艶美姫・本文紹介




 ある日、城に二人の狩人がやって来ました。
 二人は女王に呼び出されたのですが、わざわざ城に招かれて用事を遣わされたことなどなかったため、何事だろうと首を捻りながら城に向かいました。
「新しい女王って、まだずいぶん若いって聞いたけど……わざわざ俺たちを呼び出すなんて、好きな肉でもあるのかな?」
 まだ年若い狩人2は、女王が自分たちを呼び出した理由を単純に考えていました。
 けれど狩人2よりよほど経験を積んでいる狩人1は、突然の召集に最初から疑心的でした。
「わざわざ俺たちを呼び出して、活きのいい獲物を捕らえて来いって? んなわけねぇだろ」
「え?」
「おエラいさんが俺たちに直接会って依頼したいなんて言ってくるのは、ホントに限られたときだけだ。それにそういうときの依頼は大抵厄介なものだったりするんだよ」
「厄介なって、どんな……?」
「それは女王に会えばわかるさ」
 意味深な言い方をする狩人1に、狩人2は急に不安になってきました。けれど、ここまで来て引き返すなど狩人として失格だと自分を奮い立たせ、狩人1の後をぴったりとくっついて行きました。
 そんな狩人2の様子に、狩人1はひそかにいたずらが成功したような楽しげな表情を浮かべておりましたが……狩人2が気づくことはありませんでした。


 城に着いた二人は、門の前で待ち構えていた兵士によって人目につかないような部屋へ案内されました。その時点で狩人2も、この呼び出しが秘密裏のものであるのだと感じたのです。
 薄暗い部屋に入ると、そこにはすでに女王がいました。狩人たちは新しい女王を目の当たりにするのは初めてで、まずその若さに驚きました。
「俺より若い……よね?」
「ったく、王様も年のわりに随分とスキモノだな。確かに可愛いけど」
 煌びやかなドレスを纏い、ほのかな甘い香りをさせた女王はとてもその部屋の空気にそぐわなく思われました。けれど二人に向けたその顔が映し出していた表情は、とても明るい場所では見られないようなものでした。
 女王はカツカツと靴音を響かせながら二人の前に立つと、自分より背が高い二人を見上げ、
「門に艶美姫を待たせているから、どこかに連れて行って殺してこい」
 と言いました。
「こ……殺す!? 艶美姫をですか!?」
 突然の命令に狩人2は驚きを隠せず叫んでしまい、狩人1は慌ててその口を塞ぎました。ここで余計なことを言えば自分たちの命が危ない──咄嗟にそう感じたからです。
 女王は二人を睨みつけると、
「いいか、必ず殺すんだぞ! そして今日中にちゃんと殺したっていう証拠を持ってこいよ!」
 ヒステリックな声で捲し立て、二人の返事も聞かずに足早に部屋を出て行ってしまいました。
「…………そんな、人殺しなんて…………」
「まぁそんなこったろうと思ったがな」
 その場に残された二人は突然の殺害依頼にそれぞれ呟き、艶美姫が待っているという門へ急いで引き返したのでした。


狩人が2人? キャスティングは!?
すべての謎は読めば解けます!(笑)



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