平滑筋腫とは About Leiomyoma

筋肉は随意筋である横紋筋と不随意筋である平滑筋に大きく分けられます。
平滑筋は、血管や消化管を構成する筋層で、消化管の場合食べ物を腸の中へ運ぶ働きをします。
この筋層から発生する腫瘍を平滑筋腫といい、発生した部位により、食道平滑筋腫、胃平滑筋腫などと呼びます。自覚症状が無く、定期検診の内視鏡などで偶然発見されることが多いようです。
粘膜の下にある筋層から球状に発生するため、粘膜を押し上げて隆起するように増大し粘膜下腫瘍の形態を取ります。このため、表面には潰瘍などを形成することは少なく正常粘膜組織と一緒でツルツルしています。消化管の場合、壁内型、壁外型及び混合型があります。
小さいもので大きくならなければ、治療の必要はありませんが、増大傾向のあるものや悪性の疑いがあるものは外科手術の適用となります。大きさが小さければ、内視鏡下や胸郭鏡下での手術が行えますが、大きなものでは右開胸手術が必要になります。
食道に発生したもので開胸手術で取らなければならないほど大きくなるものは、珍しいようです。
よくある病気では、子宮筋腫も平滑筋腫の一種です。
こちら(駒込病院のHP)こちら(虎ノ門病院のHP1)こちら(虎ノ門病院のHP2)に食道平滑筋腫の記述がありました。

 

平滑筋腫と平滑筋肉腫 Leiomyoma & Leiomyosarcoma

平滑筋から発生する腫瘍のうち、良性のものを平滑筋腫、悪性のものを平滑筋肉腫といいます。
どちらも粘膜下腫瘍であるため腫瘍の一部を採取して行う細胞診が困難であり、術前の確定診断は難しいようです。このため、良悪性の判断は大きさが重要なファクターになります。長径5cm以上のものは積極的に悪性を疑い外科手術の適用になります。
悪性のもののほうが増大速度が早く、相対的に発見時の腫瘍径も大きい傾向があります。また、表面に潰瘍を形成すること、内部エコーが不均一なことが多いようです。
平滑筋肉腫は肉腫の一種です。肉腫とは、非上皮性の組織である、筋肉、脂肪、骨、神経などから発生する悪性腫瘍です。詳細は国立がんセンターのHPの軟部肉腫(成人)を参照されると分かりやすいと思います。これに対し、皮膚、気管及び消化管粘膜などの上皮性組織から発生するものは漢字で「癌」と表記します。肉腫と癌を総合して平仮名で「がん」と表記します。つまり、肉腫もがんの一種です。

が ん

上皮性悪性腫瘍
 
 胃癌、大腸癌、肺癌、食道癌、皮膚癌 など

肉腫

非上皮性悪性腫瘍

 平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、
 骨肉腫、滑膜肉腫、悪性神経鞘腫 など

癌はリンパ腺を伝わってリンパ行性転移を起こすことが多いのですが、平滑筋肉腫はリンパ行性転移を起こすことは少なく、血管を伝わって血行性に転移を起こします。このため、血液の集まる肺や肝臓に転移を起こすことが多いようです。
また、平滑筋肉腫は、抗がん剤や放射線が効きにくく、外科手術が第一の治療法となります。
予後は、悪性度により差があり、悪性度の高いものは転移を起こしている可能性が高く、転移を起こしている場合は前述のように抗がん剤や放射線が効きにくいため良くないようです。(参考:Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのSarcoma Nomogramなど。)
こちら(Dr.赤ひげ.com)こちら(虎ノ門病院のHP3)こちら(虎ノ門病院のHP2)に食道平滑筋肉腫についての記載がありました。

 

平滑筋腫とGIST Leiomyoma & Gastrointestinal Stromal Tumor

消化管の間葉系腫瘍のうち、C-kit遺伝子に変異を発現しているものをGISTと言いCajalの介在細胞に由来していると考えられています。詳しくはGIST研究会のページが参考になります。
例えば食道の非上皮性に発生した腫瘍のうち、C-kit遺伝子に変異を発現しているものをC-kit陽性であると言い、これはGISTです、そうでないものをC-kit陰性であるといい、良性なら平滑筋腫、悪性なら平滑筋肉腫とされます。GISTには完全な良性というのはなく、悪性度のリスク分類で低悪性度から高悪性度という表現をします。
GISTでは、手術のできない病変などに対して、STI571/イマチニブ(商品名グリベック)という薬がかなりの確率で奏効していますが、平滑筋肉腫には効きません。