マスクに感染抑制効果はあるのか

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 新型コロナウイルス感染防止のため、マスク着用が強く勧められている。学校の教室では、みんながマスクをつけている。スーパーマーケットにマスクをつけずに入るとマスクを渡されマスクをつけることを強制される所もある。ランニングをする時もマスクをつけるのがエチケットとされる。しかしマスクが新型コロナウイルス感染抑制に効果があるというはっきりとした根拠に乏しい。理論的根拠、科学的根拠に乏しくヒステリックにマスク着用を強制している。むしろマスク着用が感染を広め、感染を悪化させる恐れもある。
 2020年5月29日の日本経済新聞朝刊では、近畿大学准教授東賢一氏の話をあげ、マスクをつけなければならないい根拠を次のようにする。これがマスク着用の一般的な見解だろう。
 マスクの役割は二つある。一つはくしゃみや咳でウイルスを含んだ飛沫が飛ぶ。マスクは飛沫が鼻や口に直接かかるのを防ぐ。もう一つは通常人は一時間に10回以上、自分の鼻、口、目の付近を無意識に触れるが、マスクをしていると手で直接触れることがなく、接触感染を避けることができる。
 不織布(ふしょくふ)のマスクの場合、マスクの穴は5μmほどである。μは百万分の1であり、1μmは1mの百万分の一の長さである。5μmはmmで言うと、0.005mmになる。不織布は糸を織っていない布である。糸を熱的、機械的、化学的作用により接着させてつくってある。通常の布のように糸を織っていないため、耐久性に劣り、洗濯して何度も使うことはできない。飛沫は約5μmであり、不織布のマスクでウイルスを含んだ飛沫を捉えることができ、ウイルスを防ぐことができるとする。
 私は次のように反論する。
 ウイルスの大きさは0.1μmである。ウイルスは不織布のマスクを軽々と通過する。飛沫をマスクで捕捉したとしても、ウイルスはマスクにひっかからないため、ウイルスは慣性運動で動き、飛沫からウイルスが飛び出し、口や鼻に到達する可能性が高い。
 織ってある布の場合、穴は100μmとか、200μmとか大きい。もちろん布を何枚も重ねれば穴は小さくなるが、それでも飛沫の大きさ5μmよりは大きくなる。布マスクは飛沫をほとんど捉えることができない。阿部総理は新型ウイルス感染を防ぐために全国にアベノマスクと言われるマスクを配布した。しかしアベノマスクは布マスクである。布マスクに飛沫感染を防ぐ効果はまずない。このことを知っているのか、閣僚でアベノマスクをしている人は少ない。
 不織布のマスクで飛沫とともにウイルスを捉えたとしても、ウイルスはマスクにつく。人間は呼吸するから、息を吸った時に空気の流れで、ウイルスがマスクから離れ、鼻や口に移動して人体に入る可能性がある。さらに人間は無意識に鼻や口に手で触れるように、マスクにも無意識に触れる。ウイルスのついたマスクに手が触れると手にウイルスがつく。ウイルスのついた手で自分の鼻や口を触れると接触感染を起こす。ウイルスのついた手でドアノブなどを触れると人にウイルスをうつす。
 女性の方はマスクをしていると、口紅がマスクにつくことを経験する人も多いだろう。このことはマスクと唇が接触することを示している。マスクをすると鼻もおおうから、鼻とマスクも接触する。マスクをしていると、マスクが飛沫の通過を防いだ時に飛沫はマスクにつく。飛沫に含まれるウイルスもマスクにつく。飛沫が乾燥し飛沫核になると、サイズが小さくなるから、容易にマスクを通過する。マスクの外面の飛沫が飛沫核となり、息をする時の空気の流れでマスクを容易に通過しマスクの裏面に達する可能性がある。マスクの裏面と鼻や唇は接触しているのだから、ウイルスは鼻や唇につく。鼻についたウイルスを呼吸した時に吸い込むとウイルスは人体に入ってしまう。唇についたウイルスは唇の粘膜から人体に入るし、口呼吸しても人体に入ってしまう。接触感染が成立する。
 マスクでおおっている顔の部分はマスクと接触している。マスクの外面についた飛沫が乾燥し飛沫核になると、息をする時の空気の流れでマスクの裏面に移動し、ウイルスが皮膚につく。マスクを外した時に顔を洗わずにいると、マスクでおおっていた所を手でふれ、手にウイルスがつくことになる。人間は一時間に10回以上、自分の鼻や口を無意識に手でふれるからである。手にウイルスがつくと、また手による接触感染を起こす。
 マスクが不足しているからと、何日も同じマスクをすると、ウイルスがたくさんマスクにつく。マスクについたウイルスを吸い込んだり、マスクのウイルスが鼻、口、顔につき接触感染を起こすことがもっと増える。
 マスクをしても、マスクのふちと皮膚の間に隙間ができる。この隙間は5μmよりはるかに大きく、この隙間から飛沫は楽々入る。
 飛沫は目の粘膜からも入る。たいていの人はマスクをしても、ゴーグルはしていない。たとえマスクで飛沫を完全に防いだとしても、目の粘膜から飛沫が入る。
 マスクを家の中で外したり、マスクを処分した時に、マスクのウイルスが手につく。手にウイルスがつけば接触感染を起こす。マスク着用をうるさく言うのに、どうしてマスクに手をふれないようにとか、マスクを処分した時は必ず手をきれいに洗うようにとか言わないのか。マスクをつける時も手を洗わなければならない。手を洗わないでマスクをつけると手のウイルスがマスクにつくからである。
 有名な政治家などがマスクをして記者会見に現れる。マスクを外し、マイクを取ってしばらく話をする。その後またマスクをつけて立ち去る。こういう光景をよくテレビで見かける。マスクを外す時には、マスクのひもを持って外さなければならない。マスクの前の部分に手でさわると、マスクについているウイルスが手につくからである。政治家はマスクの前を手で持って外している人が多い。これでマスクのウイルスが手につく。その手でマイクを握るから、ウイルスがマイクにつく。マイクを人に返せば、ウイルスがその人の手につく。政治家などは話を終えるとまたマスクをして立ち去る。この時手についているウイルスがマスクにつく。マスクをする前に必ず手洗いをする。マスクを外した時も必ず手洗いをする。これがマスクをする時の鉄則である。この鉄則を政治家自身が守っておらず、テレビの前で悪い見本を見せている。これを多くの人々がテレビで見るわけだから、マスクはこのようにつけてこのように外せばいいのだと思ってしまう。
   飛沫をマスクが遮断した時、通常飛沫はマスクだけに当たるのでない。襟や首や衣服にも当る。襟や首や衣服に飛沫が当たれば襟や首や衣服にウイルスがつく。襟や首や衣服に手で触れれば、手にウイルスがつき接触感染を起こす。
 飛沫は5μmだからマスクで捉えることができるとするが、報告されている飛沫にはもっと幅がある。健康な人の息の中の飛沫は0.1μm~8μmであり、病気の人の息の中の飛沫は0.05μm~10μmであり、話をしている時の健康な人の飛沫は0.1μm~12μmであるとする報告がある。このサイズが正しいとすれば、マスクで捕捉できない飛沫がかなりある。
 感染した人がマスクをすると、飛沫の飛ぶのを防ぐとする。マスクが飛沫を捉えたとしても、ウイルスはマスクの網目よりはるかに小さいから、ウイルスは捉えることができず、慣性運動でかなりのウイルスが飛沫から飛び出しマスク外に出ると考えられる。
 ウイルスに感染した時に、咳をしてウイルスを排出しようとするのは、ウイルスに対する人体の防衛反応である。悪いものを排出して体を守ろうとしているのである。マスクで飛沫を捉え、ウイルスがマスクにつくと、息を吸った時にマスクのウイルスをまた吸い込むことになる。それではウイルスの排出が十分にできない。新型ウイルスに感染しても、ウイルスの排出が十分にできれば、無症状で終わったであろう人が、ウイルスの排出が十分にできなかったがために、症状が急速に悪化し死亡する可能性がある。
  空気感染は飛沫よりさらに小さい飛沫核による感染である。飛沫核は飛沫から水分がなくなったものである。空気中を漂うからエアロゾルとも呼ばれる。飛沫核は飛沫よりさらに小さく、不織布のマスクでも捉えることができない。つまりマスクで空気感染を予防することはできない。
  インフルエンザは飛沫感染、接触感染と言われているが、空気感染の可能性も指摘されている。インフルエンザ患者の呼気の中にある5μm以下の微細粒子の39%に感染性のあるインフルエンザウイルスがいたという報告がある。そうならばインフルエンザ患者が呼吸すると、インフルエンザウイルスが空気中にばらまかれ、その空気を吸うことで感染する空気感染が起こる。
 新型コロナウイルスも飛沫感染と接触感染と言われているが、空気感染しないという確証はない。WHOも「主に屋内で、混雑し換気が不十分な場所で新型コロナウイルスが空気感染することは無視できない」としている。新型コロナウイルスも空気感染するなら、マスクはますます役に立たなくなる。
  マスクをしていても新型コロナウイルスに感染しておれば、人にうつすし、マスクをしていても、感染者と接触すれば新型コロナウイルスに感染する。マスクをしておれば、感染しないように思うのは明らかなマスクの過信である。保健所は濃厚接触者を判定する時にマスク着用を一つの判定基準にしていると聞く。マスクをしておれば、濃厚接触者とみなさず、PCR検査をしないことがあるようだ。これは明らかなマスクの過信である。それではかなりの感染者を見逃すことになり、流行に歯止めがきかなくなる。

実証試験
 2008年~2009年のフランスでのインフルエンザ流行時に、インフルエンザ検査が陽性となり、48時間症状が続いている患者がマスクをすることで家族にうつすことが減少するかどうかを調べた。他の家族と同じ部屋や車中などにいる時はマスクをつける群とマスクをつけない群に分け、これを5日間実施した。家族がインフルエンザを発症した割合は患者がマスクを着用していた群が16.2%、患者がマスクを着用していなかった群は15.8%であった。有意差はなかった。
 日本で医療従事者32名をマスク着用群17名、非着用群15名に分け、77日間風邪症状を記録する調査をした。風邪症状を有した平均日数はマスク着用群が16.1±13.6日、マスク非着用群が、14.2±14.1日であり、有意差はなかった。マスク着用群では、頭痛や気分が悪いと感じる傾向があった。
 日本で216年~2017年のインフルエンザ流行時に、感染制御実施看護師の所属する施設を対象として調査した。111施設中71施設から回答があり、55施設でアウトブレイクがあった。アウトブレイクの発生数と、サージカルマスク着用の病院規程、サージカルマスクの着用対象者、サージカルマスク着用場面、サージカルマスク着用の実施期間との関係があるか、調べたが、すべての項目でアウトブレイク発生数との有意差は認められなかった。

参考文献
一木重夫. 新型コロナ・不織布マスクと布マスクの網目の大きさ. https://ameblo.jp/coralline/entry-12587403992.html (2020/6/3アクセス)
ウィキベディア. 不織布. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E7%B9%94%E5%B8%83 (2020/6/3アクセス)
くればぁ. ポリエステルメッシュ数、目開き. https://www.nippon-clever.co.jp/item/%e6%a8%b9%e8%84%82%e3%83%a1%e3%83%83%e3%82%b7%e3%83%a5/%e5%8c%bb%e7%99%82%e7%94%a8%e3%83%a1%e3%83%83%e3%82%b7%e3%83%a5/%e3%83%9d%e3%83%aa%e3%82%a8%e3%82%b9%e3%83%86%e3%83%ab%e3%83%a1%e3%83%83%e3%82%b7%e3%83%a5%e6%95%b0100%ef%bd%9e5-1-%e7%9b%ae%e9%96%8b%e3%81%8d200%ce%bc%ef%bd%9e4000%ce%bc (2020/6/3アクセス)
草塩拓郎 「マスクの着用 引き続き」『日本経済新聞』、2020年5月29日、朝刊、p.29
齋藤紀先 「飛沫感染、マスクの予防効果は?」『朝日新聞デジタル』、2017年1月21日、https://www.asahi.com/articles/ASK1N65LBK1NUBQU00J.html
吉田製薬株式会社(2018)「日常的なマスク着用による感染予防効果について」『Y's Letter』Vol4 No.8
Hualing Zhang, Dan Li, Ling Xie, Yimin Xiao. (2015). Documentary Research of Human Respiratory Droplet Charcteristics. Procedia Engineering, 121, 1365-1374.  

更新日:2020年8月23日