「ああっ・あああっっ…!!」
女の嬌声よりもいくらか低い声が、狭くはない部屋中に響き渡る。
その声と同時に俺のチ○ポを強い力が締め上げてきて、突然の快感に予期せず俺も欲望を放っていた。
「あぁ……あ、あ……」
痙攣する内部に精液をたっぷり注ぎ込むと、半開きの口から声を漏らしながら寛史は力を抜いた身体を俺にもたせかけてくる。その軽い身体を両腕で受け止めてやると、俺の背中に冷たい指が触れてきた。
軽く爪を立てて俺にしがみついてくるこの人が、50過ぎの中年男だと誰が思うだろうか?
「よかったか?」
いつまでも荒れた息をついている寛史に耳元で囁いてやると、薄い肩がぴくっと小さく跳ね上がり──顔を俺の肩に埋めるように頷いた。その様子から寛史が満足したのがわかり、俺も内心ほっとする。
寛史の身体は快感に貪欲だ。自分でも気づいていなかっただろうが、俺とこういう関係になってから早い段階で自分から身体を動かすようになっていたのを、俺ははっきり覚えている。
並より立派な形状と、使いこまれたような色のそこだけを見たら、若い頃相当遊んでいたと言われても納得しただろう。──この性格を知らなければの話だが。
「弘平……」
どこか舌足らずに聞こえる声が、甘えたように俺の名前を呼ぶ。その声に誘われるように、俺は寛史の唇を塞いだ。
『ちゅ……ちゅっ、くちゅ・っちゅ』
ぬめった音をわざとらしく響かせながら舌を動かすと、ためらいながら小さく揺れていた舌が俺の舌にだんだん深く絡まってくる。
「ん……ん、はっ、ん……っ」
閉じていた目を薄く開いて見ると、すぐ近くに苦しげに眉を寄せた寛史の顔がある。その表情をもっとこわばらせたくて、俺は内心意地悪く笑いながらさらに深く貧った。
この人にここまでのめり込むなんて、はっきり言って自分でも思っていなかった。興味を引かれて抱いた相手とこんなに長く続いたことは今まで一度もなかったし、そういう奴とはうまくいかないことが多かったから。
だけどこの人とは、このままずっとこうしていたいと……そう思わされることのほうが多いんだから不思議だ。
『ぢゅるっ・ぢぢゅっ』
口中にたまった唾液を強く吸い上げ味わいながら飲み下すと、いつのまにか目を開いていた寛史がその様子をじっと見ていて。
「弘平……」
長い時間舌を動かしていたせいか、へろへろした声が呼吸の限界を訴えてくる。──だが、股間の方は完全に回復していて。
「……なんだ、今日は元気だな。まだ足りないのか?」
勃起したその場所へ手を伸ばし、親指と人差し指で輪を作って幹に通すとゆっくり上下させる。
手の平全体でがしがし扱いてやるのに比べると快感はずっと弱いだろう。それを証明するように、寛史はもどかしさに首を振りはじめた。
「やだ、ぁ、っ、こぉへ……っ」
いつもは寛史がその気になったとわかった時点で攻めまくるが、今日は少し様子をうかがうことにした。いくら相手がオクテだからって、たまには自分から求めさせるのもいいだろう。──こういう仲になってずいぶん経つんだしな。
体温が上がり赤くなったままの耳に顔を寄せ、息を吹きつける。それから寛史が泣いて恥ずかしがるだろう言葉を囁いてやった。
「ほら……欲しいって言えよ。俺のチ○ポが欲しいってな」
突き出した舌で耳の中を舐め上げながら、幹を刺激している指を動かす。解放を促すほど強くない快感から逃れようと身体を離した寛史は潤んだ目で俺を見上げてきたが、それでも身体を支配している欲望には抗い難かったのか小さな声で囁いてきた。
「弘平が……欲しい」
赤く染めた頬が、むしゃぶりつきたくなるくらい色っぽい。……けど、まだ喰らうわけにはいかない。
「俺の何が欲しいって? ちゃんと言わないとわからないぜ?」
汗ばんだ肌に掌を走らせ、撫でたり揉んだりしながら寛史の返事を待つ。
俺の言葉に、デカくはない目が『信じられない』と言いたげに見開かれる。この顔が俺は結構好きだったりする。
「言えないなら言えないで、俺は別にいいんだぜ?」
追い討ちをかけるように言ってやると、切羽詰ったような顔で口を2、3度開く。
────そして。
「弘平の……チ、…………チン……」
消え入りそうな声で、だがはっきりとその言葉は俺の耳に届いた。
(マジかよ)
寛史の唇が『チ○ポ』と言うなんてちょっとした衝撃だ。……いや、「ちょっと」じゃなくて「かなり」か。
だが寛史は、一度口にしたことで躊躇いがなくなったのか、堰を切ったように俺を求めてきて。
「欲しいんだ……ちょうだい、弘平……弘平の……」
熱に浮かされてうわ言を呟くように俺の名前を呼ぶ。その姿に堪えられなくなって、俺は膝の上に乗せていた寛史の身体を布団に横たえ、筋肉のついていない両足を割って身体を進める。
俺を見上げてくる寛史の視線の中に悦びの色が見て取れて、俺は迷わず腰を突き出した。
『ぐ……ぷゅっ!』
「ぐ・あ……あっ!!」
すでに一度俺を咥えていたアナルはすんなりと俺を受け入れ、一気に3分の1程度埋まってしまう。女のマ○コに似た感触が俺のちんぼを包み、入り口部分がぎゅっと締め上げてくる。
「あっ、あっっ!」
寛史の中で暴れているチ○ポを必死で制御しようとしたが、生暖かく柔らかいそこは俺の理性を根こそぎ奪っていった。
『ずぢゅっ!ずちゅっ!ぎじゅっ!』
「あああんんっ!! つよっ、強すぎ、るっ! こ、こうへ……ぃっっ!!」
俺の動きに悲鳴を上げる。だが、求めたのは寛史のほうだったんだからやめる気など毛頭ない。
「まだだ。まだ保つだろ?」
「あんっ、あっ、あうっ・くぅ、んんっ!」
『ぐぷっ・ぎちっ・っじゅ・ぐじゅじゅっ』
──それに、寛史の身体は自分で思っている以上に快楽に忠実だ。
「はぁっ、そ・こ、んっ、んっ、ぃぃっ、い……っ!」
俺の動きを夢中で追い始めた途端、身体の動きも口も普段からは想像もつかないような動きをするのだ。
「もっとして欲しいのか?」
「んっ、う、んっ、もっと・もっと……あ、あんっ……っ」
「じゃあ、もっと腰揺らせよ。めちゃくちゃに動かせば気持ちよくなるぜ」
「はぁっ、はぁっ、んっ、んっ、あっ、あっ! いっ……はあっ!!」
『っちゅ・っじゅ・っじゅぴ・っぷ』
「そうだ。そのまま続けろよ」
寛史の年を考えると長時間させることはできないが、たまにはこうして自分から動くのも快感を上げる効果になるだろう。
「弘平、弘平っっ」
眦【まなじり】に皺が走るほど強く目を閉じて、うわ言のように俺の名を呼ぶ。その唇を覆うように口を合わせ、口中に溜まっていた唾液ごと舌を吸い上げた。
『じゅるっ・じゅるるっ・ぐじゅっ』
「ん……んっ、んふっ」
鼻だけで酸素を貪る寛史はかなり必死で、思わず笑いが込み上げてくる。
だけどそれは寛史の姿が滑稽だったからというわけではなく…………俺の求めに応じてくれようとしている姿が、ただ愛しくて。
「んっ、んはっ……もう、だめ、駄目だ……っ」
腰が限界を訴えたのか、俺のチ○ポを根元まで咥え込んだまま動けなくなってしまった寛史は、俺の肩に縋りついて身体を震わせはじめた。達するのが近づいてるってことだ。
そして俺の限界も、急速に迫ってきていた。
『ぐちっぐちっぐちっぐちっ』
「あ、あ、あ、あ、あ、」
密着していた身体をさらに抱き寄せ、最後の追い上げを仕掛ける。細かい突き上げで寛史の身体を揺らし、快感のスポットを刺激し続けると、内壁がさらに締まって俺のチ○ポも激しい快感に飲み込まれる。
(もう保たねぇ……!)
ションベンを限界ぎりぎりまで我慢していると冷や汗が出てくるが、それによく似た感覚が全身を襲い始めて、
「いくぞ、……っ!」
チ○ポの先端までせり上がってきていた精液を寛史の中に注ぎこんだ。──たまらない解放感に今度は快感で鳥肌が立つ。
俺の熱を感じて寛史の身体は一際大きく揺れ、
「弘平……っ、あ・ああああっっ!!」
俺の背中にしっかりと爪を立て、俺の腰に巻きつけた両足に力を入れて寛史は果てた。
生暖かい液体が俺の腹部を濡らし、その温かさになぜか安堵を覚える。
「寛史…………」
俺の背中に回していた両手がぱったりと布団に落ちる。指先だけがかろうじて動いていて、その動きをなぞるように指に触れた。
「こ……へ……」
寛史は濡れた胸板を大きく上下させ、息をつくのがやっとの様子で、だがたどたどしい動きで俺の指に指を絡めようとしてくる。最近は、こうしたスキンシップのようなものも自分からしてくるようになった。──それが、妙に嬉しい。
「悪かったな、ひどくして」
望みのままに指を絡め、額に浮き出た血管に唇を押し当てる。脈拍はまだ落ち着く気配がない。……無理をさせすぎたか。
だが、荒々しい息をついているその口は小さく笑みの形に歪み、
「いいんだ、私が……求めたんだから」
そんな可愛いことを言う。
(……くそ)
今日はもう打ち止めだと決めたばかりなのに、寛史の中に埋め込んだままのチ○ポが再び固くなり始めてしまったのに気づき、慌てて引き抜く。寛史の身体は一瞬の衝撃にぶるっと揺れたが、すぐに力が抜けたように布団に沈没した。
いつもより長時間ヤッてたんだ、かなり疲れたんだろう。目を閉じた寛史の顔は、眠りに落ちていくときのそれによく似ていた。
俺は布団の近くに置いておいたタオルで寛史の汗を拭い、端に寄せてあった毛布を寛史の身体にかけた。かいた汗をそのままにしておくと風邪を引きやすくなるし、何も着ないまま長時間過ごせばそれも風邪の原因になるだろう。
狭い布団に身体を捻じ込んで、寛史の隣に寝転がる。俺の気配に気づいたのか、寛史は寝返りを打つように俺に擦り寄ってきた。
「腹が大丈夫ならこのまま寝ちまえよ」
俺が遠慮なく注ぎ込むせいで、寛史は行為の後必ずと言っていいほど腹を下す。だが、そうなるとはわかっていても、高まった射精感を抑えて埋め込んだチ○ポを引き抜いてやろうという気にはならない。
快感も痛みも、俺が与えた刺激は全部寛史の身体に残したい。…………これが『独占欲』ってやつなのかもしれないな。
寛史は半分以上開かない目で俺を見ると、襲ってきた眠気に引きずられながら小さく声を洩らした。
「ちょっとだけ……寝るね」
無意識に(だろう)俺の胸に顔を寄せると、「おやすみ」の一言もなくすとんと眠ってしまう。この人の寝つきの良さは相当だ。
小さく寝息を立てる穏やかな表情を見ていると、つられたように俺も眠くなってきた。
寝ている間に寛史の身体が布団から出てしまわないように抱き寄せ、ほんの少し開いていた唇に軽く唇を押し当ててから目を瞑った。
誰にもやらない。
こいつは、────寛史は俺だけのものだ。
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