「光の王」フレイアの住まう世界、ニズミレーネ。
その世界の最も高い山に築かれた建造物。「光の王」を象徴する装飾が至る所に見られ、美しい女神の像がその深部に置かれている。そこは「光の王」フレイアの大神殿であり、その世界の中心である。

その神殿の一室。二人の天使が落ち着かない様子でソファに腰掛けていた。

「みゅみゅみゅ、ミューゼル。も、もうすぐ麻莉亜様と会えるね。僕、凄い緊張しちゃって、声が震えちゃうよ。うまく挨拶出来るかな」

声を震わせながら、銀髪の青年、クロは隣にいる同じく銀髪の少女、ミューゼルに話しかけた。

「何を言っていますの、クロ。そんなことでは会ってそうそうお断りされましてよ? もっと堂々となさい」

と、厳しい口調で返すミューゼル。しかし、口で厳しいことを言っても、この部屋に入ってからクロの側にぴったりくっついている。落ち着かせようとしている……と言うよりは、自分も不安というのが正直な所の様だ。

今まで多くの神々の誘いを蹴ってきたミューゼルだが、いざ光の神第一位のフレイアに会うとなると、緊張をせずには居られない。フレイアに仕える訳ではないが、自分を取り立て、最も信頼を寄せる配下、八元将(ディルキス)の天使候補として、抜擢されたのはとてつもなく名誉なことだ。

「でもミューゼル、麻莉亜様だよ! 僕、すっごい憧れてて、本当に夢みたいだよ!」

本当に嬉しそうなクロを見て、逆に冷静さを取り戻すミューゼル。

(ああ、ほんとにクロったらデリカシーないんですから!)

目の前に居る自分に対して無反応な彼に、ちょっとした嫉妬を抱いていたりする。

「ミューゼル、クロ、お入りなさい」


隣の部屋からフレイアの呼ぶ声が聞こえた。

『はい!』

二人は同時に返事をしてソファーを後に、扉の前に立つ。

深呼吸をして姿勢を正すクロに、ちょっとだけ肩を寄せ、その温もりに安堵を覚えつつ、

「さ、行きますわよ」

恥ずかしさを隠すように扉を開けた。



(勇者屋キャラ辞典:蔵(クロ)ミューゼル・エスカティア
文:若菜綺目羅
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