CRT & レココレ
Presents:

Vol. 21
「Rock Show 2001!〜ポール・マッカートニー&ウィングス・ナイト」

1月のジョージ・ハリスン・ナイト、5月のジョン・レノン“ロックンロール”ナイトの大好評に気をよくしながら、勢いよくお届けするビートルズ企画第3弾。最新リマスター・ベストCD『ウィングスパン』がリリースされたばかりのポール・マッカートニーの70年代にスポットを当てるトーク&レコード・コンサートです。ゲストはこの人を置いてビートルズは語れない和久井光司大魔王、そして期待のポップ・バンド、セロファンの西池崇、ほか。美しく切ないポップ・マインドと、ワイルドでハードなロックンロール感覚を共存させる驚異のアーティスト、ポールの才能が溢れるウィングス時代を熱く語ろう! 熱いシャウトに燃えよう! 豊かなメロディに涙しよう!
2001年6月23日(土) at 東京・新宿LOFTプラスワン
OPEN 18:30 START 19:30
ゲスト: 和久井光司(ミュージシャン)、西池崇(from セロファン)ほか
出演: 寺田正典(レコード・コレクターズ編集長)、萩原健太(音楽評論家)
料金: 1500円(ワンドリンク付き)当日券のみ
問い合わせ: LOFTプラスワン 03(3205)6864
Daddy & The Surfbeats
萩原健太がメンバーの一員であるサーフ・インスト・バンド、ダディ&ザ・サーフビーツの最新ライヴ情報です。

6月10日(日)
銀座タクト
15:00-
with ブルーホライズン/ロイヤル・フィンガーズ/ラットホリック/徳武弘文
6月20日(水)
高田馬場フィドラー
21:00-Midnight
(No Charge)
7月7日(土)
水道橋・東京倶楽部
19:30-
with 東京バニーズ

Rock Of
Ages

The Band
(Capitol)
2001.5.25

 ずいぶん前のことになるけれど。ビーチ・ボーイズが来日して武道館でライヴやったときだから、いつだ? 1991年か? 10年前だな。あのときは当然ブライアン・ウィルソンは参加していなくて。なもんだから、普段ビーチ・ボーイズなんか聞いたことねーだろおめー、みたいな某女性音楽評論家さんが某所で「ブライアンが来ないんじゃなぁ…」とか、知ったふうなことヌカシくさってさ。

 あれはアタマ来たなぁ。ちょうど、少しずつ『ペット・サウンズ』を筆頭とする一連のプログレッシヴなビーチ・ボーイズ・サウンドへの評価が高まりつつあったころだったから、その評論家さんもどっかでブライアンはすごいってことを聞きかじったんだろうけど。『ペット・サウンズ』にせよ『スマイル』にせよ、それらの背景にはマイク・ラヴを中心とした(当時)現役ライヴ・バンドとしてのビーチ・ボーイズが精力的に全米をツアーしながらふりまき続けている永遠のティーンエイジ・ドリームの世界が雄大に広がっているわけで。この部分を抜きにブライアンの偉大さを云々することなどできやしない。そして、正当な権利とともにその“夢”を懐メロ寸前のところで歌い継ぐ現在進行形のビーチ・ボーイズを非難することもぼくは許さないぞ、と。まあ、そう憤ったのだけれど。

 それと同じような気分になったのが、ザ・バンドの来日公演だった。1983年だっけ? もうロビー・ロバートソンは抜けてしまっていて。レヴォン・ヘルム、リチャード・マニュエル、リック・ダンコ、ガース・ハドソンというオリジナル・メンバーにケイト・ブラザーズらを加えた編成でのライヴだったのだけれど。このときも「ロビー・ロバートソンがいないんじゃなぁ…」という、知ったふうな非難を口にする連中は多かった。で、まあ、ぼくもその気持ち、わからないわけじゃないのだけれど。

 でも、ぼくはあのときの来日公演、けっこう楽しめたのだ。本気で。ヘルム、マニュエル、ダンコの三人三様、ディープな歌声があれば、もうそれだけでステージ上には間違いなくザ・バンドの音楽があったから。十分に心が震えた。

 なんか、こう、日本では…というか、音楽ジャーナリズムみたいなところでは、“頭脳”というか“理念”というか、そういう部分ばっかりが評価されがちで。これは、CRT&レココレのイベントでザ・バンドを取り上げたときにも話したことだけれど。ビーチ・ボーイズにおけるブライアン・ウィルソンとか、ザ・バンドにおけるロビー・ロバートソンとか、そういったグループのコンセプトを司る存在だけをありがたがる傾向が強すぎる気がする。

 確かに大事な存在なんだけどね。そういう“頭脳”がなければ新曲もできないし。けど、“頭脳”だけじゃ、これがまたどうにもならないというか。ザ・バンド脱退後のロビー・ロバートソンのアルバムとか聞いていても、結局、そこにあるのはコンセプトばかりで。そのコンセプトを体現する適切な“肉体”というか、“歌声”というか、そういうものを、どのアルバムでも見つけられずにいるような感触がある。だから、方向性とか目標とかはわかるものの、こっちの下半身をどすんと直撃するような何かは感じられない。ザ・バンドの来日公演にはそれがあったのに。(ブライアン・ウィルソンのほうはまだ、自分がなんとか歌えるぶん、そこそこうまいことやっているように見えるけれど、やはり彼の曲にとってなくてはならないコーラス・アンサンブルの中にマイク・ラヴ独特のベース・ヴォーカルとか脳天気なリード・ヴォーカルとか、カールの絶妙のフェイクとか、アルの堅実な内声ハモとかがないことが決定的に痛い。)

 当たり前の話だけれど、やっぱり“頭脳”と“肉体”、両方がいいバランスで共存していないとグループってのは有効に機能しないのだ。で、不幸なことに“頭脳”と“肉体”とに分かれちゃった場合は、むしろ“肉体”だけのほうが迷いなき力を発揮してくれる局面も多いんじゃないか、と。まあ、異論が多々あることを覚悟のうえで、ぼくはそう思ったりするわけだ。だって、レコード会社の重役になってばりばりエグゼな生活しているロバートソンと、他の仕事なんかできるわけもなくバンド活動を続けて、左右違う靴下はいたりして、中にはそのまま死んじゃった人までいるヘルム/ダンコ/マニュエル/ハドソン組と。どっちがロックな生き方だろうか。

 まあ、いいや。この辺はむずかしいテーマだから。ただ、ザ・バンドってのは、ロバートソンが在籍していたころから、そういう悩みを抱え込んでいたグループだった気がする。ぼくが大好きな1969年のセカンド・アルバム『ザ・バンド』や、その前年にリリースされたデビュー作『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』が素晴らしいのは、ジェームス・バートンをはじめとする南部系チキン・ピッキング・ギタリストの伝統を“数学的”に継承したロビー・ロバートソンのギターがあって、カントリー的な粘り腰の泥臭さと、ブルーグラス的な白さと、R&B的な黒っぽさとが軋みをあげて混ざり合うリック・ダンコとリチャード・マニュエルの歌声があって、常にゴスペル色をたたえながらも、どこかで必ずこらえきれなくなりアバンギャルドに炸裂するガース・ハドソンのオルガン・プレイがあって、それらカナダ出身の仲間たちをバックから的確にサポートする生粋の南部人レヴォン・ヘルムのタイトなドラミングと屈指のスワンプ・フィーリングをたたえた渋いヴォーカルがあって…。その均衡が実にうまくとれていたからだろう。

 ところが、その後、なぜだかはわからないけれど、70年の『ステージ・フライト』、71年の『カフーツ』とアルバムを重ねるごとにロビー・ロバートソンの独裁色が強まり、徐々にザ・バンドの活動は精彩を失っていく。ロバートソンが悪かったわけじゃないとは思う。他のメンバーとの間での、なんというか、熱の発し方、あるいは“上をめざす”感じにすれ違いが生じたというか。そんなことになるのだろうけれど。この時点でザ・バンドはすでに“アタマ”と“カラダ”が分裂し始めていたような気がする。

 それに対するテコ入れが72年の『ロック・オヴ・エイジズ』。71年の大晦日にレコーディングされたライヴ・アルバムだ。まさに水を得た魚。レヴォンもロビーも、他のすべてのメンバーも久々に溌剌と歌い、プレイしている。アラン・トゥーサンの画期的なアレンジによるホーン・セクションも大胆に導入されていた。新曲はほとんどなかったけれども、OK。ここで再演された過去のレパートリーは、どれもオリジナルを超えるタイトでソリッドな仕上がりを見せていた。ホークス時代以来、彼らが最も多くの時を過ごしてきたライヴという“場”をあえて設定し、さらにアラン・トゥーサンという新しい血を導入することによって、ザ・バンドは新たなスリルを自分たちの音楽に付け加えることに成功していた。

Moondog Matinee
Moondog
Matinee
 さらにもう1枚。73年の『ムーンドッグ・マチネー』だ。収録曲すべてを、かつてザ・バンドのメンバーたちが愛聴していた50年代ロックンロール/R&Bのカヴァーで固めたアルバム。これは自らのルーツに立ち返ったというよりも、むしろアメリカそのものの象徴とも言えるグレート・ロックンロール・スタンダードをカヴァーすることによって、結局はカナダ人であることを振り切ることができないザ・バンドの“理念”を腕ずくで“肉体”化しようとした試みだったんじゃないかと思う。もちろん、その試みは大成功だった。特にリチャード・マニュエルによる「ザ・グレート・プリテンダー」とリック・ダンコによる「ア・チェインジ・イズ・ゴナ・カム」。この2曲はロックンロール・ヒストリーにおける屈指のブルー・アイド・ソウルの名演だろう。

Northern Lights, Southern Cross
Northern Lights,
Southern Cross
 と、そんなザ・バンドの悩める時代のオリジナル・アルバム群がリマスター再発された。『ロック・オヴ・エイジズ』『ムーンドッグ・マチネー』『南十字星』『アイランド』の4組。去年出た前半4枚に続く24ビット・デジタル・リマスター・シリーズ。前回はちらっと音質のことについて書いただけだったけれど(2000年9月の“ホワッツ・ニュー”を参照ください)、今回はピックしておきましょう。今回もボーナス・トラックがすごくて。特に『ロック・オヴ・エイジズ』。オリジナルの2枚組分をディスク1に詰め込み、ディスク2は全曲ボーナスという太っ腹。未発表だったボブ・ディランとの共演ライヴ4曲と、ライヴ収録されたものの選曲から漏れた6曲。『ムーンドッグ…』には、やはり最終的には選から漏れたカヴァー録音5曲プラス「エンドレス・ハイウェイ」のスタジオ録音入り。『南十字星』は「トワイライト」と「今宵はクリスマス」の別ヴァージョン。『アイランド』にはシングルで出たのちベスト盤にのみ収録されていた「トワイライト」と、「我が心のジョージア」の別ヴァージョン。

Island
Island
 やはりこれ1枚となったら、ザ・バンドの肉体を再び見事躍動させてみせた『ロック・オヴ・エイジズ』だなぁと思って、ジャケ写はこれにしましたが、『ムーンドッグ・マチネー』も絶対にお見逃しなく。

 そうだ。ザ・バンドといえば。ライノが『コンプリート・ラスト・ワルツ』ってのを企画しているらしいっす。これはコーフンものでしょう。俺の持ってる同趣向のブートがいらなくなる日がついに来そうだ(笑)。



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