ishoken gallery  若杉聖子展 作家紹介


美濃焼には、志野や織部に代表される桃山陶と共に、生活に密着した陶磁器の大量生産の歴史がある。その 製造技術のひとつに鋳込成形がある。多治見市滝呂地区でも輸出陶磁器のために利用されてきた歴史があり、 美濃焼の大量生産においてはあたり前の技術である。個人作家はえてして量産技術を敬遠しがちであるが、 若杉聖子さんは、このマスプロダクションの製造技術を個人作家の制作技法として注目し、自己表現をも視野 に入れながら、生活の道具を作り、現代に新たな形で光をあてた。やきものの長い歴史のなかで、特に美濃 で発展した陶磁器の大量生産の技法や技術と結びつき、そこを制作の原点として作る彼女は、産業陶磁器を 背景に陶磁器デザインを主にする意匠研究所の未来を切拓く一人である。ぜひ後輩諸君に、時代を見据えて 制作する姿勢を見せてもらいたいと願っています。                            



多治見市陶磁器意匠研究所 所長 中島晴美