オヤジ40歳・初めての経験
【後編】
|
密着させていた身体をゆっくり離し、一瞬だけ私の目を見つめると小さく微笑んで。 「心配しないでください」 まるで私を勇気づけるように言うと、私の身体をベッドに横たえ大きな身体を覆い被せてきて、男らしい顔を私の首筋に埋めた。 「あ……っ」 鎖骨のあたりに柔らかいものが押しつけられ、引き攣った喉が声を洩らす。次いで湿った感触がすっと線を描くように鎖骨から胸へと走り、慣れない感覚に体温が上がって全身に汗が滲んだ気がした。 「ぐぅ、ん……」 胸に移動した彼の舌が乳輪に沿って円を描くように舐めてくる。むず痒いようなもどかしい刺激に仰け反らせた喉元からくぐもった音が洩れる。その声を聞き咎めたように、舌は私の乳首へと移動して──。 「あっ?」 固く尖らせた舌先が小刻みに動いて小さな乳首を嬲【なぶ】り、さらにちゅっちゅっと音をさせながら何度も何度も吸いついてくる。そこから鋭い刺激が発せられて、全身に鈍い痺れが広がっていくようだ。 「っ、あっ、……っ!?」 そしてもう片方の乳首にも突然刺激が走り、驚いて天井に向けていた顔を自分の胸元へ向けると、いつの間にか移動していた彼の指先が舌の動きに合わせて動いていて。 私がしたように、乳首を摘まんだり爪の先で引っかいたりしてきたのだが……きっと私がしたものなど、今彼がしているこれと比べたら『愛撫』とは到底呼べぬものだったろう。それくらい、彼の手技は卓越したものに感じられた。 「あぁあ……っ」 自慰をしているときに何度か触ったことがあるけれど、こんなふうになったことは一度もなかった。私の乳首は性感帯ではないのだと思っていたのに、彼にされているこれはすごく気持ちいい……! 乳首への攻めは続いていたが、空いていたもう片方の手を使い出したのか、脇腹や腰骨のあたりを熱の塊が彷徨うように動いて刺激の発信源がさらに増える。 「あぁ……ぃ、ぃ……っ!」 蚊の鳴くような声が洩れ、自分でも驚いて咄嗟に口を塞ごうとしたが、その手を彼の手に遮られてしまう。 「コ、コウタくんっ?」 「別にいいじゃないですか。声、出してください」 「でも……っふ、」 『男の喘ぎ声なんて、気持ち悪いだろう?』と聞こうとしたが、 「声を出してくれたほうが、感じてくれてるんだってわかっていいですから」 そうかもしれないと納得してしまうようなことを言われ、(だったら無理に声を抑えることはないんだ)と私の中の何かが弾けた。 「あ、あ、ん、んんっ、あぁぅ……っ!」 どこから出ているのかと思うような甲高い声が、彼の愛撫に合わせて断続的に洩れてしまう。実際一般的にセックスをしている人間は、今の私のようにこんな声を上げるものなのだろうか。それとも本当はあまり声など上げないのか? 脳の片隅だけが冷めているような感じでそんな疑問が浮かんだが、それについて深く考える前に一瞬で疑問が吹き飛んだ。 「あぅうっ!?」 腹部を撫で回していた彼の手が下腹部へ下り、そして一気にペニスへと触れてきたのだ!! 私の貧相極まりないペニスを!! (そんな……他人の手に私のペニスが握られているなんて……っ) 乳首への攻めが続いていたため身体を起こしてその光景を確認することはできなかったが、目を閉じて彼の動きを反芻することだけはなんとかできそうだった。 根元からカリの下の部分までを、強弱をつけるようにゆったりとした動きで手が上下する。 「んっ、んあっ、あっ、あっ、やぁっ」 さらに、乳首を弄っていた手もペニスへと移動して、小さいながらも最大限に膨れ上がっていた亀頭へと触れてくる。 彼の太い指がカリに沿って動かされる。尿道口の縁をやわやわと走り、気を抜いた瞬間に窪みに潜り込んでぐりぐりと押されて「うぅおおう!」と獣めいた声が唇から零れる。 乳首への刺激ももちろん気持ちよかったが、ペニスへの刺激はそれとは比べられないほどの快感で! まるで小便を洩らしているのではないかというほどの勢いで、滑った液体が垂れ流れるのを自覚した。 「気持ちいいですか?」 「ん……うんっ・うんっっ」 必死の体でがくがくと頭を振りながら返事をすると、彼はさらに激しく手を動かして──そして、突然その手の動きを止めた。 「え……っ!?」 快感に酔いしれていた私のペニスが、自分を包んでいた熱が離れたことに驚いたのか大きく頭【かぶり】を振る。その拍子に尿道口からさらに激しく粘着質な液体がまき散らされ、私の下腹部は自分の先走りでぬるぬるになってしまったのだった。 その滑りが飛んだ太腿を彼の大きな掌が撫でてきて、胸が赤く染まるほど愛撫してくれていた唇も、私の出始めた腹を舌で舐め上げながら下へと移動していって──。 「え……は、ぁっっ!?」 突然亀頭に生暖かい粘着質なものが触れてきて、彼が与えてくれる快感に身を委ねていた私は大げさに(自分にとっては全くおおげさではなかったが)全身を揺らしてしまった。 慌てて上半身を起こし、何が起こったのかと確認しようとしたところを彼に制される。が、私の視界にはしっかりと映っていた。彼が私のペニスを──しゃぶっている姿が。 「そっ、そんなことしなくて、いいよっっ」 驚いて彼の頭を引き剥がそうと髪に触れる。勢い余って掴んでしまいそうになったが、手に力を入れる前に彼が顔を上げてきた。……卑猥な彼の様子に動きが止まる。 「大丈夫ですよ。……前にもしたことありますから」 彼は躊躇うように言葉を切ったが、遠慮する理由はないとはっきり告げてくると、「しますね」と確認のように言って再び顔を倒した。 ──そうか。彼はフェラチオをして金を貰ったこともあるんだ。 「…………」 (だったらさせてもいいだろう。いや、金を払った私にはフェラチオしてもらう権利があるんだ) そんな考えが頭をよぎり、それから私は拒絶の言葉を口にすることはなかった。本音を言えば、誰かにフェラチオしてもらうのも夢の一つだったのだ。 一切の抵抗をやめた私を確認すると、彼は再び動きを再開した。ちゅるちゅると音をさせながら鈴口を吸い上げ、それからゆっくり舌を使い始めて。 「ん……っ」 手を動かして太くはない竿を扱きながら、溶けはじめてしまったアイスキャンディを舐めるように厚い舌を押しつけるように動かす。本当は陰嚢も触ってもらいたかったが、言い出すことができずに結局触ってもらえなかった。……残念だ。 「あ、ん、あ……ああん・ん……っ」 唇からひっきりなしに声が出る。全身を蕩かすような甘ったるい刺激に唇が歪む。今私は史上最強にみっともない顔をしているに違いない。わかってはいるが……欲望を貪ることに夢中になってしまった自分をどうすることもできなくて。 「ふん・あっ、ぅあっ、はぁっっ」 自然と腰が揺れはじめ、ともすれば彼の口奥にペニスを穿ってしまいそうになる。無意味に力が入った太腿が軽く痙攣し、それを宥めるように彼の掌が撫でてくれる。 (こんなに気持ちいい思いができるなんて……) ホモセックスを楽しんでいる人間ならば、相手のペニスを喜んで舐めるのは当然のことだと思う(嫌がる人間もいるだろうが)。だが、ノーマルの男が金目的でホモの相手をするということは、肌に触れることすら嫌悪を覚えるものではないだろうか。 しかし彼の愛撫は、こちらが錯覚を起こしてしまいそうなほど丁寧で……そして優しくて。 いつしか私は身も心も彼に委ね、快感の渦に巻き込まれていたのだった。 「んっ……ん、んっ……」 小さく声を洩らしながら、濡れた音をさせながらフェラチオを続ける彼。鼻から吐き出される熱い息が私の陰毛を揺らして、それすら気持ちよくて彼の頭部に手を伸ばしてしまいそうになる。 「んあ、ぁぁん……っふ、ふぁ、んっ」 鼻から抜けるような声を上げると彼の愛撫が深くなる。そのことに気づき、調子に乗って声を上げ続ける私はなんと滑稽だろうか。……そうは思っても、快感を求める気持ちには抗えないのだが。 「あ、あ……」 やがて彼の唇が私のペニスから離れ、蟻の門渡りを伝い、尻の割れ目へと伸びていって。 「あ……そこ、は──」 思わず上げてしまった私の声を聞き流し、弛みはじめた肉丘を左右に広げると──ついにアナルへと触れてきて! 「あっ……!」 アナルの縁の盛り上がった部分を丸くなぞり、体内へと続いている窪みを舌先で突く。軽くとんとんと叩くような動きが繰り返されて、それから窪みを何度も何度も舐めて……。 「あっ、あっ、あ──っ」 気持ちいい……彼の舌のぬめぬめとした感触も、柔らかい肉が私の中ににゅぐにゅぐと入り込もうとしてくるのも、何もかもが──!! 「や……や、そんな、のっ、あ、ああっ」 あまりに強烈なアナルへの攻めに、私は驚きと戸惑いを感じずにはいられなかった。 抵抗はないのだろうか。アナルセックスに興味があったようにはとても見えなかったが、こんなふうに私のアナルを舐め続けることができるなんて──その先を、要求しても大丈夫だということなのだろうか? 「コウタくん、も……もういいよ」 「──え?」 「舐めるのは終わりにして、……今度はそこを、…………指で解して欲しいんだ」 『解して欲しい』────その言い方で、伝わっただろうか。『解したあとは、君のペニスを挿れて欲しいんだ』という私の気持ちが。 彼は幾分上気した顔で(長時間のペッティングのせいだろう)伏せていた顔を上げて私を見ると、 「ああ……はい、わかりました」 もじもじしていた私の態度(年甲斐もなく恥ずかしがっていた私は気味が悪かったかもしれないが)で何かを悟ってくれたのか、上体を起こして次の行為へと動き出した。 「このまま挿れればいいんですか?」 私のアナルを見て、さらに自分の指をじっと見つめた彼は『本当に挿れても大丈夫なんだろうか』とどこか不安げな表情をして。 その顔を見咎めた私は、ベッドの上部に手を伸ばしてコンドームとローションを彼に渡した。……さっき、場所を確認しておいてよかった。 「そのままじゃ挿れるのも大変だから……これを使うといいかも」 アナルは女のマ○コと違い、勝手に濡れることはない(奥の方をいじると腸の方から液体が出るという話は聞いたことがあるが……)。だからホモセックスには潤滑剤が必需品だ。 しかし、それをアナルの奥に塗り込めと言っても、直に指を入れるのは抵抗があるだろう。 「これ……指につけて、これをたっぷり垂らして……」 「あ、はい」 「私のここにも、これを垂らしておいて────」 「えっ? は、はい」 「それで、……指を、…………挿れてくれ」 自ら進んでアナルに突っ込んで欲しいと望む男。彼にしてみれば『変態』以外の何物でもないだろうが、私の望みは──私の真の望みはこれなのだ。 「…………じゃあ」 彼はためらうように間を置いて、それでも私の要求通り指にコンドームを装着してローションを垂らした。それからローションの瓶を傾け、滑った液体を私のアナルへと垂らす。 体温が上がったそこに冷たいローションは刺激が強く、驚いた私の全身が大きく跳ね上がってしまう。 そのとき、 「あっ」 ふいに出てしまったような声と共に、アナルにぐにっと何かが侵入してきた。 もちろんそれは彼の指先なのだろうが、発せられた声の感じから『滑って中に入れてしまった』ようで。 どうやら私が身体を揺らしたせいで、アナルの入り口近くでスタンバイしていた彼の指が刺さってしまったようだ。 「す、すみませんっ」 慌てふためいたように第一関節分ほど埋まっていた指を抜こうとした彼に、鋭い調子で「いいからっ」と短く声を上げてしまう私。 「大丈夫だから、その、そのまま……してくれ」 待望のそれを逃すことなどもうできない。先っぽだけでなく、一気に根元までずっぽり埋めて欲しい! 「早……はや、くっ」 抑えることが出来ない興奮に息が上がり始め、身を捩って続きを強請る。尋常ではない私のもがきように驚いたのか、それとも決意を新たにしたのか。彼は指を抜かずに、そのまま行為を続行することに決めてくれたらしい。 「女の、を解すようにすればいいんですよね」 「んっ……うん、そうっ」 「痛くないようにしますから……」 声とともにぬちゅっと小さな音がして、内部の奥へと異物が入ってくる。ローションの冷たい感触に驚いた太腿が鳥肌を立てたが、内部に挿入されたローションはすぐに温まり、太腿も緊張を緩めた。 「あああ……っ」 これくらいのことはいつも家で1人でやっているが……他人に、しかも指を挿れてもらっていると思うだけでたまらなくなる。 「指っ、ちょっと曲げて……っ」 「えっ? こ、こうですか?」 「あ、そっ、そう……あぁ、いいっ……っ」 緩く曲げられた指が襞を掻き分けるようにして内壁を引っ掻くのが好きだ。自分でやると皮膚を突き破りそうなほど強く擦り上げてしまうが(事実、それで何度か肌を傷つけている……)、よっぽどのサドでない限り、いきなり爪を立てる人間はいないだろう。 「……解れてきましたね」 指を出し挿れしながら私の望みどおり奥で指を曲げる動きを繰り返していた彼は、私のアナルの入り口が柔らかくなってきたことに安堵したのか、それまでより素早く乱暴に指を動かしてきた。 「っん・あっ、ぁぁああ・っふ」 全身をひくつかせて喘ぐ私に、確認することなく彼の指が増えていく。2本……3本と追加されるたびに入り口が拡げられ、内部を擦り上げる指の体積も拡がって……。 「もっ……もう、いいよ──っ」 指でする限界まで内部を愛撫されて、背筋を悪寒のようなものが這い上がる。それが射精の近づいている証拠だと気づいた私は、切迫した声で彼の動きを遮った。 「…………」 彼は何も言わず、私の内部に挿し入れたままとなっていた指を引き抜くと身体を起こした。そして小さく跳ね上がる私の太腿に触れると、マッサージするように掌を滑らせる。 「ん、ふっ……っ」 激しい興奮で息を荒げている私を見下ろし、涙で滲んでいた瞳をじっと見つめてくる。……まるで、最後の確認をするかのように。 『早く…………』 声になっていたか自分でもわからない。だが、私の唇の動きを見取ってくれたらしい彼は、私の両膝裏に手を差し込み、そこを抱えながら股を開かせるようにして上体を倒してきた。 (ついに────ついに、このときが…………!!) 薄い皮膚を突き破り、心臓が外に飛び出してくるのではないかと不安になるほど鼓動が強く打ちつける。大きな期待がアナル一点に集中して、その場所の感覚だけが妙にリアルに感じられるようだった。 ……が、そのとき。 「んぐぅ……っ」 身体を2つに折り込まれるような体勢に胸部が圧迫されて、なんと私の唇から無意識的に声が出てしまったのだ(声というより蛙がひしゃげたような音といったほうがいいかもしれない)。 「苦しいですか?」 「う、うん、ちょっと……苦しい、かも」 実際には『ちょっと』ではなく『かなり』だったのだが、正常位と呼ばれる体位は、身体の硬い私厳しい体勢だった。……本当に世のホモセックスではこういった体位を利用しているのだろうか? 「す、すまない。身体が硬くて……っ」 間抜けだ。『いざ!』というときになってこんな様を曝すことになるとは──こんなことなら、足を拡げる練習でもなんでもしてくるんだった! 「ちょっ、ちょっと待ってくれっっ」 持っていた私の足を下ろし、どうしたものかと途方に暮れたらしい彼に、慌てふためいて必死にどうするべきか考える。ここまできて私の身体に興醒めされては困るっ(……最初から興味などないだろうが)。 快感に力が抜けてしまった身体を無理やり起こし、彼に背を向けて四足で歩く獣のような態勢となる。──心臓の動きが早い。 「こ……こうすれば──挿れやすい、かな……?」 頭から胸までをベッドに押しつけ、軽く足を開き、尻だけを高く上げた格好でアナルを差し出す。雑誌で見た若い男の子はこの格好がよく似合っていたが……果たして私のような中年がやっていいものなのだろうか(そんなことを思っても今さら遅いが)。 「……本当に入るんですか、その…………こんな小さなところに」 私のアナルをじっと見つめているのだろう、彼が不安そうな声で呟く。その場所だけをじっと見られるのはやっぱり恥ずかしくて、自然と早くなる口調で平気だと伝えた。 「平気だよ。誰かとの経験はないけど、……君のと同じくらいの大きさの物は挿れたことがあるから」 それは死ぬほど恥ずかしい告白だったが、ここまできて繕うものなど何もないだろうと開き直り──それに、一刻も早く彼が欲しくてたまらなくて、 「だから、────早く挿れてくれ」 絶対に言えないと、言える訳がないと思っていた言葉を吐き出していた。 私の必死の願いに良心が揺り動かされたのか、 「…………じゃあ、いきますよ」 彼は覚悟を決めたような顔で私の足の間に身体を入れてくると、猛りきったペニスの尖端をアナルへとぴったり当ててきた。──が、すぐに身を翻し、 「すいません、着けるの忘れてました」 小声で呟きながらコンドームに手を伸ばして、勃起したペニスに素早く装着した(私よりよっぽど使い慣れているのだろう)。 そして大量のローションをペニスに垂らし、くちゅくちゅと音をさせながらまんべんなくペニスに塗りこめると、改めて私の身体に近づいてきて。 ゴムの『ぴちっ』という音と、ローションが立てる濡れた音にさらに気分を煽られていた私は、招き入れるように肛門を収縮させ──ぬめりを借りてつるっと内部に滑り込んできたペニスの尖端に、「あふっ」と奇妙な声を洩らした。 「ん……っ、ん、んぁ……っ」 ずずっ、ずずっと、中の感触を確かめるように時折軽く後退しながらペニスが奥へと入ってくる。熱く硬い塊が自分を貫いていく様がありありと目の前に浮かんで、私は知らず顔に笑みを浮かべていた。 「ああ……ああ、すごい……!」 家で1人使っていた野菜や文房具など比ではない。熱くて硬くて大きくて、それでいて弾力があってすんなりと入ってくる……!! 「大丈夫ですか? もっと挿れても平気ですか?」 「ん、うんっ……もっと、挿れて、突いてっ……あっ、ぐあ、ふは・っ!」 遠慮などせずに激しく貫いてもらいたくて突き出した尻を左右に揺らす。拡げられた入り口が引き攣れ、中にいた彼のペニスがぐりっぐりっと動いて、自分が本当にセックスを体験しているのだと実感できる。 私の求めに応えるように、彼は杭を打ち込むように腰を進めてくる。だんだんと荒くなっていく息遣いを聞いていると、私の興奮もさらに高まる。 「あぁ、そ、それっ、いい、いいよ、もっと、あ、あう、ぅぅんんんっ!」 気持ちよさにたまらずアナルを締める(長年1人でいじっているために、括約筋を締めたり緩めたりすることは私には容易かったりする)と、腰の動きが封じられるのを恐れたように彼もさらに激しく突き上げてきて!! 『すっごぉいぃいいvvvv おちんこ気持ちいいのぉおおvvvv』 大昔に付き合いで見せられたアダルトビデオ(もちろんホモビデオではなくノーマルのものだ)で、女が嬉々として喘いでいた声が脳裏に反響した。気持ちとしては私もそんな嬌声を上げたかったのだが、さすがに彼が萎えるだけだろうと自制したが。 もっと淫らになりたい。自我を解き放ち、何をも憚ることなく思いきり感じたい!! 「峰雄さんのここ、すごく狭くてきつい……。女のマ○コより気持ちいいかも……っ」 ぐっぐっと突き上げながらそんなことを言ってきた彼は、興奮しているのかただひたすらに腰を振って私の尻にペニスを叩きつけて──。 「うっ、うっ! コ、コウタ、くんのも……っ・す、すごいぃ!!」 まるで灼熱のこん棒をドスンドスンと打ちつけられているようだ! シーツを掴んで踏ん張っていても、力強いピストンを繰り返されると衝撃に堪えきれず少しずつ身体がずり上がっていく。それに気づいた彼が、私の腰を押さえつけていた手に力を入れる。 「あぁ、ああ! いい、いひいぃ〜!!」 (こんなにいい思いができるなら、鏡張りの部屋を選ぶんだった!) そうすれば、念願叶って男のペニスに犯されている自分の姿を目に焼きつけておくことができたのに! 普段の私だったら絶対考えないような、大胆な欲望が嗜好を支配する。──そのときの私は、初めて体験したホモセックスの虜となっていた。 「もっと、もっと……っ」 「峰雄さんっ」 「ああっ! そ、そこっ、もっとちょうだい、もっと……!」 突然びりびりと電流が流れるような刺激が走り、その場所をさらに攻め立ててほしくて懇願すると、彼はすかさず求めに応じてくれる。ペニスの尖端でぐりぐりと抉るようにされて、私は我を忘れて腰を振った。 「いい、いいっ、そこ! 気持ちいい、ああっ、あぁああっ!」 「ここですか? もっと?」 「だめ、そんなにしたらぁ・でっ・出るっぅぅうう!!」 「まだ、まだダメですっ」 「んんぐぐぅぅぅぅっっ!!!!」 丸めていた背筋を伸ばして射精態勢に入り、熱い精液を吐き出そうとしたところでペニスの根元が握られて、あと一秒あれば射精できたはずのものが圧迫されて逆流する。 「やだっ、もう……だ、いやだ……ぁっ」 目の前にちかちかと星が光り全身が粟立つ。射精を遮られるのがこんなに苦痛を伴うとは思わなかった(自慰で我慢することなどありえまい)。 「あとちょっとだけ……っ、させてっ、っ、っ!」 「んあっ! あっ、はっ、あぅっ! そこ・それいいっ、コウタくんっっ!!」 「峰雄さんっ!」 前方に身を乗り出すように私にのしかかり、渾身の力を込めて腰を打ちつけてくれる彼。私の身体で感じてくれている……私の身体がノーマルの彼を満足させられているという事実が、私の脳を甘く蕩かしていく。 獣のような喘ぎと息遣い、乾いた肌がぶつかり合う音と濡れた音の響く部屋。この淫猥な空気を家まで持って帰れたらいいのに……! 「ごめ、ごめん、コウタくん……もうだめだ、私は──!!」 極限まで我慢させられていたせいか、全身の感覚がだんだんと鈍くなってきた気がする。がくがくと揺れる身体のパーツが人形のもののようにぎこちなく動いていて、それが自分の手足だとは思えなくなってしまう。 悲痛に響いた私の声に、彼もようやく終わりを判断してくれたのか、 「わかり、ました。っ、じゃあ、一緒に……イキましょう」 動きに合わせて弾む声でそう言ってくれて。 「ん、あっ、あ!!」 彼の手から解放されたペニスがどっと昂ぶりを弾けさせた。 「ぐぬぅあああああっっっっ!!!!」 我慢を強いられた分精液の放出の仕方はいつもと違って、尿道口が一瞬だけ拡張して溜まっていたものが一息で全部排出されたような気がした。 そして彼も──── 「うううんっっ!!」 私の内部で射精してくれたのか、私の尻に密着した彼の下腹部がぶるぶるっと震え、彼のペニスがいる奥の方がじわじわっと熱くなった気がした。 コンドーム越しでは彼の熱がリアルに感じられなくて残念だ(……しかし、彼のペニスを私の宿便で汚してしまうわけには…………)。 「はぁ……はぁ……」 達した彼は私の身体からゆっくりと離れ、太さが緩和したペニスをずるずるっと抜いた。そしてすぐにティッシュを数枚引き抜き、コンドームを外したようだった。 四つん這いでいるのが辛くなった私も崩れるようにベッドに倒れる。『全身が鉛のように重くなる』というのはこんな状態をいうのだろうか。 彼が出ていったばかりのアナルは拡げられた衝撃で熱を持ち、尖端でぐりぐりと擦られた前立腺は『もっとしてほしい』とでもいうようにずくずくと疼いて。初めて味わってしまったペニスの感触に、私の内部はすっかり魅せられてしまったようだった。 丸めたティッシュをゴミ箱に投げ入れた彼は、膝立ちの体勢のまま私をじっと見下ろしていた。私もその視線に気づき彼の方へと視線を上げる。 ついさっきまで腹につきそうなほど勃起していたペニスが、今は勢いを抑えて60度ほどの角度で前後に小さく揺れている。その光景はなんとも神秘的で、箍【たが】が外れた私の思考は、思ったことをそのまま唇に乗せていた。 「君の……精液を飲ませてくれ……」 喉の渇きを潤したいという気持ちはあった。……が、『それ』を望んでしまうとは自分でも思っていなかった。 しかし彼の鈴口を汚している白い液体を見ていたら──無性に『それ』だけが欲しくなってしまって…………。 「…………っん」 返事も聞かず、勝手にあんぐりと口を開けて待ち構えた私に、彼は(私の言葉のせいなのか)むくむくと元気を取り戻し始めたペニスを私の顔へと向けてしっかり握り締めた竿をごしごしと扱き、 「いきますよ」 と言った瞬間に尿道口から精液を勢い良く吐き出し、私の開いたままの口へと注いでくれた。 「んあ……っ」 飛び込んできた生暖かい粘着質な液体が口の中でネバネバと舌に絡みつく。それを舌と口蓋の間で転がし、思う様に味わう。 青臭いというよりも苦味が強く、汗のようにしょっぱい。しかしそのときの私には、彼の精液はどんな天然水よりもおいしく感じられて── 「おいしい…………コウタくんの、すごく…………」 唇に垂れていたものまでしっかり舌で舐めとって、高いところから私を見下ろしていた彼ににやけた顔を向けながらそんな感想を言っていた。 「────、」 彼は一瞬なんとも言い難いような表情で私を見たが、突然身を翻して横たわった私の身体を跨いで再び覆い被さってきて。 「……もう1回、しませんか? 俺……もう1回峰雄さんの中に入りたい」 力を失ったペニスを探られながら思いがけないことを言われ、全身が一気に熱を帯びるのを感じた。 「も、ちろん、いいよ……」 『何度でも……君のペニスが勃起しなくなるまで…………』 自分の肉体など省みずそんなことを心で唱えた私は、初めて知った男の肉体の虜となっていたのだった。 |
|
虜になったのはコウタも一緒!?
BACK