武装錬金

作・和月伸宏 連載・週刊少年ジャンプ



さて今回はこのサイトにしては珍しい、健全な少年漫画を紹介しましょう。

作者はというと、某弟子の漫画が単行本何百万部とか豪語してる間に

ひっそりと打ち切られ作品を刊行してるあの和月伸宏先生ですよ。

代表作は「るろうに剣心」。だってそれしか長く続いた連載がないもんな

ちなみに紹介する前にこれだけは言っておきますが、どっぷりハマりました。

正真正銘のあの最終回を読んだ後、もう1ヶ月あまりこの漫画で頭が満たされて。

ストーリーとか語っている事とか、手放しでほめちぎれるほどの物ではないかもしれませんが、

とにかくキャラが素晴らしい。どのキャラもすんごい好きだし、みんな幸せになって欲しい。

そこだけはもう、絶対に譲れません。



ストーリーは自分が紹介するよりWikipediaで武装錬金検索してみた方が早いです。やたらと詳しいです。

さて、タイトルだけ見て「錬金術漫画かよ アレのまんまパクリじゃないか」とか思った方、(「アレ」は自主規制)

この漫画、そもそも2話の段階で既存の錬金術とは別モノであると釘を打ってあります。

…だからそんなに和月先生叩かないで下さい…あの先生は何というか、そういうのに鈍いというか。
しかし漫画なんて二匹目のドジョウだろうが何だろうが、楽しけりゃいいと思うんですが。


で、錬金術と違うならどうなのか。


まずこの物語の核になるのは、「ホムンクルス」と「武装錬金」で、

ホムンクルスは動植物の細胞と、人間の体をベースに造られる人造生命で、

普段は人間に化けていますが人間の頃の精神はすでに失われています。

性格や能力に個体差はあるものの、本能的に食人衝動があり時々人間を食料とします。

ちなみに自分の細胞をベースにしてホムンクルスとなった者は、

精神を失わないまま人型ホムンクルスになるのですがそれはまた別のところで。

そしてこのホムンクルスに唯一対抗できるのが、同じ錬金術の力で生み出された武装錬金で、

普段は六角形の手の平サイズの形態「核金」となっていて、持ち主の闘争本能に呼応して

武器となります。持ち主によって個別の武器が出てきて、さらにそれぞれに特有の性質があり、

「錬金の戦士」はそれを利用してホムンクルスを討伐します。





で、ここまで長々書いてきましたが、

結局のところこの漫画の本質は

変態とストロベリとエロスですよ。

待て!待つんだ!のっけからドン引きさせたけど、ホントは実に健全な少年漫画なんだって!

蝶々マスクにビキニパンツ一丁の男とか出てくるけどホントなんだって!

とりあえず、不安をあおるのもアレなので冷静に解説するとしますか。

ええ、もちろん変態の部分から。


まずこの漫画の流れとして、「変態が話を転がす」というモノがあります。

話がダレたり暗くなっても、そこに変態が出てくれば、一気に面白くなって急展開に。

変態が空気を変えていくのです。巻き込んでいくと言う方が正しいかも知れませんが。


さて、キャラ紹介行きたいと思います。変人部門を。

まず愛すべき変態、蝶野攻爵19歳男、人呼んでパピヨン!

登場からして、蝶々マスクに学ランという素晴らしい出で立ちでの登場。もちろん後に比べればはるかにマシですが。

ただ後に判明するのですが、学ランとズボンは着ているものの、その下はビキニパンツ一丁。

のっけから人間を超越してますな。パピ様。

その後も、ビキニパンツ一丁、素敵スーツ蝶々の羽装備、ほぼ全裸に近い水着と、

変人部門最高のオシャレセンスの持ち主。

そして変態キャラはストーリーのほぼどこにも現れるので、詳細を話すのはネタバレに等しいのですが他にも、

どう見ても顔が三日月形の人とか、目まで隠れる銀色のコートを着込んでいるおかげでまんま不審者の戦士長とか、

体が破壊されても元通りに修復する特性の武装錬金を持つおかげで、

全身修復の度に全裸になって復活する奴とか、

半裸・ケツ丸出し・フンドシ着用の大ボスとか。

あまりに濃すぎて紹介しきれません。



濃いと言えば、キャラクターもみんなそれぞれ魅力的で、特に主人公とヒロインなんか素晴らしい。

少年漫画の鑑。

まず主人公の武藤カズキ。箇条書きで書くけど、濃ゆさは伝わるかと思います。…というか本作を読めば解る。

ボケ・天然・純情・素直・優しい・不死身・熱血・誰からも好かれる・どっちかというとヒーローよりむしろヒロイン

青汁大好物・努力家・○○の達人・岸辺露伴のファン…などなど。

まあ何だ、素直で熱血で鈍くて天然で、こんだけ好感の持てる主人公もそうはいないかと。

おかげで変態腹黒ぶちまけヒロインに言い寄られてるけど。


で、ヒロインの津村斗貴子。ヒロインとか紹介しといてなんですが、

個人的にはカズキにベタ惚れのパピヨン(無論男である)をヒロインに推します

それというのもこの斗貴子(さん)、ヒロインでありながら、不殺(これは和月の永遠のスタンス)を語るカズキを、

「戦士として甘い」だの何だの言って目を突いたり四肢を切断しようとしたりのスパルタンっぷりです。

ヒロインとしてそれでいいのか、と言いたくなるような悪行は他にも数々ありますが、

何より代名詞と言われる名台詞、「臓物をブチ撒けろ」は凄まじい。

ですがそんなこと言ってるのは4巻辺りまで。後半になるともうカズキにメロメロで他のことは何も目に入らず、

スパルタンから一転、ストロベリー(俗に言う、カズトキの間の甘い空気)に変貌します。

ただ強いて言えば、カズキを自分から奪おうとしたりカズキにつく悪い虫には、

最強のスパルタンで応戦します。太ももから処刑鎌とか出ます。

自分を慕う後輩でも、カズキの敵になると解ったからにはためらいなく手の平を刺し貫き、

そしてその後、後輩の前で自分とカズキのストロベリっぷりを見せつけてトドメ。

魔性の女ですか。

アメとムチというか、戦乙女というか、ストロベリとスパルタンというか、

セーラー服と処刑鎌(コレが一番的を射ている気がする)というか、そんなヒロインキャラ。

だからやっぱりパピヨンのが正ヒロインだと言うのに。

まあでも何だかんだ言って、カズトキが大好きですよ私は。

こんだけ見てて幸せになれて、2人の幸せを願いたくなるカップルもカズトキだけだし。





そしてこの作品、予定通りにジャンプ本誌では打ち切られた挙げ句に、

赤マルジャンプでとりあえずの完結はさせてやるよという酷い扱い。

でもこの一連の流れが、凄い。ただただ凄い。赤マルに載ることを有効利用していると思う。

まず本誌で05年4月25日に、打ち切りでとりあえずの完結。ラストシーンはやはりカズトキで締め。

打ちひしがれる読者に、「8月の赤マルに武装錬金ファイナルが掲載」の続報。

読者達はそれぞれ妄想をたくましくしながら待ち焦がれる。そして8月16日には、

赤マルでファイナルが掲載。60Pという量にも関わらずその上にさらにさらに詰め込んだ濃い内容。

しかしそれでも、ほとんどバッドエンドと言うしかないようなラスト。まさかこれで終わりかと思いきや、

さらに「1月の赤マルに、武装錬金ピリオドが掲載」の続報。詰め込みきれんと悩んだ和月先生が

ジャンプ編集部に願い出たようだが、またも待つ読者達。あの伏線はどうなるのか、

何より愛すべきカズトキはどうなってしまうのだ。バッドエンドが頭をよぎる。

そんな中で年は明け、ついに1月16日武装錬金ピリオドが登場。緊張しながらページをめくる読者達。





そこで、あの扉絵。





わ、和月先生!あんたもう、こんだけ読者を待たせるなんてとんだサディストだけど、

最高だよ!やっちまったよ!こんなもん見せられたら一生ついて行くよ!先生!




以上は自分の叫びだけど、ある意味ファンみんなの胸中。

ピリオド読んだ後は一週間まるまるぐらいこんな感じだったけど、今でもまだ暴走は止まらない。

というか、素でスゴイと思います。あの扉絵は。

武装錬金は是非全10巻買って読むべき。ブッコフで買えば一冊250円くらい。たいしたことなかろう。

2500円でカズトキが10冊分読めるんだぞ!!安いもんだよ!



追記:06/4/4 10巻買っちまったよ。それも発売日に定価で書店の開店10分後という驚異の早さで。

SBR7巻も同じような感じで買ったけど、何しろ今回は春休み中学生という立場だ、行動は早いに越したことはない。

ピリオドは読んだの一回きりだったので、再び見るとまた細部に感動が。

カズキはこれから素でW武装錬金状態なのかなぁとか、

カズキ救出作戦はよく見ると、ほとんど数コマで立脚・決行されたとんでもない行き当たりばったりだなぁとか、

パピヨンお手製白核金は蝶マーク入りなのかぁとか、

するとカズキの2つ目の武装錬金はパピカズ一心同体のとんでもないアナザータイqあwせd(ry

感動というかアラ探しというか、書いてみたらぶっちゃけただの妄想だろこれは。

とかいう1人ツッコミはさておき、武装錬金というマンガは、何故だか読む度妄想が広がる気がする。

いや、本当に仕方ないほど妄想が出てくるんだってば。

自分でも、俺の脳のどこにこんだけ腐った部分があったのかとか思うほどに。

ええ。だから武装錬金関連の話に関しては、オタク臭いというか、

お脳が揺れてるようなことを管理人が口走ってても気にしないで下さい。

まあもう連載も何もかんも終わっている訳だが。

やはり足りない分は妄想で補えってか。



それをふまえて、10巻に掲載している特別描き下ろし、「武装錬金アフター」感想というか暴走を。

注・ネタバレ全開です。
































・のっけからしてカズトキ。永遠のストロベリカップル。2ヶ月後−とか言ってるが、

その間にもやっぱり何か進展あったのか。この2人はいくら見ても見飽きない。


・「コラ 私の顔に答えは書いてないぞ ちゃんと教科書を見ろ」

このセリフだけならまだいい。ごく普通のお姉さんキャラだ。

だがそこで照れ隠しに目潰しをくらわす必要があるのだろうか。

1回目は痴話ゲンカ、2回目の時はシリアス顔だったからまだいい。

でも今度のは問題だと思う。何せ斗貴子さんは笑顔で目を突くんですよ!?

日常的に目潰しが飛んでくる人を配偶者にするのは考えものだと思うぞ。カズキ。

少なくとも何だ、結婚前にはやめさせとけ。


・私服の桜花姉さんと秋水クン。何せ人外と変態しかいない集団に囲われていたのだから、

蝶サイコーなセンスの私服とか着てたらどうしよう、と思ったモンだが割と普通。

そして桜花は腹黒。ついに双子の弟もハッキリと確信し始めた。


とうとう変人の巣窟と化したロッテリやバーガー。でも店員さんはスマイル。テン蝶もお出迎え。

それにしても御前様にコートの変人にガスマスク少女に蝶・ハイセンスのテン蝶。

何よりこんなのに囲まれながら、逆に変人バーガーとしてやって行くほどの豪気を身につけた

店員さんの先行きも不安です。そもそも変人をマスコットキャラにして一般客にウケを狙ったのか、

それとも「類友ッ!」とか言って変態さんや人外がわらわら押し寄せて来るのを狙ったのか。

・斗貴子さんの「うわぁ…」に対してカズキは「うわあー」って。「賑やか賑やか」で済ませられるのか!!

というか未だ銀成市のこの状況に順応できていないのは、斗貴子さんだけではなかろうか。

・店員さんもついに自分も「変人」であると自覚。でもきっとまだ 蝶サイコーのセンスには至ってないから大丈夫。

「怪人・ブチ撒け女」 ナイス呼称!でも個人的には、「セーラー服と処刑鎌」。自画自賛だけど。


・妙に大人びた剛太。剛太カコイイよ剛太。頑張れ!捨てる神あれば拾う神アリだ!

なんていうか斗貴子さんの奪い合いは、相手が悪すぎた。


・「それと その傷も何もかもひっくるめて 

まるごと全部 斗貴子さんのコトが好きだから!!

言っちゃったー!

いやぁ、連載中もピリオドも、印象的なプロポーズめいたセリフはあったわけですが、

口に出して「好き」とか言ったのは多分初めて、少なくともかなり新鮮だよなぁ、と。

・ギャラリー大盛況。何というか、カズトキは2人ともものすんごい奥手だから顔赤らめたりしてるけど、

両者の間に流れるそこはかとないストロベリ空気が伝わってきて、見てる方がさらに恥ずかしいです。

・傷心の剛太。 ピリオドの「戦友だ」以来、何か達観したような目をしてるんで、

こっちは見てる方がさらに痛々しいです。ホント、頑張れ。


・5ページ分斗貴子さんの傷について回想。

西山君出てきたー!でもやっぱヘタレ。というかやられ役。斗貴子さんは本能的にスパルタンか。

ところでこの後すぐ武装錬金の名前付けたんだろうなぁ。戦団のイニシエーションみたいなもんだし

(戦団のイニシエーション:戦団員全員を独自の蝶センスの持ち主に育て上げるための通過儀礼)

小学生じゃ「バルキリースカート」なんて大層な名前でもしょうがない。

…というか、小学生にしてそんな名前を付けるとは、やはり斗貴子さんも蝶センスの持ち主なんだろうか。

・斗貴子さんの傷に触れるカズキがエロスというか、天然というか、サディストというか。

少なくとも「ヨロコんでる」「ヨロコんでない!」のやりとりは、非常にエロスだと思います。

エロスはほどほどにすればするほどエロスい!と思った。病んでいる。もちろん苺病ですが。


毒島さんの素顔!と喜んでおりましたが、こんだけの変人変態に毒された後は、

「普通に普通だなあ」と思ってしまいました。ええ。毒されきってます。

というか、こんなコがあの濃すぎる再殺部隊の中でよくもまあやっていけたなあと。

ついでにこうなると火渡戦士長も性癖を疑われかねない。

中身を知らなかったというならまだわかるが…

・和月野ブヒ郎ここでも。「ののしって下さい!」て。毒島さんには無理だろうさすがに。

でもあんな顔して、平気で「ブタ野郎」言ってたりしたら、それはそれで凄い。


・千里と剛太の間にフラグ発生。剛太頑張れ。ホント頑張れ。

・最後の最後の締めで、月に輝くパピヨンの影。やっぱりこの漫画は、最初の事件がパピで始まり、

そして最後は高みに飛んだパピヨンで終わるんだなぁと。ピリオドもアフターも大活躍だったし。

パピヨンエンド、とか形容しようと思ったが、パッと名前だけ聞くとどうしようもないバッドエンドに聞こえてしまう気が。





…以上、頭の中全部吐き出しましたよ。ゴパァ。


こんだけ妄想で暴走した感想を書いたのも、ひとえにアフターがむっちゃくっちゃツボだったから。

10巻のピリオドとエンバーミング合わせてもまだ足りない分は、描き下ろしで補うんだろうなぁ、

そしたらカズトキのストロベリ話がいいなぁ、再殺部隊出てきてからはストロベるヒマが無かったし、

ファイナル・ピリオドではくっつき過ぎちゃってるし、ここは1つ純情オクテのストロベリカップルの赤面話が

久しぶりに見たいなぁ、なんて考えてたら見事にそうなった。

最後の斗貴子さんの傷に関する伏線も、戦団の何人かのその後も、毒島さんの素顔も出てきて大満足。

もう、個人的には本誌最終回やファイナルを超えてます。

やっぱり和月先生は 読者の見たいモノがキチンと解っているからこそ、こんなにファンがついて来てくれたんだなぁ、

と思います。これが重要ですよね。それとも読者が「和月先生の描くモノ」が解っているのか、

それは解らないけど、とにかく本当に、ファンにめぐまれた作家だと思います。

あー、るろうに剣心買っちまおうかな…





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