猛る獣たち・本文紹介





 その日俺は仕事が休みで、かといって家でごろごろしてるのもつまらなくて、久しぶりにスロットでもやろうと家の近所のパチンコ屋に来ていた。
 組に入ってからあまりやる機会がなくなっていたせいか、俺の得意の台はもうすでになくて。最近人気の新台は妙に感覚が掴みづらく、一時間ほどやっているうちに飽きてきた。
(あーあ。誰かヒマしてる奴いないかな……)
 とは思ったものの、組で仲のいい連中は今日は仕事に行っているはずだ。高校のときの仲間もほとんどが就職してるから、平日に遊べる奴なんているわけないだろう。
「ったく、帰るかなー……」
 コインもなくなり、出る気配のないスロットをそれ以上続ける気にもならなくて、俺は軽く勢いをつけて椅子から立ち上がるとそのまま出入り口に向かった。
(結局大事な給料スっちまっただけか……)
 組の中でも下っ端の俺達は、幹部の人たちみたいに給料が多くない。といっても高橋組は最低限の給料はしっかり払ってくれているからまだマシなんだろう。聞いたところによると、実績を残さないとその月の給料が出ないなんてところもあるらしいから。
 もちろんうちの組だって、何かあったときに他の奴より気の利いた行動をした奴はボーナスが多く出たり、出世が早くなったりする。
でもそれはこの世界では当然のことだから、俺だっていつも『次こそは自分が!』って気持ちを持ってる。向上心をなくしたら、この世界じゃただの負け犬だ。
 ……なんてエラそうに言ったって、いまだに一度も給料がアップしたことないんだけどさ。

「はぁ……」
(なんか最近の俺って……全然つまんない奴じゃん?)
 変わり映えしない毎日。趣味っていえるものも何もないし、仕事だって言われたことをこなすだけで。
 組に入った頃は覚えることもたくさんあったし、がむしゃらに動いてるだけでも、
『俺、組の役に立ってるんだ』
 って感じられたけど、最近は、
『自分なんて、実は高橋に必要ない?』
 って思うことのほうが多くて。
 なんていうんだろ、自分がやってることが本当に誰かのためになってるのかわからなくなってきたって感じ?
 俺がそういう仕事を任されるだけの器になってないってことはすごくよくわかるんだけど……。

 そんなことを考えながら、家に帰ろうと歩き出したとき。
「おい」
背後から突然肩に手を置かれて、俺は条件反射的にその手を掴んでいた。
(誰だ!?)


田島×勇蔵のお話から(加筆修正大いにあり/死)。


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