◆ ゼフェル様の日記 ◆


 ×月×日

 今日、みんなの前でほめられた。

 ミーティングの終わりにジュリアスが俺を呼んだから、またいつもみてーにどなられるかと思ってたら(どなられるようなことをした覚えはないけど、それが日課みてーになってるからな)、突然あのオッサンが気色悪い顔で笑いやがったんだ。
「ゼフェル、昨日広場でご老人を助けてさしあげたそうだな」
「…………へっ?」
「ご老人の娘夫妻がわざわざ私のところまで出向いて礼を言っていったぞ。お前が助けてくれたおかげで大した怪我もしなくて済んだと感謝していたそうだ」
 なんのことかと思って昨日のことを思い出したら、確かに昼間そんなことがあったなと思い当たった。
『……っつっても、たまたま目の前で転びそうになったじーさんを支えてやっただけだぜ? 別に助けたわけじゃねーんだけど』
 と俺が言おうとしたら、俺が口を開く前にそこにいた連中が次々に口を開いて。
「すごいじゃないか、ゼフェル! 俺感動したよ!!」
「僕もだよ! ゼフェルがそんなことするなんて、信じられないっ!」
 ランディとマルセルはいつもみてーに大げさに騒ぐし、
「あんたでも人助けなんてするんだねぇ。優しいんだ☆」
「ま、男として当然だな」
「ゼフェル……思いやりのある行動をとれたのですね。同じ守護聖として誇らしく思いますよ」
 オリヴィエとオスカーとリュミエールは妙に感心したような声を出しやがって。
 ジュリアスは、
「よくやったな、ゼフェル」
 とかなんとか言って俺の髪の毛を触ってきやがったんだぜ!? 今までジュリアスにそんなことされたことなかったから、思いっきり鳥肌が立っちまった。
 ジュリアスの手が離れると、ルヴァまで俺の頭をぐりぐり触ってきて、
「そうだったんですかー、いいことをしましたね、ゼフェル」
 ジュリアスがしたのよりずっと強く俺の髪の毛をぐちゃぐちゃにしてくれて、「おや、髪型が……」なんてあわてて整えようとしたがったんだぜ? ったく、人の髪型くずしといてあわてるなら最初からそんなことするなっての。
 クラヴィスは無言だったけど、俺の顔をちろっと見たのがなんとも言えず気味悪かったし、とにかく今日は朝から変な気分を味わったんだった。

 ……まぁ、ほめられんのは別にいいけどよ。




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