キレットの左右に切れ落ちた痩せ尾根上の縦走路を、
登り降りを繰り返して行く中に、何時の間にかガスが
湧いてきて、南岳の登りのかかる頃には、10m 先の
人影もかすんでしまうほどになった。
南岳の登りも、何ヶ所かの梯子や鎖場を攀じ登って行
く難所だが、やがて広い稜線上のなだらかな縦走路と
なる。(今は南岳に山小屋があるが当時は無かった。)

そこから先は、晴れていれば雲上のプロムナードといえ
るような道を、すっかり濃くなったガスで眺望ゼロの中を、
中岳、大喰岳と越して行き、小雨の降り出した夕刻、
槍ヶ岳山荘に到着した。

左 ; ガスで上部がかすんでいる南岳 鎖場の登り。


第 4 日; ’58/7/20
朝起きたらドシャ降り、風も強く、表銀座の縦走をあきらめ、
槍沢を降った。雨の中を殆ど休憩も取らず、昼前に上高地
に着いた時にはヤッケを透して全身ずぶぬれ。
「行きはよいよい、帰りはこわい」 の山旅でした。