僕の初体験・本文紹介




「河辺って…もしかして、バージン?」
「えええっ!?」
 あまりにも予想外の言葉に、僕は大声を上げて大きくのけぞってしまった。すぐに店内のお客さんの視線に気づき、正気に戻って赤面する。
「あ、やっぱそーなんだ。ごめん、俺てっきり、河辺はもうやっちゃってると思ったから」
「や…やっちゃってる、って──」
 ストレートな言葉の数々に、冷や汗が止まらない。
(ぼ、僕がもうエッチしてるって!?)
「なんで、そう思ったのっ?」
「え? 別に、なんとなく。周りがほっとかないでしょ、河辺くらいかわいい奴のことをさ」
「かわいくなんかっ……」
「たぶんあの学校でも、河辺のこと狙ってる奴たくさんいるよ。気をつけないと、いきなり襲われることもあるみたいだし」
「えっ……!?」
 僕の思考回路は、完全に会話から取り残されていた。やっぱりみんな、そういうことばかり考えているんだろうか……。
 言葉に詰まった僕に気づいたのか、吉村君はにっこり笑って言った。
「やっぱり河辺も女より男の方が好きなんだ?」
「──え?」
「あー、仲間意識みたいなやつでさ、たとえそいつに自覚がなくてもわかるもんなんだよね、そういうのって。河辺が知っての通り、俺は小林と付き合ってるしね」
(中略)
「…もしかしてさ、河辺ってオナニーもしたことない?」
「オナ……ッ!!」
「しー! …さすがにそれ叫んだらやばいっしょ、いくら人少ないとはいえ」
「ご、ごめんっ。…あの、オナニーは……中学の頃に、その幼なじみに教えてもらって…月に二回くらい……」
「…実はすごいウブだったんだな、河辺って」
 吉村君はそれを、馬鹿にするふうにでなく納得したって感じに言った。
「でも、これからはもうちょっとセックスとかについて知ったほうがいいんじゃないかな。もし学校で誰かに襲われたとき、本人がレイプだって気づかないんじゃヤバイし」
「レイプ?」
「河辺の場合、絶対その可能性あるから。……それに、血気盛んな少年が、そういうことに興味ないはずないからね。君だってセックスについてもっと知ったら、絶対経験してみたいって思うだろうし」
「そう…かな」
「そうさ。それに、その幼なじみの彼とうまくいったときに、知識がないとやっぱツライよ?」
 吉村君にきっぱり断言されて、僕は耳まで真っ赤になってしまった。
 しんちゃんとそんなことになるなんて絶対ありえないけど…でも、本当に何も知らないよりは、知っておいたほうがいいのかもしれない──。



本文P10〜P12から


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