遙か空の上にある魔帝マルスーンの空中魔城。
巨大にして荘厳な建造物。幾多の勇者達が挑み帰ってくることの無かった、人々にとっては恐怖の象徴がそこにあった。

その城を巻く回廊、そして王……すなわち魔帝マルスーンの元へのびる廊下の至る所にそれは張られていた。

「来たれ! 出番組合へ!」

この荘厳な城の中、至る所に掲げられたポスター。以前まで醸し出されていた重厚さは今や見る影もない。

これほどの自己主張に、どうにも複雑な表情を隠せない男がいた。

黒いマントに身を包んだその男の後ろには、ミノタウロスと、写真に堂々と写っている女性、シスカが控えている。

「……シスカ」

「はい、マルスーン様」

今の表情からは全く想像出来ないが、この男こそこの城の城主、魔帝マルスーンその人である。

「これ、お前だよな……? はが
せ……

「はい。
マルスーン様は至る所で将軍をスカウトし、さらには勇者達すらも殺さず、ミノタウロスにする。
それでそれぞれの出番が減っているのです!」

「や、しかしこれは……」

「さらには! 危ないからとか手を汚させたくないとか、毎度何かの理由を付けては、自ら先陣を切って出陣してしまうために更に我々の出番が減っているのです!
 そこで! 私はみんなの出番を増やすために出番組合を作り、このポスターを貼ったのです……!!」

力説するシスカ、主であるはずのマルスーンも勢いに押されてたじろぐ。

「ミノも入っているミノ〜♪」

とどめを刺すように一言加えるミノタウロス。

「わ……わかった、一月……いや、三ヶ月張っておいて良いから……」

この間に勇者達が来なければ良いのだが……。魔帝マルスーンは願うことしかできなかった。

(勇者屋キャラ辞典:「シスカレンリリン
文:若菜綺目羅
←BACKNEXT→

Copyright(c)2005, オリジナルイラストサイト 「勇者屋本舗」 All rights reserved.