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虫歯と歯周病について

 現代人は虫歯や歯周病に悩まされる者が多い。そのため現代にはたくさんの歯医者がいる。虫歯の原因は歯垢の中の細菌(主にミュータンス菌(Streptococcus mutans))が飲食物から酸をつくり、それがエナメル質を溶かすためだということになっている。また歯周病の原因は歯垢や歯石が歯肉縁を刺激し、歯周組織を破壊するためだということになっている。ミュータンス菌を中心とする細菌が糖質を酸に変え、その酸が細菌や食物残渣といっしょになったのが、歯垢である。歯垢が齒から取り除かれないとカルシウムやリン酸が沈着して歯石となる。(1) (2)
 歯垢や、歯石が虫歯や歯周病の原因ならば、それを取り除けば虫歯や歯周病は防げるはずである。それできれいに歯磨きし、また頻回に歯磨きすることが虫歯や歯周病を予防すると言われている。歯医者は皆きれいに歯磨きすること、頻回に歯磨きすることを勧めている。
 ところがここに大きな矛盾した事実が存在する。歯磨きをまったくしない野生の動物には虫歯や歯周病がまったくと言ってよいほどないのである。ライオンの牙が虫歯になったのを見るだろうか。牛の臼齒が歯周病で抜けたのを見るだろうか。歯磨きをしないなら、歯垢や歯石が残るはずである。それならば動物はなぜ虫歯や歯周病にならないのか。
 動物の歯は人間よりはるかに強いからであろうか。エナメル質、象牙質、セメント質、歯髄という構造は同じである。人間と動物のエナメル質の構造にほとんど違いがないことを研究者は示している。(3) 人間の歯には切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯があり、歯の形が違う。動物の歯の形も人間とまったく同じではない。切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯の数や割合も違う。しかしこれは表面的な差異であり、基本的構造はみな同じである。だから基本的構造が違うから、動物が虫歯や歯周病になりにくいとは言えない。犬は唾液の中のPHが人間と比べかなり高く、それがため虫歯になりにくいとは言われている。(3) しかし他の動物はそうでないだろう。またこれで犬が虫歯になりにくいことは説明できても、歯周病になりにくいことは説明できない。
 不思議なことに動物も人間にペットとして飼われると虫歯や歯周病になるのである。そのためにペットの犬の歯磨きを獣医は勧めている。
 人間も原始人や古代人はほとんど虫歯や歯周病にならなかったようだ。ただ年をとると歯が抜けることはかなり昔から記録されている。歯周病はかなり昔からあったようだ。虫歯はこの百年ぐらいに目立ってきたことで、江戸時代はほとんどなかっただろう。
 虫歯、歯周病が歯垢や歯石からできるものだとするなら、野生の動物や古代人に虫歯、歯周病が少ないという事実が説明できない。これ以外の原因があると考えなければならない。今、虫歯、歯周病の予防というとただ歯磨きが勧められる。しかし歯磨きをまったくしないあるいはしなかった野生の動物や古代人に虫歯、歯周病が少なかったということは、歯磨きをしなくても虫歯や歯周病にならないことを示している。
 薬品をつくる時まず動物実験がなされる。動物実験で効果が確かめられた後はじめて人間に投与する臨床試験がなされる。ところが歯磨きという治療法は動物実験では否定されることである。歯磨きをまったくしない野生動物は虫歯や歯周病にならないからである。動物実験で成り立たないが、人間で成り立つということを示したいのなら、その部位が人間と動物で非常に異なるということを示さなければならない。ところが歯の構造は人間と動物で基本的に同じなのである。このように考えると歯磨きで虫歯、歯周病が防げるという考え方は科学的根拠があいまいだと言わざるを得ない。歯垢や歯石が虫歯、歯周病の原因であるする理論から、歯磨きが虫歯、歯周病を防ぐという結論を導き出している。しかしこの理論自体が、正しいのかどうかあやしい。もしこの理論が正しいのなら、歯磨きをまったくしないから、歯垢、歯石がたくさんあるであろう野生動物、原始人、古代人は皆虫歯、歯周病になるはずである。ところが実際は野生動物、原始人、古代人に虫歯、歯周病はほとんどない。虫歯、歯周病は歯垢、歯石説だけでは説明できないのである。これも原因の一つかもしれないが、単なるマイナーな 原因であり、もっと大きな原因が他にあると思う。
 むしろ歯磨きをすることでかえって歯を痛めていることはないのだろうか。歯磨きは一面美容のためになされる。歯磨きをしないと黄色い歯になることが多く、白い歯にするために歯磨きをするのである。メーカーもこの要求に答えるために歯を白くする成分を歯磨き粉に入れている。無水ケイ酸(研磨剤)やラウリル硫酸ナトリウム(合成界面活性剤)が入っている。研磨剤はエナメル質を痛める。また中性洗剤(合成界面活性剤)で歯を磨けば、歯だけでなく、それが体に吸収されると体全体に悪影響を及ぼすだろう。(4) 歯を歯ブラシで何回もこすると、それによってエナメル質が摩耗することも考えられる。実際歯ぎしり程度でもエナメル質を害することになるから、これも虫歯の一因であると考えられている。(3)
 野生動物に虫歯、歯周病がないのに、ペットの動物に虫歯、歯周病があること、古代人に虫歯、歯周病が少なかったのに現代人にあることから食べ物が大きな原因になっていると考えられている。ペットの動物は人間が食べるようなものを食べさせるから虫歯、歯周病になるのである。現代は食べ物がやわらかくなり、現代人は噛むことが少なくなっている。また現在のように精製した砂糖は古代に存在しなかった。砂糖を使った料理も原因となっているのだろう。また人間だけが火を使う。熱いものを食べるのも歯によくないのかもしれない。貝原益軒はその養生訓の中で「熱湯にて口をすすぐべからず、歯を損す。」と記述している。(5) また現代使われている種々の食品添加物も影響しているのかもしれない。また現代人は肉食、運動不足などのために肥満になることが多い。歯は体の一部なのだから、体全体が不調になると、当然歯も不調になり、虫歯、歯周病になることも考えられる。
 現代歯科学は虫歯、歯周病の歯垢、歯石説を金科玉条とし、これから歯磨きが虫歯、歯周病の唯一の予防法であると考え、歯磨きを強く勧めている。ペットの犬にさえ歯磨きを勧めている。しかしこれが主原因と言うには根拠が非常に薄弱である。歯垢、歯石も原因の一つ、誘因の一つではあろうが、単なるマイナーな原因であり、主な原因は別の所にある。やわらかいものをあまり噛まずに食べるとか、砂糖等の極度に精製したものをたくさん食べているとか、現代人は肉食、運動不足のため体全体が半健康になっているとか、研磨剤入りの歯磨き粉で歯磨きをしているとかがむしろ主原因と思われる。虫歯、歯周病の予防は歯磨き一辺倒の指導でなく、こういう観点からの指導も必要なのでなかろうか。

参考文献
(1) ウィキペディア う歯. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E6%AD%AF (2007/1/17アクセス)
(2) 健康ネット 虫歯・歯周病 https://www.health-net.or.jp/kenkozukuri/healthnews/060/030/k1668/index.html (2007/1/17 アクセス)
(3) ウィキペディア エナメル質 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%8A%E3%83%A1%E3%83%AB%E8%B3%AA (2007/1/17アクセス)
(4) 環境と命を守る会 ハミガキ編     https://www.coara.or.jp/~wadasho/y-zukaihamigaki.htm (2007/1/17アクセス)
(5) 貝原益軒. 養生訓・和俗童子訓.岩波文庫 p.109.

2007年1月19日作成

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