続・誘い受け



 どうしてこんなことになってしまったのか……。
「部長、宮森さんがお呼びですよ〜〜っ」
 語尾にハートマークがたっぷり5個は張りついたような口調で、女性社員が俺を呼んだ。
 俺は内心ぐったりしつつ、彼女の声を無視することもできずにドアのほうに顔を向ける。
 そこに立っていたのは、ここ1ヵ月ほど俺を苦しませている元凶だった。
「お仕事中すみません、橘さん。ちょっとよろしいですか?」
 手にわざとらしくファイルなぞを持った宮森が、営業用のスマイルを振りまいていた。
「……すまない、ちょっと出てくるから」
 近くにいた男性社員に声をかけると、嫌々なのを周りに悟られないようにしつつ、宮森のあとについて歩きはじめる。
「急ぎの仕事があるんだ、用事があるなら早く済ませてくれよ」
「わかってます。……すぐ、イケますよ」
 意味深に笑った宮森は、誰も乗っていないエレベーターに乗り込んだ途端俺の股間に手を伸ばしたのだった。

 初めて会ったその日に、しかもトイレでチ○ポの上に乗られてから早1ヵ月。
 俺と宮森の関係は、恐ろしいことにずっと続いていた。
 出勤日である平日はほぼ毎日俺のいる販売促進部まで宮森が迎えに来て、第一営業部の特権ともいえる『私用で会議室を使う』を酷使しているのだった。
「やっ、やめてくれっっ」
 会議で利用するより頻繁に訪れるようになってしまった第5会議室に俺を連れ込むと、宮森はさっそく俺のベルトに手を伸ばしてきた。
「橘さん、昨日は外回りでいらっしゃらなかったから……俺、焦らされまくっちゃいましたよ」
『焦らしてなんかない!!』
 と叫べればどんなに楽か。だが部屋に面した廊下は、仕事中の社員がひっきりなしに歩いているはずだ。叫び声など上げてしまったら、何事かと鍵を開けて中に踏み込まれかねない。
「たかが1日やらなかったくらいで……」
「1日じゃないですよ。一昨日は俺が外出していたから、2日してないんです。もう忘れちゃったんですか?」
 1ヵ月の間にだいぶ上達した宮森の手の動きは止まらない。俺のモノを素早くパンツから取り出すと、指先だけで先っぽを揉みしだきはじめた。
 他人にいじられるという感覚をすっかり取り戻してしまった俺のチ○ポは、そうされるだけでむっくりと頭をもたげてくる。……こればっかりは男の性だ、自制しようとしても無理に決まってる。
 宮森は片手を自分のズボンに伸ばし、口を俺のチ○ポから離さないまま自分のネクタイを緩めてシャツの上から3番目のボタンまでを外した。それから器用にズボンとパンツを脱ぐ。ちらっと盗み見た宮森のチ○ポも、しっかりと勃起し涙まで流していた。
 未だにわからない。どうしてこいつは俺みたいなただの中年おやじに欲情するのか。どうせ抱いてもらうなら、顔も身体も立派な奴を選べばいいのに……。
「……舐めていいですか?」
 執拗にいじられたせいで完全に勃ち上がってしまった俺のチ○ポを両手で握りしめ、宮森は俺を見上げてきた。興奮しているのか、すでに息が荒い。
「……ああ」
 ここまできてやめるわけにはいかないだろうと、俺は宮森の後頭部に手を伸ばし、自分の股間に近づけた。
 すぐに熱く湿った感覚がチ○ポを包み、俺は思わず声を洩らしそうになってしまう。
「ああ…熱い……橘さんの……」
 熱に浮かされたような顔で俺のチ○ポを必死に舐めまくる宮森。カリの部分を丹念に舐めるのは、俺がこのあいだそこを舐められたときにうっかり射精してしまったからだろう。チ○ポの中ではそこが一番感じるんだ。
 イキそうになりながらも、なんとか気を紛らわせようと、宮森の髪をくしゃっと握りしめて宮森に声をかけた。
「俺のチ○ポは旨いか?」
「おいしいです…すごく……」
「男のくせにこいつが好きなんて変態だな、おまえは。ん?」
「そんな……ああ……っ」
 俺の言葉に感じたのか、宮森は小さく肩を揺らすとたまらなげな声を上げた。こいつのしぐさはいちいち色っぽい。なぜだ?
「も、もう……我慢できないですっ!」
 宮森は叫ぶように言うと突然俺の上に跨がり、潤んだ目で俺を見下ろしてきた。緩んだネクタイとはだけられたシャツの奥に見える肌の色が艶かしくて、俺は目の前のシャツを脱がせにかかった。
 うっすらと汗をかいた身体は、直に触れるとかなり体温が上がっている。俺は迷わず乳首に吸い付き、舌先を固くしてしこった粒を転がした。
「あっ、橘さんっ……」
 女のそれよりはるかに小さい乳首でも十分感じるらしい。宮森は背を少し逸らせて俺のほうに胸をつきだすと、自分の人指し指の第2関節部分を嚼んで声を洩らさないようにした。
 眉を寄せた顔がいやらしい。本当にこいつは男なのか? ……俺と同じモノがついてるんだから考える余地もないが。
 両腕に力を入れて俺に抱きつく。俺の舌の動きに合わせて吐息を洩らす。……宮森の顔に、そそられる。
 部屋中にぬめった音が響き、その音をさらに響かせるために俺は舌を動かした。
 やがて宮森は腰を浮かし、自分で自分の尻を開いて俺のチ○ポにアナルを当てた。
「挿れて……いい?」
 唇の端から唾液を垂らし、はぁはぁと息をつく宮森は恐ろしいほど色っぽかった。
 俺は宮森の腰を掴み、1ヵ月の間に幾度となく侵入した密壺にチ○ポを少し含ませた。そこがチ○ポを抵抗なく受け止めたのを確認してから、間髪いれずに腰を下へと引きずり落とし、宮森は急激な圧迫感からか喉を引くつかせた。
「うっく…っ」
 ぎゅうっっと、宮森の中が締めつけてくる。恐ろしいくらいの吸着力に、俺の腰もじんと痺れる。
 それから数分かけて、ようやく強ばった尻の筋肉を柔らかくした宮森は、自分から腰を振って動いて欲しいと伝えてきた。
 俺は下半身をうまいこと使って、自分よりちょっと軽いだけの宮森の身体をゆっくりと上下に揺すった。
「あっいいっ」
 思わず洩れてしまったふうな宮森の言葉に、俺の心臓はつきんっと飛び跳ねた。『いい』と言われるのは、幾つになっても嬉しいものなんだな。
 宮森の陰毛が、俺の臍の下あたりを擦る。むず痒いような、変な感じだ。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
 規則正しく洩れる宮森の声が次第に大きくなる。俺は宮森の声を唇ごと奪い、さらに下からの振動を送ってやった。
「っ、っ、っ、っっ!」
 宮森がさらに俺にしがみついてきて、俺たちは隙間もなくなるほど身体を擦り寄せあった。
 じゅぷっじゅぷっと音をたてながら、俺のチ○ポの根元まで生暖かい汁が流れてくる。ズボンまで流れてきそうで焦ったが、今さら体勢を変えることは無理だった。
「いい、橘さんっ! 気持ちいいっ!!」
 チ○ポを突っ込まれることに夢中になっている宮森は、全神経を下半身に集中させて感じまくっていた。
「男がそんなに好きか。ええ?」
「あっ、ちがっ、……た、橘さんだから……っ、橘さんだからいいんですっ!」
「俺のチ○ポだけが好きなのか?」
「は、いっ……俺、男は……橘さんが初めてだから……っ!!」
 初めて聞く話に、俺は耳を疑った。こんなにきゅうきゅう男を締め上げる技を持ってる奴が、男は初めてだって?
「初めてって……チ○ポを突っ込まれるのが?」
「そうです、あっ!! そこ……あっ……ん!」
 俺のくびれがいいところに当たったのか、びくんっと大きく竦みあがった宮森は、その場所をもう一度探すように微妙に身体を落とす位置を変える。
「あ、ここっ……橘さん、ここ、いい…っ!」
 腰を振って、俺のチ○ポにスポットを擦りつけてくる。俺はその動きの手助けをするように、宮森が一際高い声を上げる場所を的確に攻めた。
 男とやりなれた奴ならば、自分のいい場所くらい知っていてもおかしくないだろう。本当に俺が初めてだというならば、知らなくても頷けるが。
(……そうか)
 胸に昂揚感が込み上げてくる。俺は宮森の身体を抱きかかえ直すと、一層力強く揺さぶった。
 ただの興味本位で近づいてきていたと思っていた心が、少しずつ融解していく。
 自分と同性の男の俺に身身体を開いてもいいと思う程度には──こいつは本気で俺のことを好きなんだ。
(このいやらしい顔も、自然に腰を振ってしまう様も……演技ではないのだな)
 そんなことを考えていると、宮森が愛しいような不思議な感情が芽生えてきそうだった。
 俺が何を考えているのか想像もできないほどセックスにのめり込んでいた宮森は、全身を小刻みに振るわせはじめていた。
「いいっ、イクッ、イクッ、あっ、ダメッ、出ちゃうっ!」
 弾むような声で言うのが聞こえ、俺は慌ててポケットからハンカチを取り出した。
「ちょっと待て、今──」
 スーツを汚されたらたまらないと、宮森のチ○ポに当ててやろうとしたが。
「やぁ……っ」
 宮森はか細い声で啼くと、びゅるるっと勢いよく精液を発射させてしまったのだった。
 それはスーツだけでなく、俺と宮森の顔にも大量に飛んできて。
「ご……ごめんなさい、汚しちゃって……」
 全身で息をする宮森の様子が妙に可愛く見えてしまった俺は、精液を飛ばされたことを咎めるためでなく口を開いた。
「いいから、とりあえず手伝ってくれよ。俺はまだいけてないんだ」
 宮森の中から押し出されてしまった俺のチ○ポは、いきたがって痛いほど膨張しきっていた。宮森はよろけながらも俺の上から退くと、再び床に膝をついてチ○ポへと唇を寄せてきた。
 さっきよりも緩慢な舌の動きが、さっきとは違う刺激を俺のチ○ポに伝えてくる。
「くっ……いくぞ……っ」
 いく寸前で止められていたためすぐに射精感に襲われ、俺はチ○ポを宮森の口から引き離すと2、3度扱いてから発射した。
「あっ……」
 2日しなかっただけでそれなりに溜まっていたようで、俺の精液も宮森の顔をしとどに濡らした。口を半開きにしてそれを受け止めた宮森は、餓えているように喉を鳴らした。
 俺は肩で息をしながら、自分の顔に飛んでいた宮森の精液をハンカチで拭った。
「どうすんだ、これ……」
 すでにスーツに染み込んでしまっていた宮森の精液は、濡らしたハンカチで叩いたところで隠しようがなさそうだった。いい年をした男の股間についている白いシミを、ヨーグルトや牛乳の汚れだと思う奴は少ないだろう。
 宮森は顔に飛んでいた精液を指で拭って舐めつつ、俺の言葉に誘うような笑みで答えた。
「それじゃあ今から……スーツを買いに行きましょうか?」
 精液の飛び散った顔で何を言ってるんだと笑い飛ばしたかったが、なぜだかそんな顔すら可愛く見えて。
 俺は「ああ」と返事をしていたのだった。
 スーツを買いに行くだけですまないのは、宮森の表情でわかっていたが──俺は仕事を放り出し、宮森と出かけることを承諾していた。
(ホテルでするのなんて何年ぶりだろう)なんてことを考えながら。


少しは変化した?

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