血染めの薔薇と十字架・本文紹介




ある日、花屋がびくびくしたカオでやってきた。
「あの…お届けものです…」
 バカでかい箱を押しつけられて、「ハテ?」と思いつつ送り主を見た。
「──誰から?」
 そこには何も書いてなくて、だけど俺の住所は律儀にきっちり書かれてて。
「いえ…その…僕はお買いになられた方を見てませんので…」
「ふーん」
 受け取った箱の重さに、いったい何が入ってるのかと、さっそくリボンを解きにかかった。
(中略)
 リボンも解けて、よっこらしょと箱のフタを開けようとした俺の手を、兄ちゃんはがしっと握りしめた。
「…なんのマネだい、兄ちゃん」
「え!? えっと…その…」
「気持ちはありがたいけど、行きずりの相手とはやれないのよ、俺」
「──え?」
 きょとーんと目を丸くした兄ちゃんのマヌケづらを拝みながら、俺はうらっとフタを開けてやった。
「あ……」
「────ナニコレ?」
 中に入っていたのは、れっきとした花だった。今までにもらったことのないような、白いバラのでかい花束。
 その真っ白な花びらに、真っ赤な斑点が散っている。
「あの…それは…」
 恐る恐る話しかけてくる兄ちゃんはムシして、俺はその赤い斑点に指を伸ばした。液状のそれは俺の指にべとっとつき、俺はペロリと食してみる。
「……ふむ、血だな」
 血液型はAくらいかなとぶつぶつ呟いていた俺を、じりじりと後退しながら兄ちゃんが見ていた。
「──舐める?」
「いえっ!! 僕はけっこうですっ!!」
 今にも泣き出しそうな、ちょっと触手をそそられそうなカオをされて、思わずニンマリしてしまった。──悪趣味バンザイ。
「これさ、まだ渇いてないけど」
「──ひっ」
 血をもう一度指ですくい、兄ちゃんのほっぺたにこすりつけてやる。さーっと音がしそうな勢いで血が引いていく兄ちゃんの顔。楽しすぎる……。
(兄ちゃんいじめはあとにして…っと)
 今は、何をとち狂ったのか、男の俺にこんなもんを贈ってきた奴を確認するのが先だろう。



本文「愛の鎖編」P20〜P21から


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