,800
1,007,00079,000928,000 未払金 1,807,000 1,807,000
152,000 152,000 所得税預り金 274,10030,000304,100
50,00050,000  貸倒引当金 60,000 60,000
    減価償却累計額 1.600,000 1.600,000
    資本金 8.000,000 8.000,000
10.00010.000  売上 9.577,000700,00010,277,000
5,597,300451,0005,146,300 仕入 50,000 50,000
3,041,000300,0002,741,000 給料    
402.80040,000362,800 水道光熱費    
237.60021,600216,000 支払家賃    
27,0002,00025,000 発送費    
208,00028,000180,000 旅費交通費    
194,000500193,500 通信費    
  47,760,050   47,760,050  
 本来のやり方は次に12月中の取引高の総計、12月31日の合計の総計を出して、借方と貸方が一致することを確認して終了です。
 しかし試験問題の解き方としては、12月中の取引高の総計、12月31日の合計の総計は出しません。この総計は今まで解答用紙に記入した金額がすべて正しい場合にのみ、正しい金額が出ます。もし今まで記入した金額に一つでも誤りがあれば、総計を出す計算はすべて徒労になります。しかもこの総計は、特に左右両方ともすると、かなり時間がかかります。それだけの時間をかけて、1点の得点も得ることができないのです。またかなりの計算ですから、計算ミスが出ることもあります。左右両方とも計算すると、左右が合わないことも少なくありません。ここにどれだけ配点があるのか正確なことはわかりません。しかし配点があっても2点か3点でしょう。この3点を無視しても、今までの金額がすべて合っておれば、27点が取れます。第3問で9割取るなら、第1問、第2問、第4問、第5問で大過なく得点をかせげば、合格することは確かです。だから総計は出しません。総計を出す時間があるなら、今までにミスはなかったかと、もう一度見直すことが大事です。
 この総計に配点を出すと、電卓で正確な計算ができることに配点を出したことになります。実務でこの総計を電卓で計算することはほとんどありません。きちんとした会計システムのある所では、総計はコンピューターが自動的にしてくれます。個人企業で小規模な帳簿をつけている所でも、エクセルのような表計算ソフトを使うことが多いでしょう。エクセルなら総計は電卓を使うことなく簡単に出ます。だから現代の簿記の実務では、総計を電卓で正確に出す能力は不要です。総計の計算に得点を出せば現在の実務にそぐわない試験をしていることになります。
 私は本試験を受けた時に総計は記入せずに提出しました。結果は満点でした。少なくとも私が受けた時は総計に配点はありませんでした。総計よりも、各勘定花目の金額を正確に出すことに注力すべきです。
 したがって上の総計を書かない解答用紙で提出することになります。しかし解答としては、総計がなければ不備ですから、次に総計も計算したものも出しておきます。

試      算      表
借方勘定科目貸方
12月31日の合計12月中の取引高11月30日の合計 11月30日の合計12月中の取引高12月31日の合計
950,6502,000948,650 現金 413,25035,000448.250
15,087,300640,00014,447,300 当座預金 8,799,500551,0009,350,600
3,190,00090,0003,100,000 受取手形 2,300,000190,0002,490,000
7,059,400312,0006,747,400 売掛金 4,197,400210.0004,407,400
513,000 513,000 前払金 243,00070.000313,000
130,00030,000100,000 仮払金 100,00030,000130,000
623,000 623,000 繰越商品    
2,400,000 2,400,000 備品    
2.240,00014,0002,100,000 支払手形 2,850,00090,0002.940,000
6,296.10090,0006,836,100 買掛金 7,488,800380,0007,868,800
1,007,00079,000928,000 未払金 1,807,000 1,807,000
152,000 152,000 所得税預り金 274,10030,000304,100
50,00050,000  貸倒引当金 60,000 60,000
    減価償却累計額 1.600,000 1.600,000
    資本金 8.000,000 8.000,000
10.00010.000  売上 9.577,000700,00010,277,000
5,597,300451,0005,146,300 仕入 50,000 50,000
3,041,000300,0002,741,000 給料    
402.80040,000362,800 水道光熱費    
237.60021,600216,000 支払家賃    
27,0002,00025,000 発送費    
208,00028,000180,000 旅費交通費    
194,000500193,500 通信費    
50,046,1502,286,10047,760,050   47,760,0502,286,10050,046,150

 日商簿記検定試験問題 2級 第3問で固定資産の一連の処理の問題が出た時、図示しないとどこで固定資産を買い、どこで売り、どこで除去したのかのイメージを描きにくく集計ミスが出やすいです。日商簿記検定試験で出題された問題を解きながら図示の具体的な方法を示します。
 日商簿記検定試験問題 2級 第139回 第3問に次のような問題が出題されています。
 備品の取引にかかわる次の [資料] にもとづいて、下記の [設問] に答えなさい。なお、備品の減価償却は残存価額をゼロとして定額法によって行い、期中に備品を取得した場合の減価償却費は月割りで計算するものとする。会計期間は1年(決算日は12月31日)であり、総勘定元帳は英米式決算法によって締め切っている。

[資料]
平成25年1月1日 備品A(取得原価¥200,000、耐用年数5年)および備品B(取得原価¥320,000、耐用年数8年)を現金で購入した。
平成25年10月1日 備品C(取得原価¥160,000、耐用年数4年)を現金で購入した。
平成26年1月1日 備品Aを¥100,000で売却し、代金は現金で受け取った。
平成27年1月1日 備品Bを除去した。なお、備品Bの見積処分価額は¥50,000である。

[設問]
問1 平成25年度(平成25年1月1日~同年12月31日)における備品の減価償却費の総額を答えなさい。
問2 平成26年1月1日における備品Aの売却損の金額を答えなさい。
問3 平成26年度(平成26年1月1日~同年12月31日)における備品の減価償却費の総額を答えなさい。
問4 平成26年度(平成26年1月1日~同年12月31日)における備品勘定および備品減価償却累計額勘定への記入を完成しなさい。
問5 平成27年1月1日における備品Bの除去損の金額を答えなさい。
問6 備品Bの減価償却について、定額法に代えて200%定率法(償却率年25%)で行っていたとした場合、平成27年1月1日における備品Bの除去損の金額はいくらになるか答えなさい。
次のような解答用紙が与えられています。
問1¥ 問2¥ 問3¥

問4
備     品
日付 摘要 借方 日付 摘要 貸方
26  1  1 前期繰越   26 1 1    
          12 31    
               

備品減価償却累計額
日付 摘要 借方 日付 摘要 貸方
26 1 1     26 1 1 前期繰越  
  12 31       12 31    
               

問5¥ 問6¥
 次のように図示します。
備品A  200
25年 26年
   40 
     
定額    
5年100   
0    
     
 40   
12/3112/31 ,1/1
 

備品B  320
25年 26年 27年
   40  80 
        
定額       
8年   50   
0       
        
 40  40   
12/3112/3112/31 ,1/1
  除去

備品C  160
25年 26年 27年
      10   50
           
  定額        
  4年        
  0        
           
    10   40  
12/31 9/30 12/3112/31
   買 

 それでは備品Aから説明します。数字はすべて1000分の1にしています。備品Aを200で取得しています。それで、備品Aと書いてその横に取得金額200を書きます。縦線は決算日、売買日、除去日に引きます。その縦線の上を結んで上の横線を引き、その縦線の下を結んで下の線を引きます。所有している所は白にし、所有する前、売却後、除去後は黄色にしてあります。実際の試験では、色鉛筆を使うことは許可されていませんから、図に色をつけることはできません。試験の時は斜線を使いましょう。
 備品Aの減価償却は定額法、耐用年数5年、残存価額0ですから、図の一番左の縦線の右側に縦に定額、5年、0と書きます。図の一番上に年を書き、図の下に月日、そのまた下に買、売、除去を書きます。備品Aは25年1月1日に買っています。しかし図では12/31と書いてあります。これは次の理由のためです。月日は端数利息を除き、月数を計算するために必要です。買った月日から決算日までの月数を計算しなければなりません。決算日はいずれの月であっても月末です。この問題は決算日は12月31日です。それで25年1月1日から、25年12月31日までの月数を計算しなければなりません。この場合はちょうど1年ですから、計算の必要もなく12ヶ月とわかります。計算するなら、12-1+1=12です。もし25年5月1日に買っていたら、何ヶ月になるでしょう。この場合は12-5+1=8で、8ヶ月です。計算に1を足さなければなりません。決算日に合わせ、購入日も月末にしておけば、1を足す必要がなくなります。25年5月1日に買ったのを25年4月30日に買ったと表示しておけば、12-4=8で月数計算ができます。月数計算のミスが少なくなります。月数計算をする時にミスをしないために、指を折って数えることを勧める人もいます。指を折って計算しても、目に見える形で残りません。買いの月日をすべて月末にして月日を表示しておけば見ただけで感覚的に月数がわかる所があります。
 備品Aの減価償却費は(200-0)÷5=40 で40です。この減価償却費を図の白い所の右下に書きます。黄色の左上に40と書いてあるのは減価償却累計額です。備品Aは26年1月1日に売却しており、売却額は100です。これを白い所の右端の中央に書きます。
 次に備品Bです。取得金額は320です。備品Bと書いてその横に320を書きます。減価償却は定額法、耐用年数8年、残存価額0ですから、図の一番左の縦線の右側に縦に定額、8年、0と書きます。減価償却費は(320-0)÷8=40 で40です。図の白い所の右下に40と書きます。26年の四角の左上に40を書きます。これが26年期初の減価償却累計額です。26年期末の減価償却費40は26年の四角の右下に40と書きます。この左上の40と右下の40を足した80が27年期初の減価償却累計額になります。これを27年の黄色の四角の左上に書きます。減価償却費は四角の右下、減価償却累計額は四角の左上に書いています。27年1月1日に除去し、処分価額が50ですから、50を26年の四角の右端の中央に書きます。
 次に備品Cです。購入金額は160です。備品Cと書いてその横に160を書きます。備品Cは期初でなく、10月1日に購入しています。上で説明したように購入日は月末に統一し、9/30と書きます。期中に購入しているから、最初が黄色の四角になります。減価償却は定額法、耐用年数4年、残存価額0ですから、9/30の縦線の右側に縦に定額、4年、0と書きます。12-9=3 ですから、25年は3ヶ月使っています。この3ヶ月を③と、9/30と12/31の中央に書きます。25年の減価償却費は(160-0)÷4=40  40×3/12=10 になります。25年の白い四角の右下に10と書きます。次に26年の四角の右上に10を書きます。これが26年期初の減価償却累計額です。26年の白い四角の右下に26年の減価償却費40を書きます。26年の四角の左上の10と右下の40を足した50を27年の四角の左上に書きます。これが27年期初の減価償却累計額になります。
 これだけの準備をして問題を解きます。問1は25年度の備品の減価償却費の総額を尋ねています。25年の四角の右下に減価償却費を書きましたから、25年の四角の右下の数字を足せばいいのです。40+40+10=90 ですぐに出ます。解答用紙に90,000と書きます。
 問2は備品Aの売却損の金額を聞いています。これは仕訳をします。備品Aの購入金額は図の備品Aの横を見ればよく、200です。26年期初の減価償却累計額は26年の黄色の四角の左上を見ればよく、40です。期初に売っているから減価償却費はありません。売却金額は、25年の四角の右端の中央に書きました。100です。だから仕訳は
減累40   び品200
ゲヨ100   
となります。左右の金額を合わせるには、200-40-100=60 で、60を固定資産売却損にすればよいのです。だから仕訳は
減累40   び品200
ゲヨ100   
そん固60   
となります。売却損は60ですから、解答用紙に60,000と書きます。
 問3は26年度の備品の減価償却費の総額を尋ねています。26年の白い四角の右下に数字があるのは、備品Bと備品Cだけです。備品Aは既に売却しているから黄色の四角になっています。40+40=80 で簡単に80とわかります。解答用紙に80.000 と書きます。この問題は比較的簡単ですが、もっと複雑な問題になると、図示しないと、どの固定資産を持っているのか、持っていないのかイメージしにくいことがあります。だから集計ミスが出やすくなります。図示すると、持っている固定資産が一目でわかりますから、集計ミスが少なくなります。
 問4は26年の備品と備品減価償却累計額の勘定科目を記入する問題です。まず備品から、見ていきます。解答用紙には次のように書いてあります。
備     品
日付 摘要 借方 日付 摘要 貸方
26  1  1 前期繰越   26 1 1    
          12 31    
               

 26年1月1日という日にちを左右に書いてあり、左には、前期繰越と書いてあります。図を見ると備品Aは26年1月1日に売却しています。この売却の取引を右に書くのだろうとわかります。だから前期繰越は備品A、備品B、備品Cの取得金額の合計です。図の備品A、備品B、備品Cの右側に取得金額を書きました。それらを足します。200+320+160=680 ですから、前期繰越は680になります。右側には、備品Aの取得金額200を書きます。次のように記入します。
備     品
日付 摘要 借方 日付 摘要 貸方
26  1  1 前期繰越 680,000 26 1 1   200,000
          12 31    
               

 備品Aを売却した時の備品の相手勘定科目を摘要の所に書かなければなりません。この時の仕訳はすでにしていますから、もう一度見てみます。
減累40   び品200
ゲヨ100   
そん固60   
備品の相手勘定科目は複数ありますから、これは諸口と書きます。次のようになります。
備     品
日付 摘要 借方 日付 摘要 貸方
26  1  1 前期繰越 680,000 26 1 1 諸口 200,000
          12 31    
               

 次は決算日の備品勘定の締切です。借方の総計は680です。680-200=480 ですから、次期繰越は480です。次のように書きます。
備品の相手勘定科目は複数ありますから、これは諸口と書きます。次のようになります。
備     品
日付 摘要 借方 日付 摘要 貸方
26  1  1 前期繰越 680,000 26 1 1 諸口 200,000
          12 31 次期繰越 480,000
        680,000         680,000

 これで備品は終了です。次に備品減価償却累計額を見てみます。次のようになっています。
備品減価償却累計額
日付 摘要 借方 日付 摘要 貸方
26 1 1     26 1 1 前期繰越  
  12 31       12 31    
               

 これも26年1月1日という日にちを左右に書いてあり、右には、前期繰越と書いてあります。26年期首の減価償却累計額は図の26年の四角の左上の数字を足せばいいのです。40+40+10=90 で90です。左の1月1日の所は備品Aの売却の取引ですから、この仕訳をもう一度見ると、減累は40です。相手勘定科目は備品です。左に40、右に90を書き込むことになります。次のようになります。
備品減価償却累計額
日付 摘要 借方 日付 摘要 貸方
26 1 1 備品 40,000 26 1 1 前期繰越 90,000
  12 31       12 31    
               

 次に26年期末にある固定資産の減価償却をしなければなりません。26年期末に持っている固定資産は備品Bと備品Cです。減価償却費の計は26年の白い四角の右下の数字を足せばいいですから、40+40=80 で、80です。間接法による減価償却は、左が減価償却費、右が減価償却累計額の次の仕訳になります。
げん償80   減累80
備品減価償却累計額
日付 摘要 借方 日付 摘要 貸方
26 1 1 備品 40,000 26 1 1 前期繰越 90,000
  12 31       12 31 減価償却費 80,000
               

 貸方の計を計算すると、90+80=170 で170になります。だから次期繰越は170-40=130 です。次のようになります。
備品減価償却累計額
日付 摘要 借方 日付 摘要 貸方
26 1 1 備品 40,000 26 1 1 前期繰越 90,000
  12 31 次期繰越 130,000   12 31 減価償却費 80,000
        170,000         170,000

 これで問4は終わりました。次に問5を見ます。27年1月1日における除去損を尋ねています。仕訳をします。備品Bの図を見ると、取得金額 320、減価償却累計額 80 です。見積処分価額は貯蔵品の勘定科目で処理します。これは26年の白い四角の右端中央に書きました。1月1日に除去しているから減価償却費はありません。この仕訳は次のようになります。
減累80   び品320
ちょ50   
左右の金額を合わせるには、320-80-50=190 で、190を固定資産除去損にすればよいのです。だから仕訳は
減累80   び品320
ちょ50   
そん除190   
になります。解答用紙に190,000 と書きます。
 次に問6です。備品Bの減価償却を定率法に変えています。もう一つ図を書きます。

備品B  320
25年 26年 27年
   80  140 
        
定率       
25%   50   
        
        
 80  60   
12/3112/3112/31 ,1/1
  除去

 この図を書いた後、200%定率法によって減価償却した場合の27年1月1日の除去の仕訳をします。
減累140   び品320
ちょ50   
左右の金額を合わせるには、320-140-50=130 で、130を固定資産除去損にすればよいのです。だから仕訳は
減累140   び品320
ちょ50   
そん除130   
になります。解答用紙に130,000 と書きます。

 個別原価計算の問題はボックス図を書き図示するとミスが少なくなります。日商簿記検定試験問題 第2級 第143回 第4問 に次のような問題が出題されています。
当工場では、実際個別原価計算を採用している。次の[資料]にもとづいて、下記の問に答えなさい。

[資料]
(1)
製造指図書番号直接材料費直接労務費 直接作業時間備考
#11302,000円150,000円 120時間5/15 製造着手
5/28 完成
6/2   販売
#12  50,000円(5月分)
300,000円(6月分)
  40,000円(5月分)
160,000円(6月分)
  60時間(5月分)
100時間(6月分)
5/20 製造着手
6/3   完成
6/8   販売
#13820,000円350,000円 280時間6/4   製造着手
6/10 一部仕損
6/20 完成
6/22 販売
#13-270,000円100,000円 80時間6/11 補修開始
6/15 補修完了
#14840,000円750,000円 600時間6/21 製造着手
6/27 完成
6/30 在庫
#1580,000円37,500円 30時間6/28 製造着手
6/30 仕掛

なお、#13-2は仕損が生じた#13を補修して合格品とするために発行した指図書であり、仕損は正常なものであった。
(2) 製造間接費は、直接作業時間を配賦基準として各製造指図書に予定配賦している。年間の製造間接費予算額は12,960,000円、年間の製造直接作業時間は14,400時間である。6月の製造間接費実際発生額は、1.120,000円であり、月次損益計算書においては、製造間接費の配賦差異は原価差異として売上原価に賦課する。

問1 6月の仕掛品勘定と月次損益計算書を作成しなさい。
問2 製造間接費の予定配賦額と実際発生額の差異について、上記の予算を用いて予算差異と操業度差異を計算しなさい。借方差異か貸方差異かを明示すること。
 解答用紙は次のように与えられています。
問1
仕  掛  品 (単位:円)
6/1  月初有高(                        )     6/30  製  品(                        )
  30  直接材料費(                        ) 〃  月末有高(                        )
〃  直接労務費(                        )
〃  製造間接費(                        )    
  (                        )   (                        )

月次損益計算書 (単位:円)
売上高       9,320,000
売上原価
   月初製品有高   560,000
   当月製品製造原価   (                        )
      合  計   (                        )
   月末製品有高   (                        )
      差  引   (                        )
   原価差異   (                        )   (                        )
      売上総利益       (                        )
販売費および一般管理費       1,870,000
      営業利益       (                        )

問2
  予算差異=   (  借方差異  ・  貸方差異  )
      いずれかを◯で囲むこと
  操業度差異=   (  借方差異  ・  貸方差異  )
      いずれかを◯で囲むこと

 市販の参考書は原価計算表を書いて計算しています。しかし原価計算表ではどれが未完成なのか、どれが未引渡なのかのイメージが抱きにくく、勘違いして間違えることも少なくありません。私はボックス図を書いてイメージ化することを勧めます。ボックス図は直接材料費、直接労務費、製造間接費、製品の4つ書きます。直接材料費は直材、直接労務費は直労、製造間接費は製間と略しています。
 まず主となる月を書きます。この場合は6月です。その下に直材と書き直接材料費のボックス図を書きます。この場合は次のようになります。
6月
直材
 ⑫ 50   ⑫ 350  
    ⑬ 890  
 ⑫ 300   ⑭ 840  
 ⑬ 820      
 ⑬ -2 70      
 ⑭ 840   ⑮ 80  
 ⑮ 80      
  製間
 ⑫ 54   ⑫ 144  
    ⑬ 324  
 ⑫ 90   ⑭ 540  
 ⑬ 252      
 ⑬ -2 72      
 ⑭ 540   ⑮ 27  
 ⑮ 27      
 
直労
 ⑫ 40   ⑫ 200  
    ⑬ 450  
 ⑫ 160   ⑭ 750  
 ⑬ 350      
 ⑬ -2 100      
 ⑭ 750   ⑮ 37.5  
 ⑮ 37.5      
  製品
 ⑪ 560   ⑪ 560  
    ⑫ 694  
 ⑫ 694   ⑬ 1664  
 ⑬ 1664      
 ⑭ 2130      
    ⑭ 2130  
       
 年間の製造間接費予算額は12960、年間の製造直接作業時間は14400ですから、
12960/14400=0.9
1時間に0.9で製造間接費を予定配賦することになります。製造間接費は直接作業時間に0.9をかけて出しています。
 直材の右側の⑫ 350は直材の左側の50と300を足したものです。直材の右側の⑬ 890 は直材の左側の820と70を足したものです。直材の右側の⑭ 840、⑮ 80 は直材の左側の数字と同じです。直労、製間も同様です。
 製品の左側の⑪ 560 は直接材料費302、直接労務費150、製造間接費108(120× 0.9=108)を足したものである。製品の左側の⑫ 694 は、直材の右側の⑫ 350、直労の右側の⑫ 200、製間の右側の⑫ 144を足したものである。製品の左側の⑬ 1664、⑭ 2130も同様である。
 次に数字を集計します。
6月
直材
 ⑫ 50   ⑫ 350  
    ⑬ 890  
 ⑫ 300   ⑭ 840  
 ⑬ 820   /2080  
 ⑬ -2 70      
 ⑭ 840   ⑮ 80  
 ⑮ 80 /2110     
  製間
 ⑫ 54   ⑫ 144  
    ⑬ 324  
 ⑫ 90   ⑭ 540  
 ⑬ 252   /1008  
 ⑬ -2 72      
 ⑭ 540   ⑮ 27  
 ⑮ 27 /981     
 
直労
 ⑫ 40   ⑫ 200  
    ⑬ 450  
 ⑫ 160   ⑭ 750  
 ⑬ 350   /1400  
 ⑬ -2 100      
 ⑭ 750   ⑮ 37.5  
 ⑮ 37.5 /1397.5     
  製品
 ⑪ 560   ⑪ 560  
    ⑫ 694  
 ⑫ 694   ⑬ 1664  
 ⑬ 1664   /2918  
 ⑭ 2130      
  /4488  ⑭ 2130  
       
 これから解答用紙は次のように記入できます。
仕  掛  品 (単位:円)
6/1  月初有高(                        )     6/30  製  品(      4,488,000     )
  30  直接材料費(      2,110,000     ) 〃  月末有高(                        )
〃  直接労務費(      1,397,500     )
〃  製造間接費(        981,000     )    
  (                        )   (                        )

 製品の4,488,000は製品のボックス図の左側にある4488です。これは、直材、直労、製間の右側の集計、2080、1400、1008を足したものと一致します。
 月初有高は直材の⑫ 50、直労の⑫ 40、製間の⑫ 54を足した144になります。月末有高は直材の⑮ 80、直労の⑮ 37.5、製間の⑮ 27を足した144.5になります。これを記入して集計すると、次のようになります。
仕  掛  品 (単位:円)
6/1  月初有高(        144,000     )     6/30  製  品(      4,488,000     )
  30  直接材料費(      2,110,000     ) 〃  月末有高(        144,500     )
〃  直接労務費(      1,397,500     )
〃  製造間接費(        981,000     )    
  (      4,632,500     )   (      4,632,500     )

 月次損益計算書も次のように記入できます。
月次損益計算書 (単位:円)
売上高       9,320,000
売上原価
   月初製品有高   560,000
   当月製品製造原価   (     4,488,000      )
      合  計   (     5,048,000      )
   月末製品有高   (     2,130,000      )
      差  引   (     2,918,000      )
   原価差異   (                        )   (                        )
      売上総利益       (                        )
販売費および一般管理費       1,870,000
      営業利益       (                        )
 予定配賦した製造間接費が981であり、実際発生額は1120ですから、原価差異は981-1120=-139です。これを記入して集計すると、

月次損益計算書 (単位:円)
売上高       9,320,000
売上原価
   月初製品有高   560,000
   当月製品製造原価   (     4,488,000      )
      合  計   (     5,048,000      )
   月末製品有高   (     2,130,000      )
      差  引   (     2,918,000      )
   原価差異   (        139,000      )   (     3,057,000      )
      売上総利益       (     6,263,000      )
販売費および一般管理費       1,870,000
      営業利益       (     4,393,000      )

 損益計算書は実際の原価で出しますから、139,000は足すことになります。
 6月の直接作業時間は
100+280+80+600+30=1090
です。年間の正常直接作業時間が14,400時間ですから、1ヶ月の正常直接作業時間は
14400/12=1200
です。
だから操業度差異は
0.9× (1090-1200)=-99
実際直接作業時間が正常直接作業時間より少ないのですから、これは不利です。損をしています。だからこれは借方差異です。
年間の製造間接費予算額は12960ですから、1ヶ月の予算額は
12960/12=1080
6月の製造間接費の実際発生額は1120ですから
1080-1120=-40
製造間接費の実際発生額は予算額より大きいのですから、これも不利です。損をしています。だからこれは借方差異です。よって問2の答えは、
問2
  予算差異= 40,000円   (  ◯ 借方差異  ・  貸方差異  )
      いずれかを◯で囲むこと
  操業度差異= 99,000円   (  ◯ 借方差異  ・  貸方差異  )
      いずれかを◯で囲むこと
 HTMLでは、文字を◯ で囲むことが難しいため、前に◯ を書きましたが、実際の答案は◯ で借方差異の文字を囲まなければなりません。不要のほうを二重線で消す指示になっていることもあります。問題の指示の細部まで読まないと得点を失います。

 次に端数利息の問題です。日商簿記検定試験問題 第2級 第137回 第1問 5 に次のような仕訳問題が出題されています。
 平成25年11月12日に売買目的で購入していた東京興業株式会社の社債(額面¥100につき取得原価¥98.60、額面総額¥5,000,000)を平成26年2月18日に、額面¥100につき¥97.80で証券会社に売却した。売却代金は端数利息とともに所定の営業日内に当座預金口座に振り込まれることになっている。この社債の利払い日は毎年3月末と9月末であり、社債の額面利率は年1.46%である。なお端数利息の計算期間は。前回の利払い日の翌日から売却前日までの期間としている。
 端数利息の問題は、問題文を読んだだけでは利息を払うのか、もらえるのか、どの期間の利息を払ったりもらったりするのかのイメージを描きにくく、勘違いすることも少なくないため、図示します。

  5000
  1.46%
        
        
     もらえる  
        
        
3/31 9/30 2/18 3/31  
 利

 一番上に額面金額を書き、その下に年利率を書いてあります。端数利息は、買った時に支払い、売った時にもらえますが、買い、売りという言葉にひきずられ、買った時にもらえ、売った時に支払うようなイメージがあります。買った時は支払う、売った時はもらえるということを図に書きみうっかり勘違いしないようにします。
 図は端数利息の期間を白の四角にし、他は黄色の四角にしています。経過利息の期間をはっきりさせるためです。試験の時は色鉛筆は使えないので、黄色の所は斜線にします。
 本問は問題文に「端数利息の計算期間は、前回の利払い日の翌日から売却前日までの期間としている。」とあります。よって10月1日から、2月18日までの期間(10月1日は含み、2月18日は含まない)になります。この日数計算は次のようにできます。
10月 31
11月 30
12月 31
1月 31
2月 17
31+30+31+31+17=140
となります。
しかしこの計算は月ごとの日数を書き出さなければならないから少し時間を取ります。また書き出している時にうっかり10月を30日としてしまうようなミスも起こり得ます。また上の計算は30, 31という似た数字がいくらか出てくるため、入力ミスが起きやすいです。
 日商簿記検定試験では、日数計算の機能のある電卓の使用は許可されています。電卓で日数計算をするほうが簡単でミスが少なくなります。私の持っているSHARP ELSI MATE EL-G37では、
10  日数/時間  1  ~  2  日数/時間  18  =  とキーを打つことで140と日数が出てきます。日数計算の起点日と終点日を含めるか、含めないかは電卓で前もって設定できます。起点日は含め、終点日は含めない設定が汎用性が高いと思います。
 これは第1問の問題ですから、日数計算を間違えればそれだけで4点を失います。持っている電卓の優劣で合否が決まるのは寂しいことです。日数計算の機能のある電卓を使ったほうがよいと思います。
端数利息は
5000× 1.46%× 140/365=28
買った金額は
0.986× 5000=4930
売った金額は
0.978× 5000=4890
入ってくる金額は
4890+28=4918
有価証券利息は有利と略するように増える時に右側に来ます。よって仕訳は
み収 4918  ばい有4930
    有利28
左右貸借差は
4930+28-4918=40
有価証券売却損は40になります。
これは
4930-4890=40
とも一致しています。よって仕訳は
み収 4918  ばい有4930
そん有 40  有利28
正式に書くと、
未収入金4,918,000 売買目的有価証券4,930,000
有価証券売却損40,000 有価証券利息28,000

 次に有価証券を買った場合の端数利息の問題を解きます。日商簿記検定試験問題 第2級 第145回 第1問 3 に次のような仕訳問題が出題されています。
 満期まで保有する目的で名古屋自動車工業株式会社が発行する社債(額面総額¥60,000.000)を平成28年9月8日に額面¥100につき¥99.50にて購入し、前回の利払日翌日から売買日までの端数利息(1年を365日とする日割計算で算出し、収益の勘定を用いて処理すること)とともに当社の当座預金口座から指定された銀行の普通預金口座へ振り込んだ。この社債は平成27年7月1日に発行された普通社債であり、満期までの期間は10年、利払日は毎年6月と12月の末日、利率は年0.365%であった。
 これも上の問題と同様にまず図を書きます。
  60000
  0.365%
        
        
     支払う  
        
        
12/31 6/30 9/8 12/31  
 利
 購入の場合も売却の場合と同じく、売却した日の左側に白く四角ができ、ここが端数利息を計算する期間になります。
  6月30日から9月8日までの日数は、70日ですから、端数利息は
60000× 0.365%× 70/365=42
購入金額は、
0.995× 60000=59700
有価証券利息は支払うのですから、減少します。だから有利は左に来ます。
振り込む全額は
59700+42=59742
よって仕訳は
まん債 59700  59742
有利 42  
正式に書くと、
満期保有目的債券59,700,000 当座預金59,742,000
有価証券利息42,000   

 満期保有目的債券と善い、満期保有目的有価証券とは言いません。細かいことですが、第1問は少しでも違うと4点を失いますから細かい注意が必要です。

 次に銀行勘定調整表の問題を解きます。日商簿記検定試験問題 第146回第2問に次のような問題が出ています。
 東京商店の平成X年3月31日の決算(1年決算)にかかわる次の[資料]にもとづいて、下記の[設問]に答えなさい。

[資料]
1. 決算にあたり、現金の実際有高を調べたところ、通貨(紙幣および硬貨)¥121,200のほかに、手許に次のものがあることが判明した。
他人振出しの小切手 ¥16.000   収入印紙 ¥6,000   配当金領収証 ¥7,500
郵便切手 ¥5,500   送金小切手 ¥10,000
2. 決算にあたり、取引銀行から当座預金の残高証明書を取り寄せたところ、その残高は¥328.200であり、東京商店の当座預金勘定の残高とは一致していなかった。そこで、不一致の原因を調査した結果、次の事実が明らかとなった。
① 仕入先に対して買掛金の支払いとして小切手¥32.000を振り出して渡したが、決算日現在、仕入先は小切手を銀行にまだ呈示していなかった。
② 売掛金の回収として得意先振出しの小切手¥16,00を受け取り、その時点で当座預金の増加として処理していたが、決算日現在、金庫に入れたままで、銀行への預入れを行っていなかった。
③ 電子債権記録機関より発生記録の通知を受けていた電子記録債権の支払期日が到来し、当座預金の口座に¥23,000が振り込まれていたが、決算日現在、この取引の記帳はまだ行っていなかった。
④ 決算日に売上代金¥44,500を銀行の夜間金庫(当座預金)に預け入れたが、銀行では営業時間を過ぎていたため、当日の入金としては処理していなかった。
[設問]
問1 答案用紙の銀行勘定調整表を完成しなさい。なお、[  ]には上記の[資料] 2.における番号① ~④ を記入し、(  )には金額を記入すること。
問2 上記の[資料] 2 における① ~④ のそれぞれについて、決算における東京商店の修正仕訳を答えなさい。ただし、勘定科目は、次の中から最も適当と思われるものを選び、正確に記入すること。また、修正仕訳が不要な場合には、答案用紙の借方科目欄に「仕訳なし」と記入すること。
    現金   当座預金   電子記録債権    売掛金   電子記録債務   買掛金    売上   仕入
問3 貸借対照表に計上される現金および当座預金の金額を求めなさい。
解答用紙は次のように与えられています。
問1
銀 行 勘 定 調 整 表
平成×年3月31日
  (単位:円)
銀行の残高証明書の残高 (                         )
加算: [               ] (                         )  
  [               ] (                         ) (                         )
減算: [               ] (                         )  
  [               ] (                         ) (                         )
東京商店の当座預金勘定の残高 (                         )

問2
  東 京 商 店 の 修 正 仕 訳
借 方 科 目金 額 貸 方 科 目金 額
①         
②         
③         
④         

問3
貸借対照表に計上される現金の金額  ¥ 
貸借対照表に計上される当座預金の金額  ¥ 

 銀行勘定調整表は、両者区分調整法、企業残高基準法、銀行残高基準法の3つがあります。必ず両者区分調整法で作成すべきです。両者区分調整法は企業の調整が必要な時は企業側から考え、銀行の調整が必要な時は銀行側から考えます。だから感覚的にわかりやすいのです。企業残高基準法や銀行残高基準法は企業の調整が必要なのに銀行側から考えたり、銀行の調整が必要なのに企業側から考えたりします。これではわかりにくく、足すのか引くのか混乱します。まず両者区分調整法で作成して必要があれば、プラス、マイナスの符号を反対にすることで簡単に企業残高基準法、銀行残高基準法に変えることができます。具体的に見ていきます。
 資料2を見ると、銀行の当座預金の残高証明書が328,200と書いてあります。企業の帳簿の当座預金残高は与えられていません。銀行の残高証明書を基準にして、企業の帳簿の当座預金残高に一致させるのですから、これは銀行残高基準法により銀行勘定調整表を作成しなければなりません。しかしいきなり銀行勘定調整表を作成すると、足すのか、引くのか混乱するため、感覚的にわかりやすい両者区分調整法をまず作成します。計算用紙に
 企業 銀行
と書きます。
 資料2の① を見てみます。「小切手を振り出しているが仕入先は小切手をまだ銀行に呈示していない」と書いてあります。これは未取付小切手を言われるものです。企業のほうは小切手を振り出した時にすでに仕訳をし処理をしています。仕入先が取り付けようが、取り付けなかろうがさらに処理をすることはありません。これは純粋に銀行側の処理になります。だから企業側は「仕訳なし」になります。問2の① はこれが答えです。銀行側はどういう処理になるのでしょうか。仕入先が取り付ければ当座預金が減りますから、32,000を引かなければなりません。よって、計算用紙に
 企業 銀行
  -32
と書きます。
 次に資料2の② です。小切手を受け取ったのに当座預金の増加として処理しています。この仕訳は誤っています。小切手は現金ですから、現金の増加としなければなりません。正しくは、
16   うり×16
です。これを誤って
16   うり×16
と仕訳しているのです。これは訂正仕訳をする必要があります。まず逆仕訳をして、
うり×16   16
次に正しい仕訳は
16   うり×16
です。二つを並べて書くと、
うり×16   16
16   うり×16
うり×は打ち消し合うから
16   16
になります。
よって問2 ② の答えは
現金16,000 当座預金16,000
になります。企業側が16減るのですから両者区分調整法では、
 企業 銀行
  -32
-16  
となります。
 次に資料2の③ です。当座預金に振込があったのにまだ記帳がされていません。これは当然記帳をしなければなりません。当座預金が増えるから「ト」は左になります。電子記録債権が減るから、「でんけん」は右になります。
23   でんけん23
です。よって問2の③ は
当座預金23,000 電子記録債権23,000
になります。当座預金は増えていますから、両者区分調整法は
 企業 銀行
  -32
-16  
23  
になります。
 次に資料2の④ です。時間外にお金を預け入れています。企業側は預け入れた時に当座預金の増加として処理しています。もうこれ以上処理することはありません。問2の④ は「仕訳なし」が答えです。銀行側は夜間に預けられたからその日はまだ処理していません。しかし翌日が平日であれば翌日に、平日でなければ最初の平日にに当座預金の増加として処理することになります。従って両者区分調整法は
 企業 銀行
  -32
-16  
23  
  44.5
になります。銀行の修正前の当座預金残高328.2から32を引き、44.5を足せば正しい銀行の当座預金残高になります。つまり
328.2-32+44.5=340.7
です。企業の修正前の当座預金残高から正しい当座預金残高を求めた時もこの340.7になります。この340.7から修正前の企業の当座預金残高を求めるには両者区分調整法の企業の下の数字のプラス、マイナスの符号を反対にすればいいのです。つまり、
 企業 銀行
  -32
-16      16  
23      -23  
  44.5
となります。よって
328.2-32+44,5-23+16=333.7
になります問1の答えは次のようになります。
銀 行 勘 定 調 整 表
平成×年3月31日
  (単位:円)
銀行の残高証明書の残高 (   328.2000     )
加算: [      ②     ] (       16,000       )  
  [      ④     ] (       44.500       ) (       60,500     )
減算: [      ①     ] (       32,000       )  
  [      ③     ] (       23,000       ) (       55,000     )
東京商店の当座預金勘定の残高 (   333.7000     )
 問3の貸借対照表に計上される当座預金の金額は、上で求めた340.7になります。正式な答えにすれば、340,7000です。
 問3の貸借対照表に計上される現金の金額は資料[1]から考えます。ここの送金小切手というのも小切手のようなものです。小切手を振り出すには、銀行に当座預金を開いていなければなりません。ところが送金小切手は当座預金を開いていなくても振り出すことができます。振出人が銀行だからです。銀行にお金を払って小切手を発行してもらうのです。
 資料[1]の中で現金とみなされるものは、通貨 ¥121,200、他人振出しの小切手 ¥16,000、配当金領収証 ¥7.500、送金小切手 ¥10.000 です。収入印紙は租税公課になります。郵便切手は通信費になります。だから現金の金額は121.2+16+7.5+10=154.7になります。正式な答えにすれば154,700です。だから問3の答えは次のようになります。
貸借対照表に計上される現金の金額  ¥     154,700
貸借対照表に計上される当座預金の金額  ¥     340,700

 次に日商簿記検定試験問題2級の問題を解く順番と、得点の仕方について書きます。
 日商簿記検定試験2級は日商簿記検定試験3級に通った人が受けることが多いと思います。日商簿記2級と日商簿記3級の大きな違いは2級は工業簿記からも出題されることです。商業簿記のほうはすでに3級の時から勉強していますからなじみがあります。しかし工業簿記は日商簿記2級で初めて勉強する人も少なくありません。それで工業簿記に苦手意識を持ち、解く順番もなじみのある商業簿記の第1問、第2問、第3問を先に解き、その後に工業簿記の第4問、第5問を解こうとすることがあります。しかしこの解く順番はよくありません。まず工業簿記の第4問、第5問を解くべきです。と言うのは、工業簿記のほうは解きやすい問題が多く、満点を取ることも可能です。一方商業簿記の第3問はかなり時間がかかり、また満点を取ることは非常に困難です。それで第3問は必ず一番最後に解くべきです。工業簿記の問題の難点は、関連した設問が出されるために最初のほうの答えで間違えば、その間違った答えを使って次の設問を解くため次の設問も間違い、その間違った答えでまた次の設問を解くため次の設問も間違い、結局総倒れとなることがあることです。第4問が0点、あるいは第5問が0点ということも起こりえます。だから第4問、第5問の最初の段階で計算間違いや勘違いをすることは絶対に避けなければなりません。人間の頭は計算をし続けますと、自覚するしないにかかわらず、疲れてきてミスが出やすくなります。絶対に計算ミスをしてはならない第4問、第5問の最初の設問は頭が一番疲れていない時、つまり試験開始直後に解くべきです。
 第4問、第5問が終われば次に第1問を解きます。第1問は5つの小問に分かれています。すべて仕訳問題です。仕訳問題の難点は部分点がないことです。少しでもミスをすれば4点を失います。だから細心の注意が必要です。しかし概して第2問、第3問より点が取りやすいことが多いため、先に第1問を解きます。第1問の許容できる失点は8点までです。12点失えば合格することは非常に困難になります。
 第2問は出題される論点により難易度が変わります。銀行勘定調整表、株式資本等変動計算書の問題が出ればやさしくなります。この2つ以外の論点が出されると中程度以上の難度になります。ただ第2問がやさしい時は他の所を難しくして調整しているようです。しかし合格率にかなり幅があるように、第2問もやさしく他の所もやさしい運のいい時もあるようです。
 第3問は時間がかかります。また当期純利益は、それまでの答えがすべてあっていなければ合わないため満点を取ることは非常に困難です。しかし工業簿記の問題のように0点になる恐れは少なく、かなり難しい問題でも8点程度取ることは困難でありません。当期純利益は最初から捨てて解かないほうがよいと思います。第4問、第5問、第1問、第2問、第3問の当期純利益以外を見直して後なお時間がある時にのみ当期純利益を出すべきです。ここまで時間が余ることは少ないと思います。第3問は最初から部分点狙いですから、資料の各項目から数字が出れば、それをきちんと答案用紙に書いていきます。第3問は、時間がかかり疲労が大きくなること、たとえ一つの答えが間違っても工業簿記のように総倒れになることは少なく、ミスが出てもそれが部分にとどまり致命的にならないこと、この2点から第3問は一番最後に解きます。
 合格するためには比較的点の取りやすい第1問、第4問、第5問で確実に点を取ることです。第1問、第4問、第5問で満点の60点を取れば第2問、第3問で10点取れば合格できます。第2問、第3問の40点の配点のうち10点を取ることは難しい問題でもそう困難でないでしょう。第1問、第4問、第5問で9割の54点を取れば、第2問、第3問で16点を取ればいいのです。第3問は難しくても8点は取れるでしょうから、後は第2問で8点取ればいいことになります。第2問は難易の差が大きいです。銀行勘定調整表や株主資本等変動計算書が出題されれば8点取ることは容易でしょう。それ以外の論点が出題されると、第3問でもっと点を取っておく必要があります。第1問、第4問、第5問を合わせて許容できる失点は2割までです。それ以上失点すると、第2問でやさしい問題が出ない限り合格は難しくなります。第1問、第4問、第5問で8割、48点取ると、残り22点を第2問と第3問で取ることになります。第3問は難しくても8点は取れるでしょうから、残り14点が第2問で取れるかどうかになります。第2問が難しい場合は、第3問でもっと得点しておかないと合格は難しくなります。


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作成日:2017年7月16日