いつの頃からか500円玉貯金を始めました。お釣りが出ると小銭入れから出して貯金箱へ。
お財布は直ぐに空になりますが、貯金箱は意外と早くにいっぱいになります。
ただ、貯金箱が小さいので満杯になったとしても、機械式時計や靴のビスポークなんかは無理。
そんな折、とある百貨店でトリッカーズのパターンオーダー会が行われているのを知ります。
前々から気にしていた靴でもあり、また、金額の方も市販されているトリッカーズのラインナップと変わらないとのこと。
本当はもう少し貯めてから時計を買うつもりだったのですが、タイミングが良かったので、優先順位を繰り上げて、オーダーすることにしました。
案内によると、靴のスタイル、サイズ、革の種類(素材と色)、切り返し部分の革の組み合わせ(パターン)、そしてソールの種類を選択できるとのことです。
- スタイル
Men'sはカントリー・ブーツなどを含むカントリー・コレクションから6種類、ドレスシューズの1829コレクションから9種類を、Lady'sはカントリー・コレクションのみで2種類から選べるとの事でしたが、実際に展示されているサンプルはもう少し種類があったような気がします。
- サイズ
Men'sが5.5〜9.5(24〜28cm)、Lady'sが3.0〜6.5(22.5〜25.5cm)ということです。
ただ、案内にあるLady'sサイズ、3.0〜6.5は、私のホームページ掲載のサイズ換算値と合っていないので、実際には21.5〜25cmまでのサイズがあるのか、22.5〜25.5cmまでのサイズがあるのかはわかりません。
参考のため右に簡易サイズ比較表をまとめてみました。
(厳密なサイズは、ホームページの「靴」の「サイズ(足長)比較表」で確認できます。)
また、案内にはワイズの記載がなく、店員さんに確認すると(私が選んだ靴については)「E」ワイズのみとのことでした。
(オーダー票にはウィズ(Fitting) 5との記載があります。)イギリスのサイズ
日本サイズの目安 (cm) 3 21.5 3 1/2 22 4 22.5 4 1/2 23 5 23.5 5 1/2 24 6 24.5 6 1/2 25 7 25.5 7 1/2 26 8 26.5 8 1/2 27 9 27.5 9 1/2 28
- 革の種類
革見本約60〜70種類の中から色と素材を選択できます。色はなめし方や仕上げ方により、かなりの種類があり、また、素材もスムース・レザー、スエード、ヌバック、スコッチグレイン、珍しいところではパテント(エナメル)などもありました。
- パターン
切り返しのある靴では、革の種類をその部位毎に変えることができます。但し、指定できる箇所は靴のスタイルで決まっており、また、コンビネーションで選択できる革は2種類までとのことです。
- ソール
ソールは4種類、計5タイプ(レザー・ソールが2種類)の中から選ぶ事ができます。
レザー・ソール(Leather)
何の仕上げもしていないナチュラルとコバに色塗りを施した2つのタイプから選択できます。
ナチュラルは積み重ねられた革の感じを確認できるので、中々良さそう。
コバ仕上を施したタイプは一般的なドレスシューズに良くみられるものと同じです。ダイナイト・ソール(Dainite)
最近はドレスシューズにも良く見られます。
レザーに比べ長持ちし、雨の時にも安心というメリットがあります。コマンド・ソール(Command)
見た通りハードなイメージなので、どちらかと言えば、ブーツに向いていると思います。
ドレスシューズに合わせるとカジュアルな感じになるので、あえて合わせて見るのも良いかも。クレープ・ソール(Crepe)
履き心地は良さそうですが、どんなファッションに合わせるかが難しそうです。
トリッカーズと言って真っ先の思いつくのがカントリー・コレクションの 「MALTON」 (型番:M2508)。
ウィングチップの7アイレット・ブーツで通称「カントリー・ブーツ」と呼ばれています。
特徴はアッパーに施されたブローギングとレザーのダブルソール(グッドイヤーウェルト製法)。
色のラインナップはバーニッシュ・ブラック(光沢のあるブラック)と写真のアンティーク・マロンがあり、こちらの色はカントリー・コレクションの定番。
某眼鏡ショップの店員さん(女の子)が、●濃紺のデニムに●マロンを合わせており、とってもキュートでした。
これに影響を受けたわけでは無いのですが、前々から気になっていたのもマロンのカントリー・ブーツなのでした。
もちろん定番も捨てがたかったのですが、せっかくのパターンオーダーの機会。
そこでカントリー・ブーツをベースに2つのオーダーパターンを考えました。
写真の財布は、Whitehouse Cox社製。ハバナと呼ばれる●ダークブラウンのブライドルレザーと●タンのロンドンカーフ(型押しレザー)のコンビネーションで、1つ目のパターンは、この財布とお揃いにすること。
そして2つ目のパターンは、とある雑誌に載っていた個人所有の靴。●バーガンディのコンビネーション(多分)で靴はフローシャイム製。
実際にはビジネスでも履けるようにしたかったので、カジュアルな1つ目よりは2つ目が有力。
とりあえず、この雑誌とホワイトハウス・コックスのお財布を持ってオーダー会に望むのでした。
1st man
百貨店に到着して、最初に接客してくれたのが、スーツに黒のモンキー・ブーツ(もちろん、トリッカーズ)をうまく合わせた、とっても感じの良い店員さん。
一通りパターンオーダーについての説明を聞いた後、カントリー・ブーツでオーダーしたい旨を告げ、フィッティング開始。普段私が履くサイズを出してもらい、一度これを試着してみました。
が、明らかに大きい...。店員さんによると「トリッカーズは他の靴に比べ若干大きめ。」とのこと。
1つ下のサイズを出してもらい履いてみると今度は「プッシュー!」という空気が漏れる音。
この音ってジャストサイズの基準のようなもの、その後何回か履き替えてみましたが、最終的にこのサイズに決定。
後々よく考えるとイギリスのサイズ表記は私が馴染んでいるアメリカのそれとは異なり、アメリカのサイズから「1/2」引いたもの。したがって、ハーフサイズ下が私のジャストサイズということで、納得。
続いて、革見本を渡され素材選び。
しばらく、パラパラ見ていたのですが、数が多いので、全くイメージがわきませんでした。
英語のボキャブラリも乏しかったので色名称にあるBURNISHEDの意味がわからず相談すると、この店員さんもこの辺の知識は多くないようで、別の店員さんを呼んで来るとのこと。
待つことしばし。2人目の店員さんが登場したのでした。
2nd man
2人目は一見セレクト・ショップのスタッフのような若くてお洒落な店員さん。
この方もとっても感じが良く、また、靴のオーダーに関する知識も豊富そう。
一通り革の色について教えてもらった後、詳しそうなので、雑誌を見せて相談することにしました。
(2つのオーダーパターンを考えてはいたのですが、イメージを伝えるのが難しそうなので、有力候補である雑誌の靴をベースに話を詰めることにしました。)
「カントリー・ブーツでこんなコンビネーションを考えている。」と雑誌を見せると、その店員さんも同じような色でのオーダー経験あり。
それによると、近い色のコンビネーションでは靴に仕上がった段階で色味が近くなりすぎ、単色に見えてしまうため、あまりお薦めはできないとのこと。
また、前回のオーダー会でも同じようなパターンで注文したお客さんがおり、色味が近いことにクレーム、結局百貨店持ちでもう一足作り直したとか。
しかも、そのお客さん、今回も来て散々文句を言って帰ったとのことで、なるべくなら同じようなトラブルは避けたい模様。
(最終的に自分でGOサインを出しておきながら、お店のせいにするのはどうかと思いますが...。)
しばらく悩んでいると、「一方を色味の違う●ブラウンにするか、このコンビで一方をグレイン・レザーにしてみては?」との提案。
元々の写真もベロの部分はグレイン・レザーっぽかったので、「それもありかな。」と思い始めたその頃、最初に声をかけてくれた店員さんはというと、また別の店員さんに声をかけ、私の雑誌を手に何やら話をしているのでした...。
3rd man
マロンのプレーン・トゥを履いた3人目の店員さんは、2人目よりも更に若い、青年といった感じ。
でも見かけによらず(失礼)、英語は堪能。実演のために来日しているトリッカーズの職人さんの通訳として参加しているようでした。
(後でよくよく話を聞くと、靴好きがこうじて英国に住んでいたこともあり、トリッカーズやホワイトハウス・コックスの工場にも行った事があるとのことでした。)
そして、この通訳さん、さらに別の人物に話しかけているのでした...。
4th man
ロイ・マルティニアク(Roy Martyniak)氏はセールス・マネージャーの職にあってトリッカーズのNo.2。
そう、最初の店員さんは、通訳さんを通して、マルティニアク氏に相談してくれていたのでした。
雑誌を手に、氏が近づいて来て、話し始めたのですが...、どうも、リクエストが通じていない模様。
『カントリー・ブーツでこんなコンビネーションを考えている。』のカントリー・ブーツの部分が伝わっていなかったらしく、これについて説明した後で改めて話し再開。
で、みんなで雑誌を見ながら、「写真の靴の素材はコードバンでは?」とか、「この靴、元はコンビではなく、仕上げでこの色合いが出たのでは?」などと言った話が飛び交う中、最終的にマルティニアク氏が決めてくれたのが、
●バーガンディ・アニリンカーフと●バーガンディ・バーニッシュ
のコンビネーションなのでした。
ただ、近い色のコンビネーションでは、出来上がりが単色に見えてしまうという話もあったので、他のアイデアはないか尋ねると、「スムース・レザーのコンビネーションであれば明らかに違う色にする手もある、また全く同じ色で一方の素材をグレイン・レザーに変えるのも手である。」との事。
でも、お薦めしてくれたコンビネーションでも、仕上げを変える事でコントラストをハッキリさせることができるとのことで、結局最初にお薦めしてもらったコンビネーションに決めたのでした。
で、革の組み合わせはというと、写真の靴をイメージし、ベロにつながる部分だけを別の色にすることで決まり。(オーダー票の2の部分。)
試着したスタンダードなモデルの履き心地が良かったので、ソールはレザーにしました。
最後、コバには仕上げをするか否か...。マルティニアク氏によると、どちらでも問題ないとのことでしたので、これも写真の靴をイメージして、仕上げを施してもらう事にしました。
マルティニアク氏がこれら全てをオーダー表に記入する中、2人目の店員さんが色についての最終確認。
心配する通り、確かに上記色の名前を見ても全く同じに見えます。
ただ、最悪単色のバーガンディに見えてしまうことより、マルティニアク氏に決めてもらったという事を優先したい旨説明して、オーダー表にサインをしました。
(実はこの時使用したボールペン、マルティニアク氏の私物。メーカーまでは確認しませんでしたが、エメラルド・グリーンの本体が印象的でした。)
革見本では、色は以下のような感じ。
色番号:102 『BURGUNDY ANILINE CALF』 色番号:162 『BURGUNDY BURNISHED』
で、下のオーダーを見るとわかりますが、バーガンディ・アニリンカーフは『DARKER FINISH』、バーガンディ・バーニッシュは『LIGHT BURNISH』と、ちゃんと仕上げまで指定してくれています。
おそらく、日本の店員さんでは、仕上げまでは指定しないと思うので、マルティニアク氏に相談できた事はラッキーでした。
また、バーガンディ・アニリンカーフは黒のシュー・ポリッシュで、バーガンディ・バーニッシュはナチュラルなもので手入れする事もお薦めしてくれました。
切り返しのメダリオンまで塗ってしまうと、境目が潰れてしまうので、あえて残して塗ってみました。
仕上がりはこんな感じでしょうか?
ただ、実際に私の手元に届くのは、半年後という事で、『夏にブーツ...』という事になりそうです。
届きました!!
完成は5月末とのことだったのですが、ことのほか早く仕上がりました。
実物は上の想像図より赤系の色味に仕上がっていますが、こちらの方が断然GOOD。
一見単色に見えて、よく見るとコンビネーションというのも狙い通り。
スムース・レザーの組み合わせは、エイジングも楽しめそうなので正解でした。
たまたま、ボルドーのシュー・クリームとバーガンディのシュー・ポリッシュがあったので、内側にボルドー、外側にバーガンディを使って手入れする事にしました。正面から見るとこんな感じ。
ズボンをはいた場合に見える部分も写真と同じぐらいなので、ビジネスに履いても、全く問題ありません。
数日前、●マロンのトリッカーズをスーツに合わせている人を見かけ、「ビジネスにはちょっとやばいかな?」と思っていたのですが、この色であれば、むしろ『いけている。』といった感じ。(手前みそ)で、ヒールはこんな感じになっています。
釘外側の縁取りは単に色を付けてあるだけなのですが、見えない所にも手間を惜しまないところは、さすがといったところ。
ソールの『MADE IN ENGLAND』の文字が泣かせます。ボックスの側面には『Mens Burgundy Aniline Calf / Burgundy Burnished Calf Brogue Boots』の文字。そう、箱もこの靴のためだけのもの。
ただ、シュー・バッグ、シュー・クリームなどの付属品が一切付いていないのには、ちょっとがっかりしました。
ベロの裏には、白地に赤い文字のTricker'sタグが付いているのですが、こちらは色落ちが激しいので靴下には要注意とのことでした。