足のクールビズを

 クールビズは日本でつくられた造語であり、涼しいのcoolとビジネスのbizを組み合わせたものである。ネクタイをはずしたり、半袖シャツを着いたりすると涼しく感じる。それで冷房の設定温度を下げることができ、省エネにつながる。夏は軽装にして環境にやさしい社会にしましょうというのがクールビズである。
 冷房というのは、室内の熱を屋外に出すものだから、室内で熱が少なくなった分だけ室外の熱は増えている。冷房で室内の温度を下げれば、当然屋外の温度は上がる。近年夏が暑いのは、温暖化だけでなく、冷房の普及も一因だろう。
 環境省の提示する服装の可否によると、クールビズは、ノーネクタイ可、ノージャケット可、半袖シャツ可、Tシャツ不可、スニーカー可、サンダル不可となっている。スーパークールビズは、ノーネクタイ可、ノージャケット可、半袖シャツ可、Tシャツは節度ある着用に限り可、スニーカー可、サンダルは節度ある着用に限り可となっている。私が奇妙に思うのは、くつ下の言及がまったくないことである。人間の足は、本来、手や顔と同じく寒さに強い。真冬でもくつ下なしで過ごすことができる。暑い夏にくつ下は不要である。くつ下への言及がないのは、くつ下をはかずに靴をはくと、靴ずれすることがあるためだろうか。あるいは人前で素足を見せるのは無作法と思っているのだろうか。
 スニーカーやサンダルはクールビズの項目に入っているが、ぞうり、雪駄、下駄は項目に入っていない。背広を着るなら、靴をはくのが当然と思っているのだろうか。背広にぞうり、雪駄、下駄ではあまりに不釣り合いと言うことだろうか。
 ぞうり、雪駄、下駄は日本の気候に適した履物として、日本人の知恵が生み出したものである。日本の気候に合った優れた履物である。背広にぞうり、雪駄、下駄でもよいではないか。もともと日本人はいろんなものを組み合わせて利用することが多い。洋食を食べる時でもごはんを食べたりするし、家に仏壇があるのに、結婚式の時だけキリスト教になったりする。背広にぞうり、雪駄、下駄という組み合わせは、日本人らしく、いいではないか。健康面から言うなら、むしろ背広にぞうり、雪駄、下駄でなければならない。
 夏にはくつ下をはかない、夏にはぞうり、雪駄、下駄をはく、これをクールビズとして行うことを提唱したい。これは単に省エネだけでなく、健康面からも大事なことである。

参考文献
今倉 章(2019) 『靴が人を不健康にする』株式会社希望