◆ オスカー様の日記 ◆


 ×月○日

 今日は朝から気分が良かった。目覚ましが鳴る直前に目が覚めたし、髪のセットも一発で決まった。
 朝食で出されたカプチーノも濃すぎず薄すぎずで調度良かったし、玄関を出た直後に目が合ったレディも大層可愛かった。

 ……それなのに。
 なぜ、どうしてあいつと会ったとたんに不快なことが次々と襲いかかってきたのか。

 公園の木に水をやっていた庭師の男に盛大に水を引っ掛けられ、オリヴィエの邸宅に行けば侍従にコーヒーをぶっかけられ、さらには見目麗しいレディが大あくびしている現場を目撃してしまうなんて……!!
 ──そして、最終的に。
 踏んだり蹴ったりの連続に俺が意気消沈して歩いていると、不吉な予感を感じさせるものが目に飛び込んできたんだ。
 ちびっこ軍団がなにやらひそひそ話してるとは思っていたが、奴らは突然ジャンケンをはじめて、ジャンケンに負けたマルセルがちょろちょろっと俺に近づいてきて、
「あの、オスカー様……あ、頭に、白いものがついてますよ……?」
 と言ったんだ。
 すぐさま手を伸ばして髪に触れてみると、なんと手が触れた白いものは鳥のフンだった。しかも、まだ乾いていない状態のものだ!!(もしかしたらちびっこ軍団は、俺の頭に鳥がフンを落としていく現場を見ていたのかもしれない。なんて屈辱だ……!!)
 この俺が、全世界でも屈指の色男と称されているこのオスカー様が、頭に鳥のフンを落とされるとは……これはもうあいつの呪いとしか言いようがない。そうでなくて鳥のフンが俺の頭に当たるか? いや、当たるまい。
 まっ、まさかあいつ、クラヴィス様に教えてもらって俺を呪い殺そうとしてるんじゃないだろうな!?(クラヴィス様がそんな方法を知ってるかどうかはわからないが)

 リュミエール。温厚そうな仮面の下で、何を考えているかわからない男。
 こいつとだけは、一生そりが合わないままなんだろう……。




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