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「出てこねーとあのままずっと待たせとくからな!」
投げやりな言葉を残しトイレの前から去って行ったエイジに、橘は小さく舌打ちしながら仕方なく便座から腰を上げた。
ドアを開けてから水を流し、いかにも「用を足していました」というポーズを取る。そして重い足を引き摺ってレジへと向かうと、男性客はレジの前で自分を待ち構えていた。
他の客はいるのかと視線を走らせるものの、客は一人も見当たらない。しかも、千影も小野もエイジも、興味深そうな顔で自分たちの様子を見守っている。
(あいつら……後で覚えてろよ)
橘は青筋を立てながら、それでも清算を待っていた客の応対をするためにレジへ向かった。
「お待たせいたしました」
いつもの愛想の良さはどこへやら、無表情でレジを叩き、
「八七〇円です」
愛想の欠片もない声で言うと、男性が金を用意するのを待つ。
(やーっぱおかしいぜ、オヤジのやつ)
(昔喧嘩別れした友達とかかなぁ……僕達と同じくらいの年に見えるし。ねぇ、千影さん?)
(そ、そうですね。ですが……若からそんな話を伺ったことはないですが……)
あまりにも不自然な態度の橘に、三人の憶測も止まらない。
そうこうしているうちに男性客は金を支払ったようで、
「ありがとうございました。気が向いたらまたどうぞ」
普段であれば絶対に言わないことを言い、橘はさっさとレジから離れようとした。
そのとき。
「圭一郎!」
それまで終始挙動不審だった男性が凛とした声を響かせ、素早く動いて橘の腕を掴んだ。
(け、圭一郎だって!)
(なんだよ、ホントに誰だよあいつ!)
(若……っ!?)
男の強気な行動に色めき立つ外野。だが、腕を掴まれた当人だけはまるっきりの無反応だった。
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