建設補助金から固定買取制度に移行した最近の状況

建設費の3分の1を補助するという施策から高額での固定買い取り制度に移行し、風力発電を取り巻く状況がどう変わってきたか。武田恵世氏がまとめたものです。

1.諸悪の根源・建設補助金は廃止

 全国の被害と、回らない風車を続発させた元凶、風力発電建設補助金制度(新エネルギー等事業者支援対策事業、建設費の1/3を税金でまかなう制度)は、2012年5月で廃止され、「再生可能エネルギー発電設備等導入促進支援復興対策事業費補助金」に名前が代わり、補助率が1/3から1/10に変更されました。しかし、超低利融資制度、利子補給、所得税減免政策、風況調査や環境アセスメント調査への補助金などはそのままです。

2.次の元凶、固定買取制度がスタート

 そして、2012年7月1日から、固定価格買取制度が作られ、風力発電は23.1円/kw、20年と決められました。従来「風力発電は20円/kw、20年以上に決まると、年率8%の美味しいビジネスになる」(日経ビジネス 2011/6/20)などと言われていました。事業者の過大な主張を政府は丸呑みしたのです。またしても風力発電建設ブームが起きています。
 固定買取制度だと本当に効率よく発電しないと利益が出ないはずなのですが、買取価格が高いので、ロクに回らなくても利益が出るようです。20年も利益を保証するという極めて不公正な制度であるとも批判されています。また、電力会社は子会社に再エネをさせると二重に利益を得られるようです。

3.欧米では、固定買取制度も、補助金制度も縮小、廃止の方向

・アメリカ:風力発電への補助金は、白昼堂々目抜き通りで銀行強盗するくらい厚顔無恥
 アメリカは風力発電への補助金が2012/12/31に切れるはずだったのが、オバマ大統領の判断で1年だけ延長することになりました。議会では猛反対がありました。
「風力発電のコストは天然ガスの3倍だが今までは周辺整備費や送電費を除外して不正な計算をしていた。発電の不安定さを補うため火力発電所の待機が必要で、低出力で稼働し続ける費用が必要となる。今年は風力に計85億ドル(8,500億円)も余計に税金を払った。補助金や送電コストを入れるともっと増える」
 そこで、風発業界は「補助金を延長してもらって、6年で徐々に廃止する」と提案しました。
 しかし、「今後6年間さらに500億ドル(5兆円)も税金を使う?! 白昼堂々、目抜き通りで銀行強盗するくらい厚顔無恥な提案だ」(ラマール・アレクサンダー上院議員/テネシー州)と批判されています。
「10年以上かけても独り立ちできない風力発電に血税を投じることを正当化することは難しい」と言われています。(Christopher Helman:Forbes)

・ヨーロッパ諸国:再エネは多額の補助金と電気料金の値上げを必要とするので、どの国も音を上げ出した
 ドイツではこれ以上の再エネ賦課金値上げに国民の77%が反対との世論調査の結果です。オランダでも洋上風力の負担が重すぎるとされました。再エネへの補助金や固定買取価格の値下げが相次ぎ、風力発電業者の多くが経営難に陥っています。

4.商社の動き「日本を狙え!」

 このように、欧米で風力発電機が売れなくなり、だぶついているので、まだ売れる日本や中国に転売しようと商社が動いているという情報です。

5.再エネバブルから崩壊へ進むのか?

 日本は約5年遅れで、欧米の教訓をまったく生かさずに、ただ単純に欧米に追随しているので、今の再エネバブル状態は、後数年で欧米と同様、再エネバブル崩壊に向かうと考えられます。
 となると、今建設されている風力発電所は近々どうなるのか?極めて疑問だと言わざるを得ません。
(武田恵世・記 2013/07)



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