続・調慾・本文紹介




「はぁ……ぁ、ぁっ」
「……久保井君て、乳首は乱暴にされたほうが好きだよね」
 強い刺激に堪え切れず声を上げていると不意に顔を上げた須賀さんが言って、その言葉を理解した瞬間体温が一気に上がった気がした。
 大学のときにいろいろされたせいで、俺の乳首は男にしては敏感になっていると自分でも思う。俺で遊んでいた先輩はいわゆる女にモテない感じの見た目で(俺は尊敬してたけど。……最初のうちは)、女の子にできないことを俺にして楽しんでたんだと思う。だから胸を弄るプレイが多くて、SM用の器具なんかも使われて……昔は米粒くらいしかなかった乳首はいつの間にか大豆くらいの大きさになっていた。
 その変化に気づいたときには死にたいような気分になったけど、こうして須賀さんが楽しんでくれるならいいかな、なんて最近は思っていたりする。俺だって、たくさん弄ってもらったほうが気持ちいいから、さ。
 でも、この人はどうして男が胸を弄られて善がってる姿を見て楽しいと思えるのか不思議だったりする。俺はどこからどう見ても男らしい体型だし、特別顔がいいわけでもないし声だって野太い。最初のときみたいに酒の勢いで……ってのは有り得ない話でもないけど、シラフで俺みたいなのを相手にしていたら普通は萎えてしまいそうなものなのに。
 俺を散々遊び倒した先輩も俺が感じて声を上げたりすると罵倒してきた。途中からお気に入りのAV映像を見ながらとかヘッドホンで音楽を聴きながらとか、とにかく俺の声を聞かずに済むようにしていた。俺の胸は弄りまくったけど下半身にはほとんど触ってくれなかったし、自分のチ○ポには奉仕させるくせに俺のは目に入るのもイヤって感じで──先輩との縁が切れたとき(本当に女の代わりにされてただけなんだな)って実感させられて、俺ってなんなんだろうって虚しくなった。
 そんな卑屈な考えが常につきまとっていたせいか、彼との行為が始まると必ず聞いてしまうことがある。
「須賀、さん」
「んー?」
「あの、……俺のこと、気持ち悪くない、ですか?」
 胸で感じる自分。女の子のように可愛い声じゃなく、耳障りな声を上げる自分。興奮して鼻息を荒げる姿なんてドン引かれていてもおかしくないはずだから。本当は、無理して俺に付き合ってくれているんじゃないかって気持ちが湧き上がってきて毎回聞かずにいられない。もし俺に付き合ってくれているんなら申し訳なくて──。
 俺の言葉に、須賀さんは俺の胸に埋めていた顔を上げる。その表情は険しく、俺は一週間前に彼から言われた言葉を思い出した。
「──久保井君」
「は、はい」
「俺が先週言ったこと、覚えてる?」
「……すみ、ません。今、思い出しました……」
 昂まっていた熱が引いていくのを感じながら震える唇で言うと、須賀さんははーっと大きな溜息を吐いた。その反応に俺の身体はビクッと震える。
 そうだった……先週俺は今と同じことを彼に聞いて、とうとうと諭されてしまったんだった。そして『今度また同じこと言ったら怒るからね』と言われてたのに……。
「久保井君のそういうところ、俺は嫌いじゃないけどね。でも、ちょっと自信なさすぎだよね」
「…………はい」
「いつも同じこと聞いてきて、俺もそのたび同じこと言って……毎回毎回このやりとりしてるけど、久保井君は俺の言葉を信じてないのかなって思っちゃうよ」
 そしてまた溜息。今度のはさっきの大げさな感じのものと違う、無意識に出てしまったって感じのもので。それが彼の気持ちを言葉以上に代弁しているようで、自分が彼に対して失礼なことをしていたんだと自覚させられた。俺、最低な人間だ……。
「すみません、須賀さんの言葉を信じてないわけじゃないんです、けど……」
「けど?」
「────不安、で」
 俺が零した言葉を聞いたせいか、須賀さんの身体が離れていく。ああ、離れないでいてくれたらいいのに。そうしたらもっとスムーズに言葉が出てきそうなのに


成人向けにつき短めですいません


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