◆ アリオス様の日記 ◆


 ○月■日

 この「聖地」とやらは、俺にとってはまだまだ不可解な場所だ。
 今日外をぶらぶらしていていつのまにか森の湖にたどりついてたんだが、じっと滝を見つめていると、なんと背後からクラヴィスが声をかけてきたんだ。
 いつも仏頂面だが今日はまた格別で、俺も思わず
「なんだ、なにかあったのか?」
 なんて聞いちまってた。
 だがあいつは俺の顔をじっと見つめたままなんにも言わずにじとーっと重っ苦しい空気を垂れ流してて、俺は気味が悪くなってそのままそこから離れようとしたんだ。
 そうしたら、あいつ、
「この湖には、会いたいと願っている者を連れてきてくれる不思議な力があるそうだが……まさかお前が私をここに引き寄せたのではあるまいな?」
 なんて笑えねぇジョークを言い出して!
「あんたも察してる通り、俺がそんなことを願うわけないだろう?」
 腹から響くような声になっちまったがそれだけを言い残して、さっさと逃げ出したんだ。もしかしたらいつもと変わらない様子でも、実はやばい薬でもやってるのかと思ったから(あいつなら考えられなくないからな)。
 そのあと公園に寄ったらルヴァに会ったから、森の湖の噂の真相を聞いたら、
「確かにそのような噂はありますねー。ですが、願えばいつでもその相手が来てくれるわけでもないようですよー」
 と言っていた。そうだよな、俺はあのとき誰かに来て欲しいなんて願ってなかったんだし、あいつが偶然通りかかっただけなんだよな。……よかったぜ。

 しかし、なんだってあいつはあんなことを言ったんだ? ったく……薄気味悪いのは見た目だけじゃなくて中味もなのかよ。




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