■ 不器用者の恋 ■




「またのご来店をお待ちしております」
 ドアを開け、深々と頭を下げて俺を見送ってくれるボーイに軽く頷き通りに出る。週末だからか、目の前の通りを歩いている人の数はなかなか多かった。
「じゃあな」
 俺の後ろに続きドアの外まで出てきてくれたリョウジに声をかけると、リョウジは微笑みながら「はい」と答える。その声に見送られながら、裏道を通って帰ろうと何歩か足を進めたとき。
「遠藤さんっ!」
 背後から鋭く叫ぶ声が聞こえ、前に踏み出していた足が止まってしまう。
「……?」
何事かと振り返ると、今別れたばかりのリョウジが俺に駆け寄ってきていた。
「どうした?」
 たいした距離ではないものの、リョウジは軽く息を切らして俺の前に立つ。
 そして、すらりと長い足を包んでいたズボンのポケットに手を入れ、
「あの、これ……よかったらもらってくれませんか?」
 ポケットから引き抜いたときにはぐっと握り締めた拳を胸元まで持ってくると、もう片方の手で包み込んだ。
「なんだ?」
 何をくれるというのか、さっぱり見当のつかなかった俺は好奇心に駆られてリョウジに一歩近づいた。リョウジは俺が興味を示したことで決心がついたのか、大事そうに握り締めていた拳を開く。
「これは……?」
 その白い掌の上に乗っていたのは、キラキラと輝く小物……のようだった(そういう類の物には縁がないため、すぐには何かわからなかったが)。
 リョウジは掌のそれを指でいじり、黒い輪を摘んで持ち上げた。すると、掌で一つの塊のようになっていたそれは一本に繋がっていた。
 シルバーのチェーンのような輪と、緑色の石のようなもので作られた十字架が揺れている。
 俺がそれをまじまじと見つめていると、リョウジは俺の反応を窺うようにしながらくぐもった声で言った。
「携帯のストラップです。俺、最近自分でアクセサリー作るのに凝ってて……こ、こういうのだったら遠藤さんも普通に持てるかなって思って作ってみたんですけど……っ」
「…………」
「ご、ごめんなさい。俺男なのに、またこんな女みたいなことしちゃって……っ」
 黙っていた俺が怒っていると思ったらしく、リョウジは小さく肩を竦めて頭を下げた。


※ このアクセサリーはストーリーの随所に出てきます ※


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