誘い受け・バレンタイン編
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「橘部長」 提出された書類に目を通していると上から声をかけられて、俺はいつものように「なんだ?」と返事をしながら顔を上げた。 そこには上のフロアの女子社員が立っていて(1日に何度か顔を合わせる人物だったから覚えていたが、接触のない女子社員の顔はいちいち覚えられない)、 「これ、うちの課の女子からです。受け取ってください」 と、青い包装紙に包まれた箱を差し出してきた。 「ああ……ありがとう」 これでまた『お返し』をしなければならならない相手が増えたと内心溜め息をつきながら、それでも極力笑顔を引きつらせないように気をつかって笑いかける。すると、その女子社員は不自然なまでに顔を赤くして「じゃあ、失礼しますっ」と言って立ち去った。 (小芝居のオプションつきとは芸が細かいな……) あの程度のことでも舞い上がらんばかりに喜ぶ中年幹部は山のようにいるからなーうちの会社には、なんて冷静に分析できるあたり、俺にはその連中が味わっている喜びなんてのは芽生えてきそうになかった。 なんせ女子社員が浮足立っている様子で、今日がバレンタインデーだということに気づいたくらいだ。 ──しかし、今年の俺にとってバレンタインは他人事ではなかった。 なぜなら…… 「……また睨んでるしよぉ……」 さっき仕事に戻らせたはずの男が、一時間も経たずにさっきと同じ場所──俺の席がよく見える、出入り口の左側のドアから顔の半分をチラチラと出していた──に舞い戻ってきていて。 そいつが俺を激しく睨みつけているから、というのが最たる理由であるのは間違いないだろう。 明日が土曜日だということもあり、宮森は当然のように俺の家にやって来た。 両手には重そうな紙袋が2つ。きっと女子社員が個人でくれた分もあるんだろう。 最近の若い奴はどんなものをプレゼントするのかとにわかに興味を持った俺は、飯を食ってから一息ついているときに 「そのチョコの山開けてみたらどうだ?」 と宮森を促した。 だが宮森は、自分がもらったチョコではなく、なぜか俺がもらった義理チョコを片っ端から開け始めたのだ。 その横顔はどこか鬼気迫るものがあって──うかつに声をかけたらまずいような気がして、俺は自分から話しかけるのをやめた。 そして、 (こういうときの宮森は何を言い出すかわからないんだよな〜) 酒を飲みながら『触らぬ神に崇りなし』と思っていた俺の予想を外さず、(実は)エリートのくせに頭のネジが何本か外れてるような思考の持ち主のそいつは 「橘さん、今日もらったチョコが全部義理チョコだと思ってないでしょうね?」 と意味不明なことをほざいて、俺は本気で(こいつ、どっかおかしいんじゃ……)なんて思ったんだった。 「あ? 全部義理チョコに決まってるだろうが。どれもこれも『○○部署一同』って書いてあるからな」 無残に破り捨てられた包装紙の一つにでかでかと書かれていたそれを見せつけてやったが、宮森はくわっと目を見開いて俺に檄を飛ばしてきて。 「わかってないなぁ橘さんは! そうやって書いてあっても、明らかに値段の高いやつはその部署に橘さんに気のある女がいるってことですよ! ほら、これなんてチョコの他にハンカチなんかついてる! こんなのつけてくるなんて、これを買ってきた女は絶対橘さんのことが好きだってことですよ! 皆から徴収した金じゃ足りないはずですもん!! あっ! これもブランド物のライターなんてついてる!! くっそ〜、秘書課にも橘さんに色目使おうとしてる奴がいるのかぁああ!!」 まるでどこかの推理好きのようにそこまでを解析(いや、妄想か?)すると、憎々しげに包みの数々を睨む。そんな宮森に呆れながらも、子供のような独占欲を丸出しにする様子はちょっとおかしくて、ついつい口元に笑いが浮かんでしまう。 「おいおい……俺よりお前のがたくさんもらってるだろ? 部署からだけじゃなくて個人とかでもさ」 バレンタインなんてのは若い連中のためにあるようなものだ。このイベントを利用しようと考える若い女が宮森に本命チョコを渡していたとしてもなんら不思議はない。 だが宮森は、唇を尖らせて拗ねるように言い返してきた。 「俺、今年は義理チョコしか受け取りませんでしたから」 「──は?」 「去年までは一応全部受け取ってましたけど、今年は気持ちのこもった物は断りました。だって、俺には橘さんがいますから!」 「…………」 「だから橘さんも、義理チョコ以外は断ってくれると思ってたのに……」 いつの間にか俺の家に置かれていた、妙にファンシーなパジャマを着込んだ宮森が、これ見よがしに目をうるうるとさせる。 「……って、お前なぁ……」 (──だから、どうしてお前は女と同列の考え方をするんだ?) 本命だろうが義理だろうが、チョコを受け取るだけならそこに深い感情なんて湧かないものだ。女はそういうのがわからずに嫉妬するかもしれないが、少なくとも俺と同じようにチョコをもらってる男のこいつがどうして妬くんだ? とはいえ、そんなことを言っても頭に血が昇ったこいつには通用しないだろうと、俺は咄嗟に思いついたでまかせをそれらしく聞かせてやったのだった。 「俺はどれも本命チョコだと思わなかったからもらってきたんだ。わかってたらお前みたいにもらわなかったさ。そんなのは当然だろ?」 とりあえず宮森の溜飲を下げるためにそう言ってやると、昂ぶった気持ちがようやく落ち着いたのか足の先でぐちゃぐちゃにしていた包装紙から力を抜く(ガキみたいなことしやがって……)。 「そう……そうですよね。俺というものがありながら、橘さんが他の女に見向きすることなんてないですよね」 自分自身に言い聞かせるようにそんな恐ろしい言葉を唱え、 「でも、もう少し警戒心持ってくださいね、橘さん。橘さんが離婚されてから、本気で橘さんのこと狙ってる奴ってすっごく増えてるんですからっ」 鼻息を荒くして俺に忠告すると、甘えるように俺の身体に擦り寄ってきた。……ガキっつーより犬だな、こりゃ。 「俺も橘さんにチョコ買ってきたかったんですけど……でもあの女だらけの中に入ってくのはやっぱり恥ずかしくて……」 「いいさ、その気持ちだけで」 本当に買ってこられてもきっと困っただろうし……なにより、こいつも人並みの羞恥心を持ってるんだとわかっただけでほっとした俺は、宮森が手の中で転がしていた箱の一つを奪い取って開けた。 中に入っていたのは親指の頭ほどの大きさのチョコで──その一つを摘まんで自分の口に放り込む。 「た、橘さん?」 突然チョコを食べ始めた俺に、とまどったような声を上げる宮森。その宮森の視線をじっと絡めとりつつ、俺は口の中でじわじわと溶け始めたそれを舌先に置いた。そして宮森の身体を抱き寄せ── 「えっ?」 細い顎を捕えて唇を重ね、頬においた親指と人差し指を使って唇を開かせて……そのままチョコごと舌をねじ込んだ。 「ん……ん、ぅ……」 突然押し込まれた甘さに驚いた身体が一瞬跳ね上がる。そこをしっかり押さえつけ執拗に舌を動かしてやると、観念したように宮森の舌も俺の動きに応えてくる。 お互いの口中にチョコの濃厚な甘さが広がり、いつものキスとは一味も二味も違った感覚をもたらしてくれる。 「はぁ……っ」 俺の口の中へと滑り込んできた宮森の舌が、半分くらいの大きさになったチョコを戻してきた。俺はすかさずそのチョコを宮森の口の中に押し戻し、『もっと味わえ』とばかりに宮森の口腔でチョコを転がした。……実はあまり甘いものは得意じゃないんだ。 (よく海外の映画なんかでこういうのを見たりするが、なかなか興奮するものなんだな) チョコの味に酔ったようにとろんと目蓋を落としている宮森。さっきまでの怒りはどこへやら、すっかりスケベな気分になっちまってるようだ。 チョコが溶けきったのを確認してから唇を離してやると、もう一つ食べたいのかチョコの箱に手を伸ばそうとした。 その手を制止して(甘ったるいのはもう充分だったから)掴んだ手首を俺の胸元へと導いてやり、 「脱がせてくれよ」 チョコではなく俺の身体に興味をひきつけると、宮森がぽっと顔を赤くした。 「橘さん……」 俺がそんなことを言うのは珍しいからか新たな誘惑にまんまとチョコを忘れてくれたらしく、俺の背中に回していたもう片方の手も使ってシャツのボタンを外しはじめた。俺もその動きに合わせて宮森のシャツを脱がせにかかり、これまたいつのまにか俺の家に置かれていたトランクスも一気に剥ぎ取った。 薄布の下から跳び出してきたチ○ポは完勃ちで、ちょっと触ると湿った感触がした。 「あ!」 その頃ようやく俺のシャツのボタンを全部外した宮森は、露になった俺の胸板に顔を押しつけると自分のチ○ポに与えられている刺激に身を捩った。 「あ……あ、あぁ……っ」 手の動きを早めていくと、宮森の息遣いと声がだんだん大きくなっていく。こうなってくると、我を忘れて嬌声を上げはじめるのも近いってことだ。 「橘さぁ……ん」 甘えたような声を上げ、キスをねだるように唇を突き出してくる宮森。女にそんなことをされれば一気に興ざめしているところだが(積極的に動かれるのはあまり好きじゃないんだ)、こいつの場合はなんとなく許せてしまうのはなぜだろう? 望みどおりの深い口づけを加えながら、右手で胸元、左手でチ○ポをいじってやる。快感に全身を波立たせながらそれでもさらに気持ちよくなろうとしている宮森に、俺はちょっとした意地悪を考えついてしまう。 (ちょうどいいものがあるじゃねえか……) ふと流した視線の先にすぐに使えそうなものを発見し、チ○ポを扱いていた左手を離して床に落ちていたそれを掴む。そして、今にもはちきれんばかりに膨れ上がった宮森のチ○ポに、俺はそれをぐるぐるに巻きつけた。──包装紙にかけられていたビニール紐を、少しきつめに。 「いたっ……橘さんっ?」 俺の腕の中でぐったりとしていた宮森が、股間に走った痛みに何事かと身体を起こす。そこをなだめて俺の腕の中に身体を引き戻すと、結び目を蝶結びにして完成させた。 「……なかなかやらしい眺めだな」 紐で抑圧された肉がみちみちっと盛り上がっている様子は、なんともいえない興奮を俺にもたらす。これは……くせになりそうだぞ。 「やだ、こんなの……っ」 「とか言って、ここは喜んでるみたいだぞ?」 さすがに紐をかけられなかった先端部分から、透明な液体がだらだらと流れ始めている。ぷくぷくと溢れ出してくるそれは紐を伝って幹全体を濡らしていき、細身のチャーシューのようだったそこをロウの溶け出したロウソクのような趣に変えた。 「この状態で、こっちもいじったらどうなるのかなー?」 ぴくぴくと小刻みに揺れるチ○ポからは完全に手を離し、空いた左手でアナルへと指を伸ばすと宮森の尻たぶが跳ね上がる。気にせずさらに指を這わせ人差し指と中指を窪みへと沈ませていくと、そうされることを予想していたのか大した強張りもなく二本の指は埋まっていった。 「あっ……あぁっ!」 開きっぱなしの口から高い声が洩れる。普段の声はそんなに高くもないのに、どうしてこういうときの喘ぎはこんな声になるんだろう、なんてことを冷静に考えながら指を動かす俺。……別に気持ち悪く感じることもないからいいけどな。 根元まで埋め込んでやった指を、節を曲げた状態でぐるぐる掻き回してやる。ぬるぬるとした粘液と柔らかい肉襞が指に絡みついてきて俺の指にもちょっとした快感をもたらしてくれる。 女のアソコとは構造も形も違うのに、こうして目を閉じて指先だけで味わうと同じような感覚がするのは不思議なものだ。これは──セックスするのに相手は男でも女でもどっちでもいいと言う奴の気持ちもわからなくないな。 俺の手技に青息吐息となっていた宮森は、それでも自分の欲求のままに動き出した。 「こんなんじゃやだっ、もっと、もっと大きいの……っ」 体内に埋め込まれている指では物足りないのだと、急いたように俺の手を引き抜こうとする。 「ちょうだい、橘さん……俺ガマンできないっっ」 俺の胸に預けていた頭部をぐりぐりと押しつけてきながらねだられて、くすぐったさから逃れるために宮森の身体を床に転がした。 自分の身体が投げ出されたのに気づいて身体を起こした宮森に「ちょっと待ってろよ」と声をかけておき、ボタンの外されていたシャツを脱ぎ捨ててズボンとパンツも一気に脱ぐ。 今か今かと出番を待ち構えていた愚息はいつでも出動できる状態で、俺はそいつを扱きながら宮森の身体を改めて見下ろした。 手頃な大きさのチョコを宮森のケツの穴に突っ込んでやろうかと思ったが……溶けて流れ出てきたチョコは、きっとウ○コを連想させるに違いないだろうと思って、やめた(俺も変なことを考えたもんだ)。 「早くっ、早く挿れて……っ」 自分の両膝を抱え込み、俺の目の前に惜しげもなくアナルを曝け出す。すでに一度俺の指で拡げられていたそこは電気を反射して光り、ひくひくと収縮する様まではっきりと俺の視界に飛び込ませてくる。 ──ここまできて我慢ができるほど俺はできた人間ではない。 「仕方ないな……」 やれやれ、といった様子を演じながら宮森に近づき、宙に浮いていた両足首を掴んでさらに大きく開脚させる。その両足を肩に担ぎ上げるようにしながら身体を二つに折り、穂先が揺れてしまうのをなんとか軌道修正しながら狙いを定めて腰を突き出す。 「あうぅうっ!!」 上手い具合にチ○ポがめり込み宮森の奥深いところまで一気に貫く。その衝撃に驚いたのか、俺のチ○ポを締りのいい内壁がぎゅっと締め上げてきた。 「くぅ……んん!」 その一瞬で暴発しそうになるのを堪えるのがまた至難の技だったりするのだが、そんなことを気取られるわけにはいかない(俺の沽券にかかわるからな)。 なんとか快感をやりすごし、ようやく腰を揺らし始めると、宮森も嬉しそうな顔で声を上げ始める。 「あ、あっ! そ、そこっ、いい……!」 幾度となく攻め上げてやっている固くしこったその場所を、グラウンドするように腰を回転させてぐりぐりと刺激しながら突き上げる。 「あっ・あっ・あっ・あっ」 突き上げに呼応するように洩れる声は俺のやる気を煽る声で。 「あぅ・す、すごいっ、橘さんの……っ!!」 そんなことを、『恍惚』という表現が似合う顔で言われてしまえば、頑張らずにはいられなくなるのが男だろう。 「……くそっ」 たとえ自分の腰の限界が近づいてきているのに気づきつつも、動きを止めることはできなかった。 抱え上げた両足を大きく割り広げ、ずじゅずじゅと音を立てるそこを凝視したままピストンし続ける。こんな場所にチ○ポが入っちまうなんて……ホントに不思議なもんだ。 (ま、気持ちいいって感じられる場所があるから使ってもいいんだろうけどな) そんなことをどこか冷静な頭で考えていると、いつの間にか宮森の限界が近くなっていたようだった。 「ひも、ひも取って……もっ、いたい……っ」 はちきれんばかりに膨張したチ○ポは紐の拘束を無視してさらにデカくなり、俺がでたらめに巻きつけた紐は半分以上が外れていた。しかし残った半分はしっかりとチ○ポを締め上げていたようで、その場所が発する激痛に涙を流しながら懇願してきた。 「たちっ、たちばなさ……ぁん!!」 「わかったわかった。今外してやるよ」 さすがにやりすぎた感が否めず、ほんの少しだけ反省した俺はすぐに紐を解いてやった。ところどころ血の死んだような色をしたチ○ポを(悪かった悪かった)とあやすように扱くと、すでに限界が近かったのか白い液体が噴き出し始めて。 「あ〜〜〜〜〜っっっっ!!」 今度ばかりは制止することもできないまま、宮森は到達してしまったのだった。 「あ、あ、あ、あ……っ」 先っぽから勢いよく飛んだ精液が俺の胸まで飛んでくる。その生暖かさを感じながら、俺は仕返しとばかりに宮森の内部に熱をぶちまけた。 びゅるるっと発射された熱が狭い場所に吐き出され、まるでコンドームに吐き出したときのように自分のチ○ポを生暖かく包む。 「あうっ・うっ!」 それを最後の一滴まで残らず受け止めた宮森は満足したように大きく息をつくと、 「これ、橘さんからのバレンタインプレゼントですね……」 なんて鼻血の出そうなことを言ったのだった(鼻血は出なかったが股間が元気になったのは言うまでもないよな……)。 |
あんなところにチョコを入れなくて正解でしょう……。
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