花の慶次−雲のかなたに−
原作・隆慶一郎 画・原哲夫 脚本・麻生未央 連載・週刊少年ジャンプ

ストーリー

かぶき者…「傾奇者」と書く。「傾く」とは、異様な服装や常識はずれの行動を愛することを指す。

しかし真の傾奇者とは、己の掟のために命を賭したのであった。

世は激動の戦国時代…ここに、天下一の傾奇者があった!

その者の名は、前田慶次



…というあらすじから物語は始まるんですが、この隆慶一郎(歴史小説家)さんと、

あの北斗の拳で名高い原哲夫さんのタッグというのは…異色の一言に尽きます。

ケンシロウ顔の慶次!北斗の拳ばりの戦闘!原先生っ節全開です!

この作品は、原哲夫先生が、花の慶次の原作である「一夢庵風流記」のマンガ化を隆慶一郎先生に頼んで、

隆慶一郎先生本人がマンガ化の際のシナリオを書くという言葉まで頂きました。

が、その頃隆慶一郎先生は重い病気で、結局初回のシナリオを書いている時点でお亡くなりになってしまい、

続きの脚本は弟子の麻生未央さんが受け継ぐ…という形になったんです。

つまりですねぇ、原作の隆慶一郎先生が史料にしている「可観小説」などから、一夢庵風流記が出来、

そしてその一夢庵風流記を原作にして、麻生未央さんが少年マンガっぽくストーリーを書き換えて、

原哲夫さんがそれを北斗の拳風に仕立て上げているわけですな。(笑)

しかしこの漫画、読めば読むほど北斗の拳風になっていきます。

「佐渡島攻め」の回であった、敵兵が時間差で(刀を振って数秒後)に倒れるなんて、

正に北斗の拳そのものです

で、ここで一度、原作の「一夢庵風流記」の紹介もしておきましょう。

一夢庵風流記はズバリ、「慶次が戦国の裏で暗躍していた!」ってストーリーなんですなこれが。

何せ養子によこされた前田家から出奔してしまった後は自由気ままに生きた人だから、

何やってたってわかんねぇじゃねぇかーっ!ってハナシですね。

大名の奥方と恋に落ちたり(しかも両思いに…)、天下人たる秀吉を暗殺しようと企んだり…

隆慶一郎さんもなかなかの素晴らしい歴史小説家なので、原作の方も一度読んでみて下さい!

そして自分がオススメするのは、「花の慶次」と「一夢庵風流記」を同時に読むことです!

違いが各所で如実に表れていて、凄く面白いと思いますよ!

まず登場人物の違いですね。例えば「傀儡舞を踊る男」のキャラクターが、

花の慶次の方では「真田幸村」に置き換わっていたりします。

他にも徳川家康、軍神・摩利支天を見ることの出来る巫女、石田三成、さらには猿飛佐助、

七霧の里に住む、読心術を持った鬼の一族…などなど、少年漫画っぽく、歴史で有名なキャラクターや、

とんでもない人物が次々と現れます。

そういったところに変更点が見られますね。

しかし如何に花の慶次が少年漫画っぽく描き直されていても、やはり歴史作家の作品を原作にしているんだし、

結構歴史と辻褄のあった点は多いです。

秀吉に猿舞いを披露したり、利家を水風呂に入れたり、直江兼継と親友になったり、後に上杉家に仕えたり

したのも全て実話(どうだろう?実際可観小説も脚色していたかもしれないし…)らしく、

きちんと歴史の本として読めるくらいになっています。



しかし、前田慶次郎利益、彼がこれだけ、多くの人に(海音寺潮五郎さんの『戦国風流武士前田慶次郎』など…)

書かれ続けてきたのも、ひとえに彼の人柄にあるんじゃないだろうかと思います。

何者の権力にも屈せず、人としての心を貫き、義理を重んじ、真の漢達と友情を深め合う…

原哲夫先生が言っている通り、正に『少年漫画のヒーローとしての理想の人間像』だと思います。

きっとこれからも彼は、多くの人々の作品の中で、生き続けていくことだと思います。