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造影影CT検査の前の絶食について

 CTなどの造影検査の前に朝食を食べないように病院から言われるのが一般的である。理由は腹部の検査では食後だと胆のうが胆汁を出して収縮するため、十分な評価ができないことである。胸部や頭部の造影検査でも絶食にするのは、気分不良から嘔吐した時、食物が胃にあると気管に入り、誤嚥の恐れがあること、造影剤ショックを起こした時、胃内に食物があると気管内挿管が難しいことがある。水分は制限する必要はないのだが、禁止にする病院もある。これは水分は可と言うと、飲み物はいいと理解され、牛乳を飲んだりするからである。牛乳は脂肪が入っているから、胆のうが収縮することになり、検査の精度が落ちる。こういうことを避けるために、検査の日は絶飮絶食にしてしまうのである。しかしこの絶食、絶飮に問題を指摘する人も少なくない。

 武蔵野赤十字病院の嘉和知靖之医師は次のように指摘する。
 造影CTをすべて禁食で行うのは誤りである。消化系、特に胆嚢や胆道系をみる場合には、食事で胆嚢が収縮するので禁食が必要である。消化系以外のCTでは禁食は避ける
 禁食による有害反応
 (1) 午後の造影CT検査で朝、昼禁食が続くと空腹で気分が不快となり、造影剤を点滴した時に嘔吐することがある。当初は造影剤そのものの有害反応で嘔吐すると考えられ、胃内容を減らす目的で禁食が医療機関に広まったが逆である。
 (2) 高齢者では腎機能が低下しているため、夏季の長時間の禁食、禁飲水により腎機能が一時的にさらに低下することがある。その状態で造影剤を点滴すると腎障害を惹起しやすい。
 (これだけは知っておきたい医療禁忌  三宅祥三 長田 薫 嘉和知靖之 (武蔵野赤十字病院)  羊土社)

 絶食をするとかえって嘔吐しやすいことと脱水になる恐れがあることを根拠に、消化系以外の造影CTは食事制限なしに行うとしている。武蔵野赤十字病院はこういう方針である。 他の医療機関の対応をみると、大勢は造影CTの前は食事を1回抜くというものである。

 「造影CTの撮影にあたっては、検査直前の食事を一回抜いていただきます。例えば、 午前中の検査であれば、朝食だけを抜いて病院へいらしてください。検査の3〜4時間前に食事を取る方が、造影剤の副作用を起こしにくいという報告もありま すが、定説にはなっていません。今のところ、日本医学放射線学会では一回分の絶食を推奨しています。」
武田病院グループ
 武田病院グループのこの方法が一番一般的な方法であろう。ただしここでも、検査の3〜4時間前に食事を取る方が、造影剤の副作用を起こしにくいという報告があることを指摘している。

 絶食にせずに軽いものを許可する施設もある。
  「造影剤の注射をする場合がありますので検査前4時間は食事を軽めにしてください。満腹状態ですと、副作用により嘔吐した場合、大量の食物が肺に入り危険です。」
埼玉医科大学総合医療センター

 少数派であるが、通常の食事を許可する病院もある。
 「造影剤を使う場合ですが、食事を抜くと、かえって気持ちが悪くなることがあるという研究もあり、重粒子医科学センター病院では、膵臓の疾患の方のみ、食事を抜いていただています。」
重粒子医科学センター病院

 海外ではどうしているだろうか。
 Take light meal: One slice of bread + gem, coffee/tea on the day of the examination.
 CT examination for abdomen: Patients should be fasting 4 hours before the examination.
 「腹部以外の造影CT検査の時は軽い食事(パン1枚とジャム、コーヒー、紅茶)  腹部CTの時は4時間の絶食」
University Malaya Medical Center(マレーシア大学医学センター)

 Do not eat or drink 4 hours prior to your exam, with the exception of plain water or clear liquids
 「検査前4時間は絶食、ただし水や透明な飲み物は許可」
Cedars-Sinal

 Other than a very light breakfast of juice and plain toast, do not consume any meal for four hours prior to your scheduled time.
 「検査前4時間はジュースとプレーントーストの軽い朝食以外の食事は禁止」
American Health Imaging, Inc (アメリカ健康画像Inc)

 CT Head With Contrast: No solid food or drink four hours before your appointment time. 
 CT Neck or Chest : No solid food or drink four hours before your appointment time.
 CT Abdomen or Pelvis: No solid food or drink four hours prior to your appointment time.
 「頭部造影検査、頚部、胸部、腹部の造影と単純検査: 予約時間前4時間の絶飮絶食」
CareView Radiology Center(ケアビュー放射線センター)

 海外を見ると検査前4時間絶食というような指示が一般的で日本のように1回絶食という指示は少ない。この4時間というのはかなり妥当な数字である。4時間経てばほぼ胃の内容物がなくなる。さらに4時間の絶食というのは通常の食間の時間である。10時からの検査であれば、早めに朝食をとり、6時までに食べ終われば4時間あくことになる。午後1時からの検査であれば、朝食は通常通り摂取し、昼食を少し遅らせればよいのである。患者の負担が少なく、嘔吐などの副作用が起こったときも胃の内容物がほぼないからトラブルが少ない。通常の食間の時間だから、空腹のために気分不良となりかえって嘔吐しやすくなることも少なくなる。私は、造影CTは検査前4時間は絶食というのが一番妥当と思う。

2006年5月26日作成
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