岐阜新聞 朝刊 2016年12月31日

素描
「風に聞いてくれH」


 陶磁器の魅力は、粘土の可塑性と焼成による形態の変化が人間の魂に訴えかけるところにある。どこか有機的なにおいが残る理由もそこにある。その魅力を生活の道具の中に、また表現の陶芸作品の中に見出しても同じだ。近年、そんな陶磁器の魅力が日本文化と交感し、海外から陶磁器造形作品の引き合いが増えてきた。

 人口10万の多治見市はそんな陶磁器の町である。明治の初めからパリ万博に出品するなど、陶磁器を通して世界と繋がってきた歴史がある。現在も国際陶磁器展を開催し、製品や作品とともに陶磁器文化を世界に発信し続けている。そんな多治見市で陶磁器意匠研究所(意匠研)は60年に渡り人材育成業務を続けて来た。美濃焼産地全体を見渡せば、500人を超える意匠研の卒業生が陶磁器の技術者として、デザイナーとして、作家として経営者としてこの地で活躍している。そして、多治見市内を見てもファエンツァ国際陶磁器展や国際陶磁器展美濃のグランプリ作家が3人も生まれた。今、意匠研は海外からも研究生を受け入れ、世界の陶磁器の情報を集め発信を試みるつもりだ。
 
 経済、文化は東京に一極集中しているが、陶磁器の情報文化は多治見に一極集中している。疑問に思うなら風に聞いてくれ。「陶磁器文化の風は意匠研に吹いている、そして明日も明後日も吹き続けるだろう」と答えるに違いない。意匠研のCMで最終回とします。

 ♪How many roads must a man walk down Before you call him a man?