兄貴と市郎
─兄貴の誕生日─



 今日は、俺にとって1年で1番大切な日だ。

(よし……準備完了だ)
 昨晩兄貴が寝ている間に部屋の掃除は完璧にすませた。
 花屋にも電話して、とびきり上等な花を届けてもらうように手配した。
 若い衆を走らせて、高級ワインと兄貴の好きなブランデーも手に入れてある。
 プレゼントも、数日前からポケットに忍ばせている。
 あとはデリバリーで頼んだ食事を並べ、『兄貴、おめでとうございます』と言うだけだ。

 ……だけど兄貴はいつもと変わらず仕事に飛び回っていて、夜になっても一向に帰ろうとしない。
 だんだん俺のほうが焦れてきて、小さな問題を兄貴に相談しようとしてくる奴らをじろっと一睨みして跳ねのけた。普段兄貴が甘やかしてるから、あいつらが自分で考えるってことをしなくなるんだよな(けど、兄貴が甘かったおかげで俺も叱られる回数が少なめですんだんだけど)。

 まさか……兄貴は忘れてしまっているのだろうか。──今日が、兄貴の誕生日だってことを。


「後は頼んだぞ」
「うぃす! お疲れさまでした!!」
 深夜に近い時間になってから仕事に区切りがつき、兄貴はようやく家に帰る気になってくれたようだ。
 本当は今日くらい家でゆっくりしてもらいたかったけど……高橋組の若頭である兄貴には休んでいる間などないに等しいのだ。俺ごときが発言しても、兄貴の迷惑になるだけだ。
(とにかく家に帰れるんだからよしとしよう)
 家に着く頃には兄貴の誕生日はもう終わってるだろうけど……それでもせっかくの準備をムダにはしたくなかった。
 それに──俺はどうしても兄貴に「おめでとう」が言いたかった。
 大好きな人の誕生日を、絶対に祝ってあげたかったんだ……。

「お疲れ様でした」
 兄貴の家に帰り着いた俺は、玄関をくぐるまでずっと気を張りつめていたはずの兄貴に、ねぎらいの意味をこめてそう言った。
 俺は兄貴の家に帰ってきて玄関の鍵をかけたときに、この一言を言うようにしている(もちろん毎日だ)。兄貴は決まって「ああ」と答えてくれて、それを聞くと俺も『やっと1日が終わった』って気になる。
 兄貴ほどの人間は、いつどこで誰から命を狙われてもおかしくない。だから兄貴の側仕えである俺は兄貴の用心棒も兼ねている。
 そんな事情から、俺も兄貴と一緒にいるときは家に戻ってくるまで気を抜くことはできないんだ(もちろん家の中だって、100%安全とは言い切れないけどな)。
 最近俺は自分の家に帰っていない。仕事が長引くと家に帰ってくる時間も遅くなるし、「次の日のことを考えても都合がいいだろう」と言う兄貴の言葉に甘えて、いつも兄貴の家に泊めてもらっているんだ。……いわゆる『半同棲』って、やつ?(照れる〜〜!!)
 それでも兄貴が俺のことをウザく思わないように、俺の荷物はあまり持ち込まないようにしてるけど(一人の空間を大事にしてる人だから、自分の家に他人の物が増えるのは嫌だろうって思ってさ)。
 靴を脱ぎながら上着を脱ぎ始めた兄貴の背後に回り、上着を受け取りながら俺は頭の中でこれからのことを計算した。
(もうすぐデリバリーが届くはずだから……その間兄貴には部屋から出ていてもらわないと)
「兄貴、先に風呂入ってきてください。上がるまでに飯の仕度しておきますから」
「ん? ああ、そうだな」
 兄貴の家の風呂は全自動だから、設定さえしっかりしておけばいつでも好きなときに風呂に入れる。いつもタイマーを使っていて、帰ってくる頃には予定通り湯が沸いているから兄貴を待たせなくてすむんだ(料理は俺が失敗してときどき待たせてしまうことがあるけど)。
 兄貴が風呂に入ってしまった後、タオルと風呂あがりに着るだろうバスローブを用意して、俺はさっそく宴会場の準備を開始した。とはいえ2人だけの宴会だから、ハデに飾り立てるようなことはしなかったけど(兄貴、そういうごちゃごちゃしたのは嫌いだろうし)。
 テーブルに皿や箸(兄貴はナイフやフォークを使わない)を用意していると、花屋とフランス料理のデリバリーが立て続けにやって来て、頼んでおいたものを届けてくれた。──よし、これで必要なものはすべてそろった。
 兄貴が風呂から上がったのをドアの開く音で確認して、俺は最後の仕上げにかかる。
(料理よし、花束よし。プレゼントもあるし……あっ! ワインとブランデーが出てないっ!)
 慌てて冷蔵庫から2本を取り出してきてテーブルに置くと、電気を暗くしてロウソクを灯した。
 高鳴る胸を落ち着かせながらドアを見つめていると、いつものベッドルームほどの暗さのそこに、兄貴はゆったりとした動きで入ってきた。
「なんだ、どうした……」
 タオルで首筋を拭いながら部屋に足を踏み入れた兄貴は、目の前の光景に一瞬目を丸くした。だが、テーブルに並べられた数々の物を見て、合点がいったように苦笑した。
「誕生日、おめでとうございます」
 俺は手にしていた赤いバラの大きな花束とプレゼントを兄貴に渡し、ちょっと迷ったけど頬にキスをさせてもらった。──俺の精一杯の気持ちを、それにたっぷり込めて。
「……喜ぶような年じゃないがな」
 唇の端だけで笑いながら、俺が渡したプレゼントをさっそく開けてくれる。兄貴に似合うと思って選んできたものだったけど、こうして目の前で開けられるのはけっこう恥ずかしい。
「これは……」
 箱から出てきたのは、俺が全財産をはたいて買ったロレックスの時計だった。もちろんそのへんで売っているバッタ物じゃなくて、本物だ(……店で一番安いやつだったけど)。
 兄貴はこんなのより上等なやつをたくさん持ってるだろうけど、実際今使ってるのだってダイヤがいくつも入った高級品だけど、できれば俺が買ったのを毎日身につけてもらえたらいいなー……とか思ってさ(夢見すぎか、俺?)。
「安物ですみませんけど……」
 やっぱり兄貴の腕を飾るには安っぽかったか!? と俺が焦っていると、兄貴はためらいもしないですぐに時計をつけてくれて。
「シンプルなデザインでなかなかいいぞ。ありがとうな、市郎」
 俺の大好きな顔で笑ってくれて、俺はだらしなく泣き出しそうになってしまった。兄貴に喜んでもらえて、本当によかった…………。
「くっ、食いましょうかっっ」
 思いっきり照れくさくなって、俺は兄貴を食事の席にと急かした。兄貴は小さく笑ったまま、俺の言うことに従ってくれた。
 慣れない仕草でワインを開けようとした俺を制止して、兄貴自ら栓を抜いてくれて。
「誕生日おめでとうございました」
 ともう一度だけ言わせてもらってから、乾杯した。
 その日の夕飯中、俺も兄貴も仕事の話はいっさいしなかった。


「ごちそうさま。──うまかったぞ」
 デリバリーの食事を綺麗に平らげてくれた兄貴は、高級ワインも飲み干してようやく一心地ついたようだった。
「そうですか、よかった」
 俺は心の底からほっとして、なんだか肩の荷が下りたような気になった。
 こんなふうに面と向かって誰かの誕生日を祝うなんて、子供の頃からなかったから──こんなやり方で兄貴に喜んでもらえるのかどうか自信がなかったんだ。でも、兄貴が満足してくれたようで本当によかった。
 だけど、残った料理を俺が片付けているときに、ブランデーを飲みながらその様子をじっと見ていた兄貴の口から、信じられない言葉が飛び出したんだ。
「ケーキはないのか?」
「────え?」
「ケーキ。買ってないのか?」
 その、あまりに兄貴のイメージとはかけ離れた言葉に、俺は思わず頬張っていたステーキ肉を吹き出しそうになった。
(そんな……兄貴、ケーキは好きだったのか!?)
「すみません、兄貴甘いもの好きじゃないって思ってたから……買ってないです……っ」
 兄貴も俺も普段は甘いものを全然食わないからすっかり失念していた。──誕生日といったらケーキがなくちゃ始まらないじゃないか!!
「おっ、俺、今から買いに行って来ます!!」
 こんな時間にケーキ屋が開いてるとは思えないけど、兄貴がケーキを食いたいなら何が何でも探してこなければ!
 だけど兄貴は部屋を飛び出そうとした俺を引き止めると首を横に振って、
「あるじゃないか。でかいケーキが、そこに」
 手にしていたブランデーグラスをテーブルに置いて、じっと、俺を見つめてきた。 
「え……?」
 兄貴のあの視線って──俺を、見てるんだよな?
 それって、もしかして…………
(もしかしなくても、ケーキって……俺のこと?)
 そう思ったとたん、全身がかぁっと熱くなった。
 俺、変なこと考えてるか? いや、考えてるって自覚はあるけど……でも、兄貴も変なこと考えてるんだよなっ!?(失礼なこと言ってる!?)
 兄貴は俺の顔が真っ赤になったのを見て苦笑すると、
「……来いよ」
 自分が座っていた椅子を後ろに引いて、テーブルと椅子の間を大きく開けて俺に手招きした。
「は……い」
 俺はおずおずと兄貴に近づくと、椅子に座ったままの兄貴を前に立った。
 ゆっくりと頭を傾け、兄貴の顔の上に顔をかぶせる。
「兄貴…………」
 呟くように呼んでから、兄貴が顔を背けないでいてくれることを願いながら──ゆっくり唇を合わせた。
「ん……」
 ためらいながら舌を出し、兄貴の機嫌を伺うように兄貴の唇に触れさせると……固く閉ざされていた口が薄く開いて。
 俺は夢中になって兄貴の口内へと舌を忍ばせて、兄貴のテクに酔おうとした。
 舌の絡まり方でキスの名前も変わるんだよな、なんて妙に間の抜けたことを考えていたあたり、俺は相当酔っ払っていたんだろう。
 でなければ、椅子を跨いで兄貴の膝の上に座るなんて芸当ができるはずがないんだから。
「ん……兄貴、兄貴ぃ……」
 唇の端からだらだらとヨダレを垂らし、熱をもってうずきはじめた身体を逞しい胸にすりすりと擦りつけ。とっくに硬くなっていた股間を兄貴のそこへと密着させた。
「なんだ、このケーキは放っておいたら蕩けちまうのか。……だったら早いとこ食っちまわないとな」
 兄貴は俺に言うともなくそう言うと、俺の服を勢いよく捲り上げた。
「あっ……兄貴っ……」
「よく熟した苺があるじゃないか」
 呟きと共に、厚みのある舌が俺の乳首を根元からじっとりと舐め上げる。兄貴の唾液で湿った先端が外気に触れて、全身がぶるっと震えてしまった。
「あ……ん、っ」
 久しぶりの感触。最近忙しかったから、あまりセックスしてなかったんだった。
「もっと……もっと食べてください……」
 俺は兄貴の手の動きを待っていられずに、自分のズボンのベルトに手を伸ばして素早く外すと、ジッパーも速攻で下ろしてかちこちのチンコをあらわにした。
「ここも、触って……っ」
 ねだるように兄貴の手をそこに持っていくと、俺の乳首につけたままの口はそのままで兄貴は手を動かしてくれた。
 緩く握りこんだり、軽く擦られたり。かと思えば突然強い力で先端をぐりぐりと刺激されて、俺はびくびくと全身を震わせた。
「あ、兄貴も……っ」
 俺は兄貴のバスローブへと手を伸ばし、腰で結ばれていた紐を解くと滑らかな布地を肩からゆっくりと滑り落とした。
 がっちりとした兄貴の身体。パンツを穿いてなかったそこも、すっかり俺の目の前に晒されて。
 俺が描く理想の身体が目の前にあると思うと、それだけで喉が大きく鳴ってしまった。
「兄貴……」
 色っぽい身体の誘惑には勝てなくて、俺は兄貴に抱きついた。鼓動に合わせてぴくぴくと動く胸筋の動きにうっとりしながら、もっと触って欲しいという意思も込めて下半身を密着させた。
 すると、俺の太腿に兄貴の固くなり始めたそれが当たって……俺は左手だけを兄貴の背中から引きはがして、そこへと伸ばした。
「あ……兄貴も……大きい……」
 指先だけで触れた兄貴の亀頭は、破裂してしまいそうなほど膨れ上がっていて──それが兄貴の欲望だと思うと嬉しくて、俺は無我夢中で手を動かした。
「っ……あまり、いじるなよ」
 兄貴は俺の行動をとがめると、お返しとばかりにさらに激しい愛撫を俺の身体に刻み込み始めた。
「あっ……、や、そんっ、な……っ」
 唇と舌で乳首を、左手でペニスを。そして空いていた兄貴の右手は、すっかり丸出しとなっていた俺のケツを撫でてきて。
「あ・はやっ…ぃっ、くっ…」
 全然濡れていない太い指が、早急な動きでケツの穴を探ってくる。……もしかしたら兄貴も、俺のケツ穴が恋しかった?
 だけど久しぶりだったせいか、なかなか力が抜けなくて……
「あつっ……いた、いたいっす、兄貴っ」
 前ほどスムーズには穴が広がっていかずに、兄貴の指の侵入を阻んでしまった。
 兄貴は俺が垂れ流しているガマン汁を指に塗りたくり、それを中に入れようとしてくれるけど、それだけじゃ中を潤すことはできない。
 ベッドルームに行ってローションを取ってこようかと思い始めた俺に、兄貴は
「痛いのが好きだろ?」
 からかうようにそう言って、俺の腰をさらに自分のほうへと引き寄せてきて。俺はどうすることもできずに、兄貴にすべてを委ねようとした。……流血沙汰には、ならないよな?(ちょっと怖かったりして……)
 すると、俺の中に数センチだけ埋め込まれていた兄貴の指が突然出ていって、その直後に冷たいものをケツにひたっと当てられた。
 それからその『冷たいなにか』が俺の中へめりめりと入ってきて!!
「いたっ……!」
 いったい何事かと、しがみついていた兄貴の肩口から顔をほんの少し離して自分のケツを見るために首を動かした。
 すると────
「──えっ!?」
 な、なんと俺のケツの中には、さっき2人で飲み干した高級ワインのボトルの口が差し込まれていたんだ!!
「やっ、あにき……っ、つめた……!」
 驚いて腰を引こうとしたけど、兄貴に腰を押さえつけられていれば逃げることもできなくて。
「じっとしてろ。今によくなるさ」
 低い声に囁かれて、俺は兄貴の言葉を信じてそのままの体勢を崩さなかった。
 兄貴はボトルをゆっくりと俺の中へ埋め、それからまたゆっくりと抜く。
 動きを早めないままそれを繰り返し、俺の中に1本の道を作ろうとしているかのようだった。……うう、気持ち悪い。
 だけどそのままボトルをピストンされていると、突然ケツの中がかっと熱くなった。
(なっ、なんだ……?)
 びりっと電気が流されたような、兄貴の指やチンコで「感じるスポット」を突かれたような、そんな感じ。
 その後も続けてびりびりっときて、俺は思わず大きな声を上げていた。
「あにきっ、それっ…やめ・てっ!」
 膝ががくがくとなりはじめて、俺はとっさに兄貴の背中に爪を立ててしまった。だけど兄貴は痛みなんてちっとも感じていないみたいに、
「いいのか?」
 しらっとした声でそう言って、俺はようやくその電流の正体に思い当たった。
 そうだ、この感じは前にも味わったことがあるような気がしたけど──もしかしてボトルの口にワインがついていて、その熱がじわりじわりと内側に浸透していってスポットを刺激した……とか?
 そうとわかるとそれまであった恐怖心は吹き飛び、俺の唇からは甘い吐息しか出てこなくなった(ゲンキンな奴だからさ)。
「あつ……っ、熱い、兄貴……っ。なか、熱いっす……!」
「よくなってきたんだろう」
「あっ……はぃい!」
 ずっぷずっぷと入れられて、俺の中がどんどん広がっていく。
 もう、耐えられない。兄貴が……欲しい!
「挿れて……兄貴、太いの挿れて……っ」
 上ずった声で兄貴にねだり、願いを聞きいれてもらおうと必死に兄貴の指を締めつける。兄貴は俺を焦らすつもりでしばらく指を抜こうとしなかったけど、俺が兄貴のチンコを握っていた手に力を込めるとようやく指を抜いてくれた。
「せっかちな奴だな」
 そうは言ったけど、俺にはわかってる。兄貴のだって、俺の中に入りたくてうずうずしてるんだってこと……。
 俺は兄貴のチンコを握っていた手を離し、両手で自分の尻たぶを掴んだ。兄貴がチンコの先端を俺のアナルに押し当ててくれたのを感覚だけで確認すると、椅子に座るようにゆっくりと腰をおとしていった。
「あ……」
 久しぶりの太さ。久しぶりの硬さ。久しぶりの……真珠の刺激。
「相変わらず締まりのいいケツだ。ボトルで拡がっているはずなのにこんなに締め上げて……俺を挿れないつもりか?」
 笑いを含んだ声が俺の耳もとで囁き、ついでとばかりに耳から首筋までを舐め上げられて、俺は「あん……っ」と女のように喘いでしまう。
「そんなことっ……ない、です」
 意地悪な言葉に拗ねてみせたかったけど、そんな余裕は全然なくて。兄貴が欲しくて欲しくてたまらない──というのが本音なんだから当然なんだけど。
「あっ、あっ、兄貴……っ」
 ゆっくりと内側へ入ってくる兄貴の太いチンコは、時折抜き差しするように上下しながらずっずっと奥へ埋め込まれていく。
 痛みは感じないまま兄貴の腿の上に腰を下ろした俺は、圧迫感を紛らわせようと肩で大きく息をした。
 兄貴の太さに慣れようと、必死に収縮している内襞の動きを追っていると、
「どうした。動かないのか?」
 急くように兄貴が俺の身体を揺らして、まだ兄貴の太さに慣れきっていない俺のケツ穴は悲鳴を上げた。
「ぐあっっ、も、もう……ちょっと、」
「早く欲しいと言っていたのはお前だろう。ほら、動いて俺を気持ちよくさせてくれよ」
 兄貴は両足を交互に浮かせて容赦なく俺の身体を動かす。そのたびに兄貴を咥えこんだそこが兄貴のチンコに慣れようと緩まっていき、やがて湿ったような音を立てはじめた。
 その頃には俺の唇から洩れる声も、ただの獣じみた呻き声だけではなくなっていて…………
「あ、ん、あっ・あっ! 兄貴っ、あにっ、きっ!!」
 男のプライドも、恥も外聞もかなぐり捨てて、俺は兄貴のくれる快感だけに溺れていった。
「もっと、もっと! 兄貴、突いてっっ」
 俺が求めると、返事はしないものの兄貴の動きが激しくなる。──だけど兄貴はいつも俺の望み以上のことをしてくれる。
 ちょうど兄貴の顔の前に俺の首筋があったみたいで、兄貴は鎖骨のあたりに噛みついてきたんだ。
「ああああっっっ!!」
 条件反射的に身体が大きくしなり、そこを兄貴は支えてくれてさらに首筋に噛みついてきた。
 キスマークなんて軽いものじゃなく、痕が消えずに残りそうなくらい強く噛まれているんだろう。だけどその激痛すら、俺の快感を増幅させてくれる愛撫の1つでしかなかった。
「もっと噛んでっ! 兄貴、もっと!!」
 俺は自分からも腰を振りながら、首筋を突き出してさらに続きをしてくれと頼んだ。さすがにそれ以上深い傷をつけるつもりはなかったみたいで、兄貴は傷口を舐める程度でやめてしまったんだけど(本当に、もっと噛んでくれてもよかったのに……)。
「あはっ・はっ、あっん、あふっっ」
 ロウソクの炎がゆらゆら揺らめいているのが見える。まるで兄貴に揺さぶられている俺の身体のようだ。
 兄貴は俺に動くように言いながらも、自分も激しく腰を使ってくれて──座位で高速ピストンはさすがにできないけど、それでもかなりのスピードで俺の中をかき回してくれた。
「ぐぁっ、ああっっ! ぐ・うぅぅ……っ!!」
 吼えるような声を兄貴に聞かれてるんだと思うと、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。だけどそんなことを気にしているだけの余裕はない。
 セックスの間だけは、兄貴を感じることだけで俺の脳は支配されてしまうのだ。
「兄貴っ、兄貴ぃいいい!!」
 俺たちのつながった部分がぎっちゅぎっちゅと音をさせる。跳ね上がるように上下に動き、兄貴の肉棒を自分のケツへと突き刺す。
 壁に映った影も機械仕掛けのおもちゃのように跳ね上がる。なんてこっけいなんだ。……そう思ってもやめられないんだけど。
「あっ、も……! もう、だめ……っ」
 やがて急激に射精感が襲ってきて、俺は自分のチンコの根元を握りこんだ。
「でちゃ……出ちゃうっす!」
 尿道が膨れ上がるような感覚。ケツの穴がきゅっと締まって、兄貴の太いのを力強く締め上げてしまう。
 でも、今日はこのまま出してしまうわけにはいかない。だって、兄貴は高級なバスローブを着たままなんだから(正確には着ていなかったけど、俺がそのまま射精してしまったら、きっとしぶきで汚れてしまっていただろうから)。
「ちょっと待ってろ」
 兄貴はそう言うと、俺の腰に回していた右手を外してテーブルへと伸ばした。その手でブランデーグラスを取ると、中に残っていた液体をぐっと全部飲み干した。そして──
「ほら。出していいぞ」
 俺のチンコの先っぽにグラスを当てると、搾り取るような強さで幹を扱いてきて!!
「えっ!? そ、そん、なっ、あっ、あぁっ・あああああっっ!!」
 俺は驚きと快感に突き動かされるように、一気に射精してしまったのだった。
「……くっ」
 兄貴は一足先に果てた俺を支えたまま、俺の中にどくどくっと精をぶちまけてくれて……やがて大きく息をつくと、俺の精液を受け止めたブランデーグラスをじっくりと眺めた。
「大量だったな。相当溜まってたのか?」
 目の前に自分の吐き出したものを見せつけられるなんて死にそうに恥ずかしくて、俺は力の入らない身体を兄貴の膝の上からどかしながら、
「す、捨ててきますっ」
 とグラスを奪い取ろうとした。
 なのに兄貴ってばそれを、
「これもプレゼントだろ?」
 って言って──なんと、一気に飲んでしまったんだ!!!!
「────────!!??」
 絶句している俺の前で、兄貴はグラスを唇から離すと、
「うまかったぜ。最高の誕生日プレゼントだな」
 と笑い……俺は恥ずかしさのあまりそのまま気を失ってしまった……らしい。


ちょっぴし過激な行動に出た兄貴。誕生日おめでとう……。
キリ番ゲッター・ここあさんのリクエストでもあり。

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