僕の初体験から
慎一の呟き
祐介のことを話せって? ……なんか照れるな。 あいつとは小学校にあがる前からの付き合いだから、いつのまにか一緒にいるのが当たり前って感じになってたな。特にあいつの家は父親が小さいとき死んでしまって、おふくろさんも仕事仕事で忙しくて、一人っ子のあいつとは自然と一緒にいる時間が長くなってた。 寂しいとか、あいつ、全然言わない子供だったから……それがすごく俺には痛くて。 俺の家にはいつだってうるさく騒ぎ立てるおやじやおふくろがいて、妹がいて、だから祐介の寂しい思いとか、俺は本当にはわかってやれてなかったのかもしれない。 だけど、あいつの笑顔が見たくて──あいつにはいつも笑っていてほしくて、気づけばいつも俺はあいつのために何かしてやりたいって考えるようになってた。……たぶん、もうずっと長いこと、俺は祐介のことが好きだったんだ。 だから本当は、別の高校に行くのもためらわれて──しかもあいつが進学しようとした学校が男子校だってこともあって、心配でたまらなくて。中3の後半は、祐介が学校で誰かに襲われたりしたらどうしようって、そんなことばっかり考えてた。 でも祐介は、俺が推薦で進学するって信じて疑ってなくて、「僕、しんちゃんのこと応援してるからね!」なんて言われてしまえば、一緒の高校に行くなんて夢のまた夢って感じで。結局は別々の高校に通うことになってしまったんだ。 毎週の電話はかかせなかった。祐介のどんな小さな変化も見逃したくなくて。ホントは毎日でも会って祐介の姿を確かめたかったんだけど、俺のほうの部活が忙しくてそうもしてられなかったし。 そのうちに、俺の心配してたようなことがなくてほっとする気持ちより、俺の祐介に対する欲望が抑えられないくらい育っていったのは、なんつーか、俺にとっては当たり前のことでさ。 ……言い訳するようだけど、祐介に電話をかけなくなったのも、俺の中の理性がもう限界に近くなってたからで……祐介の声を聞いただけでヤバイことになりそうだったから、自制してたからなんだ。 女を抱くようになったのも、祐介が抱けないなら他は誰でも一緒だと思ったからで……もちろんそれで満足できるわけがなかったんだけど、それでも一人でやるよりは断然いいかなーとか思っちまって。今考えると、サルの浅知恵って感じでホント情けないけど。 だけど、祐介に女とホテルから出てきた所見られたのは、今でもすっげー後悔してる。あのときのあいつの顔、俺一生忘れられない気がする。 初めて見た……ショックで泣き出しそうな、凍りついた表情。これから先、絶対あんな顔はさせたくないって、そう思った。 あのあと、祐介が一緒にいた男に肩抱かれてホテルの方に消えてったのがすごくショックだったけど、同じようなショックを祐介も味わったんだって思ったら、追いかけることもできなくて。 結局そいつ(薫とかいったかな)は俺の気持ちにいち早く気づいて、俺と祐介の仲を取り持ってくれたんだけど。 今は……今はホントに幸せだ。祐介も俺のことが好きだって言ってくれたし、俺の気持ちも祐介に伝えることができたし。無理やりにでも時間つくって、気持ちいいこと……してるしな(照)。 ただ! ただ、気になることが1つ。 なんか、祐介……エッチするごとに成長(?)してて、ぎょっとすることが多いんだよな。どっかでそういうことを勉強してるって感じがして……俺のほうが祐介に気持ちよくしてもらってるって感じになってきてるのが、ちょっと……かなり、気になる。 あの薫って友達が怪しい気がするんだけど(祐介にいろいろ吹き込んでるような気がするんだ)、さすがに聞くこともできないし……。 祐介に負けないように、俺ももっと精進しようって、今はそれが俺の1番の決意だ。 |