岐阜新聞 朝刊 2016年11月5日

素描
「風に聞いてくれA」


 先日の会議でのことである。懸案事項が解決してほっとした後、「議題3 その他」の話が進まない。原因はどうも私にあるらしい。そう言えば先週、資料をもらったような気がする。メールでも確認があった。

 「どうせ私の話なんて聞いてない」「いっつもそうよ」「いつでもそうよ」と、また気まずい勝ち目のない戦いが始まる。「おばあちゃんの部屋のひび割れたガラス直してね」。どうも、「来週、ガラス屋さんに行く」と返事したらしい。したような気がする。したかなぁ。してそうだなぁ。やっぱりしたんだろうなぁ。

 広島カープの黒田投手と日本ハムの大谷投手の対決は? 真田幸村と茶々様は? そんなことよりなにより、ボブ・ディランは授賞式に出て来るのか、来ないのか? そんな私の最大の関心ごとを映すTVのどこかの場面で「うん」と確かに言った。

 「こんなことない?」と、つい会議で家庭のことを持ち出した。 「ありますよぉ。ありますよぉ」と助け舟が出る。 「毎日そんなんばっかです。そんなばっか!」と、別の職員も参加してついに〈収め方〉の話にまで発展してしまった。「静かに嵐が過ぎ去るのをひたすら待ちます」ときっぱり言い切る者やらなんやらかんやら議論白熱の後、「ぼくはすぐに謝ります」「ごめんなさいとすぐに謝ります」と、やっと正しい意見が出た。

 そんな、こんなで今日の会議の「議題3 その他」は「謝ります」を採用して何とか乗り切ったのでした。 

 ♪Before you call him a man?