熱帯雨林の島

 マレーシアとタイの国境近く、アンダマン海に浮かぶ熱帯雨林に覆われた緑の島ランカウイ。
ここへ行くなら、ぜひとも泊まってみたいと思っていた「ザ・ダタイ」。
ランカウイ島の北部に位置するこのホテルのコンセプトは、自然回帰。
トラベル雑誌などによるとモモンガが飛び交い、猿が屋根を渡っていくという。
昆虫の幼生が甚だ苦手な私としては、大丈夫だろうかとの不安はあったが、
「ザ・ダタイ」の評判は群を抜いて良く、ランカウイならここに泊まると決めていた。
 
 今は少し慣れたが、初めてクアラルンプールの空港でトランジットした時は、
空港の広さと窓口が見つからなかったのとで、右往左往してしまった。
ペナンに行く人は多かったけれどランカウイは少数派で、
どこへ行けばよいのか分からなくなってしまったのだ。
ようやく手続をして搭乗口に辿り着いたとき、真っ暗な空に稲光が走り、妙に不安だった記憶がある。



 私たちが泊まったのはヴィラで、森の中に点在していた。
初めてランカウイで目覚めた時、屋根をたたく雨音の気持ちよさに驚いた。
パラパラとリズミカルに、暖かくて優しく、まるで静かに包み込んでくれるような雨音だった。
あまりに心地よくて、滅多にしない二度寝というものに滑り落ちてしまった。
 シャワーを浴びてから雨上がりのベランダに出てみると、大柄なリスと遭遇した。
それがモモンガだと分かったのは暫くしてからだった。
遠くの木の枝にはサルの姿も見えており、
食べ物は決して与えないようにというスタッフの言葉がよみがえった。
本当に、自然の中のリゾートだったのだ。



 広い敷地にヴィラが点在しているため、
レセプション等へ移動するときはカートを呼んでスタッフが運んでくれることになっている。
でも私たちは大概抜け道を発見し、ショートカットすることにしていた。
ただし、ディナー終了後の動きたくない状況の時はカート利用をお願いした。
ところが、たまにカートがパワーダウンしてしまい、
坂を登りきれずに国道を走る羽目になったりすることもあった。
そんな時は、結構ロングドライブになってしまいスタッフが恐縮する場面となってしまった。
そんな時“Nice Long Driving”と、思い切りの笑顔で礼を言うと、
スタッフもはじけるような笑顔を返した。
ただそれだけのことで、一日が穏やかに終わっていくような快いリゾートだった。



 レストランは3つ。タイ料理とコンチネンタル料理、そしてイタリアン。
バーも2つ。眺望の良いメインレストランの上階と、ビーチサイド。
それだけではなく、隣に位置する「アンダマンホテル」のレストランも、
同系列なのでルームチェックで利用できる。
おまけにセダンの送迎も無料。
お薦めは、タイ料理と「アンダマンホテル」の日本料理店「鴨川」での鉄板焼。
タイ料理の「パビリオン」ではスパイシーなものばかりではない料理を用意してくれている。
コース料理も前菜からメイン料理まで多くのメニューからチョイスできるので、
自分独自のアラカルトのようなコースメニューも作成可能だ。



お陰で辛いものが苦手の私でも、タイ料理の美味しさを堪能することができた。
 「鴨川」では、同じカウンターになったアイルランド人の老夫婦から、質問攻めにあった。
「なぜ日本人なのに日本酒を飲まないのか?」「和食を食べているのになぜ白ワインなのか?」
 「私たちは、白ワインが好きで食事の時はワインを飲むことが多い」
「刺身が一番旨くなるのが日本酒です」
 納得したのかどうか分からないが「あんたたちの英語はわかりやすい」と言って貰えたから、
取り敢えずは了解してもらったものとしよう。
あんなに屈託無く質問されることは滅多に無いことなので、なかなか刺激的体験だった。

 「ザ・ダタイ」のメインバーはレセプションの奥にある。
途中に蓮の花を浮かべた池があり、蛙達が住んでいる。
蛙達の鳴き声をBGMに酒を酌み交わす。
あまりに大きな声なので、一帯どんな子が鳴いているのだろうと覗き込むと、
3〜5cmくらいの小さな蛙が精一杯鳴き声を上げていた。
季節によっては姿が消える時もあるそうで
、もしもまた行ける時が彼らの季節ならば、ゆっくり歌声を聞いてあげたいと思っている。

 スパは海岸の近く、シーサイドプール脇を抜けていったところにあり、
静けさに満ちていた。
「マンダラスパ」の経営するスパで
、熱帯雨林の森の中、敷地を流れる川のほとりで施術を受けることが出た。
静かで、木々のざわめき・小鳥の歌声・川のせせらぎの音に包まれてマッサージを受ける。
夢見ごこちだけれど、さっと渡ってくる風に空気の濃さを感じられる。
2人掛りで左右シンクロしてのマッサージは、筆舌に尽くせない快さだった。
エステなんて・・・と、試したことも無かった相方も、初めて体験して満足したらしい。
あれ以降、誘っても反発しなくなったもの。(笑)

 ヨーロッパからの客人が多いせいか、格式が高いリゾートのようだ。
ディナータイムは雰囲気が違う。
それもまた楽しみの一つでもあるわけで、
昼間は海やプールで楽しんで、夜は違う雰囲気を楽しむ。
ちょっとおしゃれで、大人のリゾートライフが楽しめた。
ピリッとしたリゾートを楽しみたい方にお奨めのホテルである。





旅程

  1999年11月21日 〜 24日

  2001年11月19日 〜 24日


リンク

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写真集