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5.農業技術について

以上で今回の技術関係のお話しは終わりです。最後に、農業に関する技術に農家や農業関係者がどのように対応したら良いかについての私の考えをお話しいたします。

技術は単純ではありません。何かをしようとする場合、常に、どのような場合でも一つの方法しかないというようなことはほとんどありません。いくつかの選択肢がある場合がほとんどです。例えば野草地に牧草を導入するに際してもいろいろな方法があります。例えば播種するのか、栄養繁殖を行うのか、また播種するにしても耕起してから播種するのか、あるいは除草剤で雑草などを枯らしてから播種するのか等々。

実際に何かをしようとすれば、いくつかの選択肢の中からそれを選ぶことが必要になります。その場合どの技術を使うかは、前提条件(例えば面積、現在生えている雑草などの状況、どの種類の牧草が必要なのか、労力、経費、経営方針等)を考慮しなければなりません。

全ての技術には長所と短所があります。技術を用いる前提条件と、それぞれの技術の特徴、長所、問題点を総合的に考えあわせ、どの技術を利用するかを決めることが重要です。

そのためにも農家の皆さんは農業技術に関する知識を多く持つことと、それをもとに技術レベルを向上させることが重要です。

農業技術に関する専門家(農家を指導する方者や研究者に皆さん)は知識を豊富にすることはもちろん重要ですが、それに加えてそれらの技術に関しては科学の知識をベースに考えなければなりません。農業技術を考えるに際しては常に「それは科学的な見方からすれば妥当なことなのか、問題はないか」を考え、問題があれば改善するようにしなければなりません。農家の皆さんの中でもより高い技術や知識を得ようと思えば、同じように科学の知識も必要になってきます。

私がお話しした内容の中には、皆さんが「既に知っている」こともあるかもしれません。しかし中国には「知っているけれども行わないのは勇気がないからだ」という意味のことわざ(proverbio)があります。このことわざで「知っている」とは何を行うべきかを知っていることを意味します。良いことで、かつ実行可能なことはできるだけ実行していただきたいと思います。

日本の農家では(ここでは酪農家を例にあげますが)例えばサイレージ用のトウモロコシを栽培する場合、畑の一部分にいろいろな品種を少しずつ栽培して、品種の特性を観察し、次の年にどの品種を栽培するかを決める時の参考にするということが一般的に行われています。

農業技術の中には「試みに少しだけやってみる」ことが可能なものも少なくありません。特に飼料生産、草地管理の分野ではこのようなことはかなりたくさんあると思います。農家の皆さんには、参考になりそうな技術は積極的に試み、その中で「本格的に実施してもよさそうだ」と見極めがついたものを、もっと大規模に行うというようなことを行ってもらいたいと思っています。

そのように農家の皆さんが持っている農業技術を更に向上させることは、経営をもっと良くしていく大きな原動力になると思っています。


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