エンジンをチューニングする迄の新車購入してからの6年間は、定番の吸排気系チューン(マフラー、EXマニホールド、サクションパイプ、エアクリーナー等)とCPUチューンで、幾度となく仕様変更を繰り返し、ノーマルエンジンでも自分なりに納得のいく仕様になるよう試行錯誤しながら楽しんできました。しかし、ノーマルエンジンであるにも関わらず高回転を多用し過ぎたせいで、とうとうエンジンがブロー(とは云ってもリフターのヘタリが原因)してしまい、第1回目のエンジンチューンへとステップアップすることになったのです。さてここでノーマルエンジンベースでチューニングすると、どの位のものになるか1例を以下に紹介します。この表に記載されている馬力は絶対値ではなく、相対値としてノーマルの状態とそれぞれのステップを比較して下さい。馬力はエンジンの個体差(当たり・はずれ)や季節、天候、標高、その他様々な要因で変化します。
 カタログでは230馬力となっているZ32NAですが、シャーシーダイナモでまずその通りの馬力が出ることは稀で、大体210馬力前後となります。私が以前、車検対応マフラーにむき出しのエアクリーナーとチューニングROM仕様で測定した時に235馬力で、何も知らなかった当時、二十数万かけてチューニングしてカタログ値と殆ど変わらない馬力でガッカリしたことを思い出します。

車検対応
マフラー
チューンド
ROM
むき出し
タイプエア
クリーナー
フロント
パイプ
(触媒レス)
馬  力(ps)
ノーマル



189.0
ステップ1


203.6
ステップ2


203.9
ステップ3

209.5
ステップ4
210.9
ステップ5 226.2
実験に使ったZ32NAはマイナー後で、購入して1年・走行1万キロ未満、測定地は標高700メートルです。

排気系
 上記の表では最大馬力しか明記してませんが、実際はトルクの出方が各ステップにより微妙に違うので、運転した感じと数値とでは一致しない傾向にあります。容易に大馬力を望めないNAのチューニングに於いては、マフラー等を極端に太くして排気の抜けを良くし最大馬力を求めるより、適度な排圧を保ち中間トルクを厚く出来る適当な太さ(50〜60φ)のマフラー等を使った方がレスポンスが良く楽しめます。私も以前極端に太いマフラーを使用したことがありますが、4000回転以下は殆ど加速せず、町乗りには全く適していませんでした。しかしその代わり、最高速に関しては私が試した数本のマフラーの中で一番良かったことも事実でした。
 さて、もう一つ排気系で大事なチューニングと云えばエンジンとマフラーを中継するエキゾーストマニホールド(たこ足)があります。これもNAチューニングにとっては非常に重要なポイントで、かなりの効果が望めます。ただこれもパイプの太さ、集合までの長さ、集合形状によって特性が大きく変わるので、マフラーと同様に自分の乗り方に応じて製作する必要があります。ハイチューンならともかくノーマルエンジンベースでしたら中域のトルクアップと高回転での延びを期待出来る42.7φの等長が適当かと思います。
 マフラー、EXマニホールドの役割は何も排気効率を高めるだけでなく、NAにとって重要なチューニングポイントである音にも関係してきます。太さと形状、そしてパイプの厚さが主な要因となる訳ですが、一般的に肉厚で太いパイプの場合は低域の強い音となり、肉薄で細いパイプの場合は高域の強い音となります。これはパイプの中を流れる排気脈動(圧力波)に大きく影響し、パイプの径が細くなるにつれて流速が速くなり(脈動の波長が短くなり)音質が高域になるのです。そしてパイプの肉厚は薄くなればなるほど共鳴し響き易くなるのです。


写真1
写真2
写真3
ノーマルで42.7φの完全な不等長。片方の遮熱板を取り除いてみました。
市販品(現在は販売されていない)で42.7φのほぼ等長、純正交換タイプなので集合が短く、カーブも急になってしまう。
ワンオフ品で45φの等長

 左の写真は写真1を部分的に拡大したものです。全体的に溶接はもの凄い厚盛りでヘッドフランジに於いては、パイプを差し込み内側で溶接している為、溶接の段差で内径が狭まり非常に効率が悪そうです。また3mm厚のパイプを使用しています。 普通、ワンオフでEXマニを製作する場合、ターボ用に3mm厚、NA用に2mm厚のステンレスを使いますが写真3のEXマニでは1.6mmを使用してます。

吸気系
 吸気のチューニングは排気と同時に行うべきチューニングであり、排気と同じぐらい重要なものです。過給器のないNAは吸気の抵抗を如何に軽減し効率よくエンジンに空気を送り込むかが問題になる訳ですから、最良の方法は極端な話、エアクリーナーもサクションパイプも無くせば良いのです。しかし実際は諸々の事情によりそう云う訳にもいかず形式を変えることなく高効率化を目指すことになるのです。まず簡単に出来ることは純正交換タイプの高効率エアクリーナーに交換することです。これだけでも吸気抵抗はある程度軽減できます。そして更に吸気抵抗を軽減させる為には、むき出しタイプのエアクリーナーを使うことになるのですが、雨天時の対策と空気の吸入量を測定するセンサー(エアフローメーター)の汚れに関しても考慮する必要が出てきます。
 またエアクリーナーからスロットルまで延びるエアインテークパイプ(サクションパイプ)を太くそして滑らかに引き直すことも吸気抵抗の軽減につながります。私も以前の仕様ではむき出しタイプのエアクリーナーにエアインテークパイプの引き直しをしておりましたが、ノーマルエンジンにも関わらずかなり大きな吸気音がしていました。
 吸気に関してはNAと云えども慣性やラム圧と云った流体による加給もあるので、それらを上手く利用するのも手です。またインダクションボックスは、エンジンルーム内の熱気対策だけでなく、吸気効率の良いカールファンネルを理想的に使え、且つ空気の溜まりをつくることにより、急激な吸気の変化にも対応出来、エンジンレスポンスが良くなると云う利点を持っています。

CPU
 吸気の効率を上げ空気の吸入量が増えたら、当然それに見合った量の燃料を増やす必要があります。そうしなければ折角吸排気をチューニングしても十分にその効果を発揮することは出来なくなるのです。CPUのチューニングはノーマルで設定されている安全マージンを削り、如何にエンジン自体のポテンシャルを引き出してやるかになりますが、NAの場合、なかなか体感出来るほど大幅な馬力アップが望めないのが実状で、セッティングもなかなか難しいものになります。信頼出来るショップ等で現車合わせでのセッティングが得策ですが、自分でフューエルコントローラー類の電子パーツ等を使ってセッティングするのであれば、フィーリングが大切な尺度になるので、普段から自分の車の特性を把握する様、心掛ける必要があります。最近の電子パーツはかなり優秀で、細かい設定まで出来ますが、一度設定が決まったら変更しないと云うのであれば、チューニングROMをお勧め致します。
 以上、排気系チューニングと吸気系チューニングとCPUチューニングは相互に深く関係し、トータルでチューニングされる必要があることになります。

保 守
 マフラー等のチューニングパーツを取り付け、パワーやレスポンスをアップするだけがチューニングではなく、エンジン本来の性能を維持することもチューニングであり、経年による部品の疲労と劣化はパワー、レスポンスに大きく影響する要因になります。特にセンサー類に関してはエンジンを正常に作動させるのに必要なパーツで、知らず知らずのうちに劣化し、パワーやレスポンスのダウンにつながるケースがよくあります。先の吸気系の話に出たエアフローメーターも古くなってくると掃除するだけでは本来の性能を取り戻せなくなるので、頃合いをみて新品に交換した方が良いでしょう。私の場合、新車から乗っていたのですが、掃除はしていたものの、徐々に経年劣化していたことに気付かず、ある理由で新品に交換した時、明らかにレスポンスの違いが確認出来るほどでした。またタイミングベルトも経年によるベルトの延びが原因でバルブタイミングや点火時期がずれ、パワーダウンにつながるのでこれも頃合いをはかって交換した方のが良いでしょう。

以前の仕様
 私の以前のエンジン等の仕様を以下に紹介致します。正直な話、この仕様はまだ最終的なものではなく、ステップアップする為のデータ取りの段階でもありました。特に吸気系と点火系には改善の余地が大いにあるようです。今後、長い時間をかけてチューニングしていくことになると思います。

エンジンの塗装とサージタンク類のバフ掛けは自分でやりました。ろくな工具も知識もなく根性だけで磨き、毎夜毎夜の作業で1ヶ月半かかりました。鏡面並に磨いてありますが、1度エンジンをかけて熱が入るとすぐ曇ってしまうのが残念でなりません。

ピストン 91φオリジナル ほぼ3.3L、ちなみにノンスリーブです
カ  ム 272°10.35mm これ以上のハイリフトはかなりの加工が必要みたいです
動弁系 ソリッドリフター、チタンバルブリテーナー、リン青銅バルブガイド、強化バルブスプリング 高回転にはリフターのソリッド化が一番
その他 ポート研磨、燃焼室加工、面研、ブロック砂落とし、各部バランス取り・軽量化・強化 やっぱ重量合わせやバランス取りがエンジンチューニングの基本でしょうか
CPU R32用CPUによるツインエアフロ制御 Z32のCPUより細かなセッティングが出来るそうです
燃料系 ターボ用燃料ポンプ、ターボ用インジェクター、燃料ラインの引き直し
吸気系 サージタンク容量UP加工、ワンオフエアインテークパイプ、ワンオフツインインダクションボックス サージタンクの容量UPは果たして効果が・・・高回転での効果を期待します
排気系 ワンオフステンレス等長EXマニホールド、ワンオフステンレスマフラー マニ、マフラー共に薄い(1.6mm)ステンを使って軽量に努めています
冷却系 ラジエーターコア増し加工、10段オイルクーラー、ワンオフ導風板 冬場は冷えすぎて、夜中の走行では水温が50度以下に・・・。段ボールで塞がないと。
伝達系 シングルプレート強化クラッチ 圧着800キロなのでノーマルの600キロとさほど変わらず、渋滞は楽です
駆動系 1・2・3クロス クロスミッションノーマルミッション のギヤ比の違いによるエンジン回転数と速度の関係は別表をご覧下さい