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お…どろいたぜ、マジで。
真剣な顔で急に「話がある」なんて言うから……別れ話されるのかと思っちまったじゃねぇかよ。
あ? おい、なに笑ってんだよ。
ちょーしこいてっと、ここでコマすぞ?
あー……つーか、よ。
言い争ってる場合じゃねえだろ?
ほら……せっかくお前がいろいろ話したんだからさ。
俺にも……言わせてくれよ。
初めてお前に会ったとき、ホント言うと「なんだこいつ」って思ったんだよな、俺も。顔はいいのに全然クラスに馴染もうとしないし、話しかけてくる奴にも妙に高飛車な態度だったし。
お前に邪険にされた奴らがお前のことなんて言ってたか知ってるか? 「愛想の悪いモンロー」だと。男子校だからなー頭の腐った奴もいるとは思ってたけど……あれはえげつねぇよな。
あ? 俺? 俺はそうは思わなかったぜ?
そうだな……せいぜい「すました黒猫」ってとこか?
ははは、ぴったりだろ? ……そうそう、そうやって横向いたとことかさ。
照れるなって。──可愛いぜ?
そういやさ。
お前がハヤりものに疎いんじゃないかってことはなんとなくはわかってたけど、ホントになんも知らないって聞かされたときはマジでびびったよ。テレビの人気番組も知らねぇ、売れてる芸能人も知らねぇって、「お前は年寄りかっ!」って感じでさ。
俺たちにとっては当たり前のものも、お前にとっては新鮮なものだったんだな。売れてるCD聞くことも、映画見に行くことも……ゲーセンとか行くのもさ。
こんな言い方したら、お前に対しても失礼だとは思うけど……お前の親はお前のことをどんなふうに育てたのかって、ホントに疑いたくなったよ。
だってよ、もしもお前を俺たちと同じような環境で育てたとしたら、きっとお前も周りとうまくやってきたはずだろ? 話も合ったはずだし愛想も良くなってただろうし……そうすれば普通に恋愛してただろうし。
俺としては、恋愛はしてこなくて良かったと思うけどさ。
ああ……ごめん。ちょっと──かなり、言いすぎたな。
え? そんなことないって?
……じゃ、謝るの、よすな。
はは、相変わらず自分勝手だなー俺ってば。……ごめんな。
言ったことなかったけどさ。
俺、お前の親に何度か忠告されたことあんだぜ。
「うちの息子に近づかないでください」って……「息子をあなたのような人とはつき合わせたくないんです」って、ぐっさりはっきり言ってくれたさ、お前のお袋さん。
一時期、お前のこと避けてたことあっただろ? あれってそのせいだったんだ。
自信なかったからさ、自分に。だから正面きって「俺はあんたたちの息子が好きだ」なんて言えなくて。
言ったらお前のほうが苦しい思いするだろうってこともわかってたしな。
……今だって、親の前で言えって言われたらためらうけど……それは自分に自信がないからじゃない。
今はまだ、そういうことを言うべき時期じゃないって……そう思うからさ。
信憑性っつーのかな。俺たちがどんなに真剣かって話したって血迷ったとか思われそうだし、それか「どうせ子供の戯言だ」って受け流されそうじゃねぇか? それって最高ムカつくし……だったらある程度の未来が現実になってからでも遅くないだろ?
俺たちの気持ちがどれくらい強いのか……しっかり伝わるようにさ。
新しい場所でどんなことがあるか、俺だってわかんねぇけど……けど、これだけは言えるよ。
俺はお前のことを1番に想ってるし、お前に何かあったらすぐに駆けつけてやる。
仕事放り出して……って、現実にはそうはいかないかもしれないけどさ。
だけど、気持ちとしてはいつもそう思ってるから。いつだって、お前のこと考えてるから。
だからお前も、離れてる間も俺のこと思ってろよ。
大学であったことや親に言われたこと……嬉しいことも悲しいことも、悔しいことだってなんでも聞いてやるから、思ってること全部俺に言えよ。
お前のことを1番に考えてんのは、俺なんだからさ。
いつか……お前は俺のものにするからな。
『もの』って、所有物とかそういう意味じゃなくてさ。なんつーの? 俺のも……じゃなくて、だな、そのー……。
……なんだよ。
……わ、笑うなよ。いいじゃねぇか、忘れちまったんだよ、言葉を!
──ったく。……俺の言いたいこと、わかるんだろ?
じゃ、言わなくてもいいな。
……もう、帰るか。
この教室にも、もう二度と来ることはないのかもな。
──だからって、忘れるなよ? ここであったいろんなこと……。
ここは俺たちが出会って、いろんな感情を育んできた場所なんだからさ。
あー、育んできたなんて……似合わねぇこと言っちまったな。
けど、まぁ……そういうことだから、絶対忘れるなよっ。
っと、ちょっと待てよ。
……最後に、キス……してくか?
大丈夫だって、もう誰もいねぇよ。
ほら、こっち来いよ。早く。
ん? なに赤くなってんだよ。
……恥ずかしいのか? ふっ、かわいい奴。
怒るなって、ほら……
………………っ。
ん、もう1回…………、、、
……………………。
……よかっただろ?
ここでこうするのも最後なんだから、そんなに恥ずかしがるなって。
──もう少し、こうしてようぜ。
お前の体温って、やっぱ気持ちいいな。落ち着くよ。
え? お前も? ……やっぱりな。
やっぱ俺たちって相性ばっちりなんだよ。
これからもずっと……愛してるからな。
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