考えてみると。

 人の体温をありありと感じるのは、これが初めてだった。
 肌が触れ合うと温かいってことも、他人の唇が柔らかいってことも……セックスをしてあんなに汗をかくってことも、今まで実際に体感したことなんかなかった。
 自分にとって大事な人とすることは、何もかもが特別なんだって気づかされた。────すべて、兄貴との関係の中で。


 キスしたい。
 気持ちよくなりたい。
 兄貴に触ってもらいたい。ここも、あそこも、全部。
 全身を、厚い舌で舐め回してもらいたい。
 それで……兄貴の大きいので貫いてほしい。
 そうされると、心も身体も満たされたって気がするから。


 俺の願いはそんなものだけで、きっとそれを知ったら兄貴は呆れるだろうし俺に愛想をつかすかもしれない。
 それでもしょうがない。だって、兄貴に抱きしめられると……心の底から安心できるんだって、知ってしまったんだから。
 兄貴の側にいると、それだけでなんだかむしょうに泣きたくなって……「生きていてよかった」って、そう実感できるんだ。


 兄貴は他人に甘えるような人じゃない。それは俺もよくわかってる。
 だけど、ときどきだけど、俺を抱き締める兄貴の両腕にきつく力が加わるときは、『もしかして……甘えてくれてる?』なんて、思ってしまったりする。
 だって、兄貴だって一人の人間なんだから、誰かに甘えたいとか考えたっておかしくないんだからさ。


 俺にできるのは、セックスの最中どさくさに紛れて兄貴の頭をぎゅっと抱き締めることくらいだけど……それだけでも兄貴の心をほっとさせることができているなら、これからも兄貴の側にいてもいいんだってことだろう。
 兄貴を幸せにしたい。幸せになってもらいたい。俺と一緒に……幸せになってほしい。


 忙しい毎日の中で、俺と過ごす時間を安らげるものだと感じてもらえるように、俺は今日も兄貴に強くしがみつく。
 お互いに強く抱きしめあえば、きっともっと安心できるって思うから……。



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