生徒×先生 part3(後編)
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「んは……ん、んぐ、んっ、んんっ」 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」 僕と徹の荒い息遣いと、徹を愛撫する湿った音が室内に響く。僕の自堕落な生活のせいで荒れた雰囲気に包まれていた家の中が、久しぶりに淫らな空気で満たされていく。 そのことに僕はどんどん興奮してしまって……今までにないほど息を乱しながら、徹を気持ち良くさせるために拙い舌技を繰り返した。 「先生……っ」 頭上から切迫した声が聞こえてきて、僕の後頭部を大きな掌が覆ってくる。それが徹が感じてくれている証のようで、僕はさらに必死になって頭を前後させた。 脳裏には、限界まで張り詰めた徹のモノを思い浮かべながら……。 「先生、もう……よしてください。これ以上は──っ」 切羽詰ったような声が僕の動きを制そうとする。僕は名残惜しく思いながら咥え込んでいた熱を口中からずるりと引き抜き、唇の端から唾液が流れていくのも構わずに徹に話し掛けた。 「…………出ちゃう?」 「あ、は──はい」 「出してもいいよ? いつもみたいに……飲ませて?」 「えっ、ええっっ!?」 久しぶりに徹の苦味を喉の奥で感じたい。そう思って、手の中に収めたままだった熱を軽く上下に扱きながら言ったんだけど、 「そ、それだけは駄目ですっ!」 徹は僕の両手を振り払い、身体を引きながら頑なに射精することを拒んで。僕はほんの少しだけ、徹の様子がおかしいと思ったんだった。 いつもだったら、僕が『飲んだほうがいい?』って聞くと絶対『ああ』って答えるのに…………こんなふうに身体を離すなんて、いったいどうしたんだろう? だけど、そのことを深く考えるほど僕の思考は働いていなくて。 「じゃあ……もう、挿れて……?」 掠れて仕方ない声をようやく搾り出してそう言うと、徹の熱がゆっくり引いていく自分の掌をズボンにかけた。 「せ、せせっ──先生っ!!??」 「徹が欲しい……欲しいんだ…………」 部屋着のズボンと下着を、窮屈になっていた部分に引っ掛からないようにしながら膝まで下ろす。その状態で軽く徹を見上げると、彼の視線が僕の下腹部に向けられているのに気づく。 外気に晒され、その中でもすうっと冷たいような感覚を発している箇所を──じっと見つめられている。 「徹…………」 「あ、せんせい……っ?」 強い視線を注がれている場所に自分の掌を当て、軽く握り込むとゆっくり扱く。溢れ出していた液体が手にまとわりつき、湿った音を響かせる。 「ん……徹……」 そして僕は徹に見つめられている前で四つん這いの体勢になって……じりじりと膝を動かして徹に背を向けると、自分を握り締めていた掌をひくついていたその部分に伸ばした。 「ん……ぁぁ……」 ぬるついた液体が僕の指をスムーズに中に運んでくれる。二度、三度と抜き差しを繰り返すと、そのたびにその場所はひくつきながらも解れていく。 初めて徹がこうしてくれたときのことを思い出しながら、彼の指先の動きを反芻するように──ゆっくり、ゆっくり動かして。 それを繰り返しているうちに身体の奥の熱がどんどん高まって、その熱を吐き出すように上擦った声で嘆願していた。 徹を最も熱く感じることができる──あの行為を。 「おね、お願い……徹っ」 「白木先生……?」 「い、挿れて……っ」 「えっ?」 「早く、早く挿れてっ、徹の熱いの──ここに……っ!」 腰を高く上げて、ひくついた場所を曝け出すとねだるように高い声を上げる。そして内部に埋め込んでいた指を引き抜くと、その指で窄まりを拡げて誘う。 「ここ、ここに──っ!」 「…………っ!!!!」 僕のとった行動に激しく驚いたのか、徹が大きく身を引くのが気配でわかった。はしたない僕の行動に幻滅……しているのかもしれない。 でも、ここまできて引き下がることなんてできない。こんな姿まで晒しておいて本懐が遂げられないなんて──生き恥を晒しただけと同じだ。 それに徹だって本心では思ってるはずだ。…………僕の中に熱を埋めたいって。 「あ……あ、徹……っ」 「────」 「早く来て、もう……待てないよ……っ」 「〜〜〜〜!!!!」 何度も繰り返し懇願したのがよかったのか、それともその逆で僕の声を黙らせたかったのか……徹の心境はわからないけれど、とにかくようやく動いてくれたんだ。 「知りませんよ、先生……っ!」 徹はそんな言葉と共に僕に近づいてくると、突き出したままの僕の腰を掴む。 「行きますよ──」 そして、入り口にぬるんだものが押し当てられたと思った次の瞬間には、それはずずっと一気に入ってきた。 「あ、あ……ああ、あああっっ!!」 久しぶりの挿入で入り口に痛みが走り、その感覚に慣らされていたはずの身体が悲鳴を上げて埋め込まれた太いものを押し戻そうと内壁が収縮する。 「あ……あ、あ…………ぁ」 けれどそのうちにその熱が幾度となく入り込んできたものだと気づいたのか、抵抗しようと働いていた力が抜けていき──徹を締めつけていた襞が熱塊に馴染んでいく。 「ああ……すご……とお、る……っ!」 渇望していた熱がじわじわと僕の身体を熱くしていく。徹の動きが僕を無我の境地に追い込んでいく。 「んぁ……あ、あ……い、いい……とおる……すご、いっ、ああぅっ!」 体内に湧き上がる疼きに呼応するように、口から蕩けたような甘い声が洩れてしまう。こんな声を上げていたら、きっと徹にも僕が全身で喜悦に悶えているのはバレバレなんだろう。 でも、そうわかっていても止まらない。声も、身体の動きも──。 「もっ、もっと……! ついて、突いて、そこ……ぉ、おっ!!」 内部を突き破りそうなほどの力強い攻め。突き立てられる徹の凶器が狂おしいほど気持ちよくて、絨毯に爪を立てながらさらに腰を突き出す。 その瞬間、突然強い力で腰を掴まれ急に身体を反転されて──気づけば徹に組み敷かれるような体勢になっていた。 「白木先生……!!」 「あんっ! ん、はぁっ、あっぁっ!」 僕に覆い被さるように身体を倒してきた徹は、密着度を高めるように腰を揺すり上げながら僕の身体を抱き締めるように背中の下に腕を潜り込ませてきて。 その腕にぐっと力が入ったような気がしたとき、僕はなりふり構わず徹の背を掻き抱いていた。 (やっと帰ってきてくれた……) ずっとずっと待っていた。こうして抱き締めることができる日がまたくると、ずっと信じて待ち続けていた。 その僕の想いを、徹はようやく受け入れてくれたんだ。……また僕を抱き締めてみようって気になってくれたんだ。 それが、以前とは違う感情を抱いている徹だとしても──今はそんなことまで考えられない。 気にしてしまったら、きっとこの行為を素直に喜ぶことができなくなってしまうから……。 「はぁ、ぁ…………」 だらしなく開いた唇から荒い息と共に舌先を突き出し、徹の目に留まるように小刻みに揺らす。すると徹はすぐに気づいたらしく、僕が求めたものを与えてくれた。 「ん……っ」 開けられた口が僕の唇をすっぽりと覆うように重なってきて、そのまま強く吸い上げられる。尖端だけ出していた舌は強い吸引力で完全に口から引きずり出され、そこに厚い舌が絡みついてくる。 「んんんっ」 息苦しさを堪えて僕も徹の舌を捕えようと必死に舌を動かす。生暖かいぬめりに乗った舌の動きと、下から突き上げられる動きが不規則に僕の身体を乱し、翻弄していく。 そしてそれは息苦しくなった徹が口を離してしまうまで続いて。 「はぁっ」 「んぁ……ん、ん、ぁあ……っ」 唇は解放されたものの下からの突き上げは続いて、僕の身体はまるで際限のない快楽に呑み込まれたようだった。久しぶりにこんな感覚を味わえたのも、やはり徹のおかげなんだ……。 「白木先生……」 熱く湿った声が僕を呼ぶ。その声に、そうではないと首を振ってしまう。 「せんせ……じゃなくて、あっ、んっ、なまえ──名前で、呼んで……っ」 以前のように。いつも自分を呼んでくれていたその声が欲しいと、しがみついていた身体に懇願する。 セックスしているときの徹の声────掠れたような低い声が大好きだから。 「徹……っ」 「っ」 徹は身体を揺らし続けながらも僕の願いに応えようか迷ったらしく、しばらくの間は唇を噛み締めて鼻で荒々しく息をついていた。 それでもようやく決心してくれたのか、その口が開いたときに……僕が望んだ言葉が洩れたんだ。 「……由依っ」 喉の奥から絞り出すような声。だけど幻じゃなく、しっかり僕の耳に入ってきた音。 「徹、徹!」 「由依!」 「好き、大好き! もっとして、もっと────激しくして、とおるっっ!」 「ゆい……ゆ・いっ!!」 名前を呼び合い、抱き合った身体の密着度をさらに上げるかのように両手足を絡ませ合う。汗の浮かんだ肌が滑り合う感触さえ気持ちよくて、僕は夢中で徹に浅ましい声を聞かせ続けた。 「あぁ・ん!! あん、そこ、そこいいっ、徹!」 「ここか? ここがいいのか?」 「そっ、そこ、ぉ、ん、ぁっ、ああ、ああっ!」 「由依!」 「ひぃ・ぃ、あっああぁ……っ!」 僕の求めに応じ、強靱な肉体は一定の角度を保って前後に腰を揺らし続けてくれる。その動きに振り落とされないようにと、揺れる腰に巻き付けた僕の足にもいっそう力がこもる。これ以上、1ミリだって離れたくない……!! 「どこにも行かないでっ、もう僕を1人にしないで……っ!」 「由依、由依……!!」 「徹・ぅっ、んはっ、はぁっ、あぁっ!」 「行かない──行かないよ、由依」 「ほ、本当っ? ホント、徹っ、っ!」 「ああ」 「う、嬉し、ぃ、いっちゃ……いっちゃう、いっちゃうぅぅっ……!!」 徹の言葉に安堵した身体に鳥肌が立ち、限界まで膨らんだ熱が解放を訴える。 「可愛いよ、由依」 そう呟かれて熱を扱かれて、目の前に弾けた光にすべての感覚を手放した。 「あぁああああ!!!!」 今までに上げたことがないような嬌声を上げながら吐精してしまうと、急激に意識が遠のいていく。 「由依……」 僕の名を呼ぶ低い声に全身の力が抜けるほどの脱力感を感じながら、僕はそのまま意識を手放していた。 それからどれくらい時間が経ったのか──ふと目が覚めたとき、真っ先に耳に飛び込んできたのは騒々しいテレビの音だった。 ひどく重く感じる身体を小さく動かすと、自分が横たわっている場所がベッドとは違った感触だと気づく。これは……リビングのソファだ。 「………………」 身体を起こそうとしたものの強い疲労感からそれは叶わず、カタカタと音のしているほうにぼやけた視線を動かすと、リビングに隣接しているキッチンに大柄な人影が見えた。 全裸のままの僕とは反対に、この家に来たときの服装でなにやら動いているその人物に、僕は奇妙な不安に駆られて声を掛けた。 …………自分の不安が的中するなどとは露ほども思わずに。 「とおる……?」 力の抜けた掠れた声はテレビの音に掻き消されてしまうかと思ったけれど、僕の声をしっかり聞きとめてくれたのかふいに人影が振り返る。そして足早にリビングに入ってくると、寝そべったままの僕に近づいてくる。 「──……?」 (徹……?) 見下ろしてくる視線に強い違和感を感じる。眼鏡がないからはっきりとは見えないけれど、徹はこんな笑みを浮かべたことがあっただろうか。 「気がつかれましたか?」 丁寧な言葉遣い。よく聞くと、聞き慣れた声とは違う響きを持つ声質。 「大丈夫ですか、白木先生?」 「あ…………」 そのときになってようやく、僕はそこにいる人物が自分の待ち望んでいた者と別人だということに気づいたのだった。 「立浪先生……」 「ああ、よかった。僕だって気づいてもらえてなかったみたいなので心配してたんですよ。具合はどうですか? 気持ち悪くないですか?」 そう、その人物は僕の職場の同僚で体育教師の──立浪先生だったんだ。 「随分とお酒を呑んでいらっしゃったようですが、もう大丈夫ですか?」 「あ……ぼ、くは…………」 「今ホットミルクを作ってますから、ちょっと待っていてくださいね。──あ、勝手に台所借りちゃってすみません」 「え? い、いえ……」 僕と年が近くて、何かと相談に乗ってもらう機会が多かった。教職員の集まりでも、人と接するのが苦手な僕の相手をしてくれて……。 『気さくな性格で誰とでもすぐに親しくなれるのが特技』だと言っていた彼に、いつしか僕もなんのてらいもなく話し掛けることができるようになっていた。……そんな立浪先生が、どうして僕の家に? いや──そんなことよりも、もっと危惧しなければならないことがあるはずだ。 (……もしかして、僕がさっき抱きついたのは──) 抱きついただけじゃない。みっともなく縋りついて、『抱いて』と迫って……欲望を押しつけてこの身体を受け止めさせた相手は、まさか────。 「あ、まだ起き上がらないほうがいいですよ。熱もあるんですから」 「え……」 「ああ、そうだ。先に着替えなきゃいけませんね。そのままだとさらに熱が上がってしまう」 容易に受け入れられない結論に混乱して身体を起こそうとしたものの、力強い腕がそれを制止してくる。 「大丈夫ですよ。体調が回復されるまでは、私が看病しますから」 目を細め、口元に笑みを浮かべた彼の唇が近づいてきて自分のそこに触れるのを、僕は瞬きもせずに受け入れたのだった。 |
うぉ〜い何やってんだ白木ぃ!!(泣)
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