運命の温度・幸せの温もりのその後

4人の対談




 6月。勝と恵一が大学に入学して早2ヶ月。雅実の誘いの手紙に、2人は再び雅実と大輔のペンションへと訪れていた。

大輔
恵一
勝 
雅実

恵一

勝 
大輔
恵一

勝 
雅実
恵一




雅実
恵一
勝 
大輔
雅実
恵一

恵一

恵一
雅実

恵一
大輔
恵一

勝 
雅実

恵一

勝 
大輔
恵一
勝 
恵一

雅実
恵一


雅実

恵一
大輔


恵一
勝 
恵一

勝 
恵一

雅実
恵一

大輔

勝 

恵一
勝 

恵一
雅実
大輔
勝 

雅実
恵一
雅実
大輔

勝 
大輔

恵一
勝 
恵一
大輔
勝 
「久しぶりだな、2人とも」
「お久しぶりです、大輔さん。雅実さんも」
「突然電話なんかしてくるから、なにかあったのかと思ったぜ」
「ごめんね。シーズン前のこの時期ならゆっくりしていってもらえると思ったから、慌て
 て電話かけちゃった。大学の予定とか、大丈夫だった?」
「はい、全然平気です。1年のときはそんなに忙しくなくて、ちゃんとレポートさえやっ
 ておけば余裕あるくらいで。ね、勝」
「…それは俺にたいするイヤミか?」
「なんだ、どうかしたのか?」
「勝ってば、僕のレポート当てにして全然自分でやろうとしないんです。それでこのあい
 だ痛い目にあって」
「ばっ! そんなこと話さなくていいんだよ、恵一!」
「なになに、どうしたの?」
「僕が仕上げておいたレポートをコピーし忘れちゃって。勝はいつも僕が書いたのをコピ
 ーしてから自己流に直してるみたいなんですけど、そのときはレポートの存在自体忘れ
 てたらしくてコピーしてなかったんです。僕はレポートを仕上げたら提出期限に関係な
 くすぐに提出しちゃうし、勝もそれを知ってるはずだから、もうコピーしてたんだと思
 って出しちゃったんですよね」
「それで、あやうく単位を落としそうになっちゃったとか?」
「そうなんです。僕がレポートの話をしなかったら、絶対そのままだっただろうから」
「……」
「仕方ない奴だな。自分のことくらい自分でできないのか?」
「まあ、今日は無礼講だから。勉強のことは忘れて、ゆっくり羽を伸ばしたらいいよ」
「雅実さんが優しいこと言ってくれるからって、次のレポートのことは忘れないでよ」
「…わかってるよ」
「口ばっかりなんだから。ちゃんとしてよね」
「わかってるって。最近うるさいぞ、お前」
「勝がだらしないからじゃないか。僕だっていろいろ言いたくないよ」
「まあまあ。落ち着いて、恵一君」
「そうだぞ、かりかりするなよ恵一」
「……調子いいんだから」
「仲良くやってるみたいじゃないか。今2人で住んでるんだろ?」
「え? あ、はい。勝のお父さんが経営する不動産会社で、住みやすい部屋を紹介しても
 らって」
「確か、ここから戻ってそのまま部屋探しに行ったんだよな」
「え? そうだったの? どうりで引っ越したってハガキ送られてくるのが早かったわけ
 だ」
「勝が強引に僕のことを東京に連れて行って。あ、でもその前に、僕の家に寄ったんだっ
 け」
「そうだよ。俺がお前の兄貴にめちゃくちゃどやされたの、もう忘れたのか?」
「なんだ、今や家族公認の仲なのか」
「公認っていうか……無理やり認めさせたような感じで」
「そんな言い方ないだろ!? 俺が兄貴の毒牙からお前を守ってやったんだぞ!?」
「そうなんだけど。あの光景はすごかったもん。僕、兄さんがあんなに怒った姿も、父さ
 んが誰かの喧嘩を仲裁してる姿も初めて見たし」
「恵一君の御両親は、2人のことを反対しなかったの?」
「はい。っていうか、兄さんの怒りがひどくて、僕らのことをまともに考えているひまが
 なかったっていうか……。たぶん未だに判断しかねてるんじゃないかって思うんですけ
 ど」
「それでも、勝君と一緒に住むことを反対しなかったってことは、恵一君に勝君が必要な
 んだって理解してくれたからなんじゃないかな」
「……そうなんでしょうか」
「そうさ。自分の息子にとって有害な奴だと思ったら、一緒に住むなんて許さないだろう
 からな」
「有害って……ひでえ言われようだな」
「ありがとうございます。お2人にそう言ってもらえて、少し気が楽になりました」
「なんだよそれ。俺との生活に疑問でも持ってたってことかよ」
「そうじゃないけど……。僕、父さんや母さんにとって、本当の意味では全然いい息子じ
 ゃなかったから。もし勝とのことで嫌な思いとかさせてたら悲しいなって思って」
「それは……そうかもしれないけどさ」
「僕は勝のことが好きだし、これからも嫌いになる予定なんてないから、父さんたちに勝
 を受け入れてもらいたいんだ。ずっと一緒にいることを……認めてもらいたい」
「恵一君……」
「もちろん勝には継がなくちゃいけない仕事もあるし、跡継ぎの問題とかもあるだろうか
 ら──僕が望んでもいつまで一緒にいられるかわからないけど……」
「そんなことを言うな。お前たちの気持ちが本物なら、周りだってちゃんと認めてくれる
 さ。時間がかかってもな」
「そうさ。それに俺は、お前のこと以上に家を大事にはできないから。家を継ぐために結
 婚しろとか言われたら、そのときは家とは縁を切るつもりだから」
「そんなのっ! だめだよ、勝!!」
「だめじゃねぇよ。お前のこと大事にしたいと思った時から、ずっとそう考えてた。俺に
 はお前以上に大事なものなんてないから」
「勝……(目が潤んでいる)」
「勝君……(なぜか泣きそう)」
「男らしくなったな、勝(大きく頷いている)」
「(照れくさそうに)なんだよ、それ。だいたい、大輔さんはどうだったんだよ? 雅実
 さんと同棲始めるとき親に何も言われなかったのか?」
「同棲なんて……そんなだいそれたものじゃないよ」
「でも雅実さんに聞いた話だと、立派に同棲って感じだったけど……」
「恵一君っ」
「俺はお前と違って、雅実とは長い付き合いがあったからな。一緒に住むのも別に問題な
 かったぞ」
「なんだよー。親と修羅場とかいう話、聞きたかったのに」
「日頃の行動がモノを言うんだよ。俺はお前みたいにふらふらしてなかったからな」
「それじゃ俺がろくでなしみたいじゃん」
「大輔さんに比べたら、勝は立派にろくでなしだと思う」
「恵一っ! てめえ、自分の彼氏のことをそんなふうに言うのか!?」
「だって本当のことだもん。そうじゃないって言いたいなら、もっとしっかりしてよね」
「ははっ、言われちまったな」
「ちぇ」

 一人悪者扱いをされた勝は、それからしばらくへそを曲げたままだった……らしい。


4人の対談・その2へ続く……

BACK