大人の恋


 中堅コンピューターメーカーでシステム・エンジニアを勤めている綴喜は、有能な上に類い稀な美貌の持ち主で、社内では『クール・ビューティー』などと呼ばれていたりもする。
 そんな綴喜をことあるごとに口説いているのが、綴喜とは同期入社で営業マンの久城。久城は、若手トップの営業マンで、出世まちがいなし。おまけに、背も高く、風貌もさわやか。社内で『お嫁さんになりたい男』ナンバーワンといわれている男だ。
 綴喜は、ことあるごとに言い寄ってくる久代の言葉を冗談と決め付けて受け付けない。営業マンとしての久城のことは買っていても、そういう不埒な冗談で振り回されるのは勘弁だと思っていた。
 だが、後輩の大川と派遣先のプログラマー・槙野のキス・シーンをうっかり目撃してしまってから、綴喜の心も微妙に揺れ始めて……。

 サラリーマンです。社内恋愛です。受け、攻め、共にカッコいい系のカップルで、スーツがてんこもりです。
 ほんとうの大人の恋って、クールでもスタイリッシュでもない。危険な香りなんかもしない。逆に、大人だからこそ、なりふりかまわず、恋愛に真摯になれるんじゃないかなぁと思い、こういうタイトルになりました。カッコつけるだけではまだまだコドモ。カッコ悪いこともできるようになって、男はようやく大人の男になれるのかも、なんて思ったりもしてます。
 ちなみに、姫野の初めてのノベルズです。規定のページに合わせて書くのは初めてだったので、いろいろと勝手が違い、とても苦労したほか(もちろん、今でもさらさらなんて書けやしませんが)、脇キャラのソープ嬢・みかんちゃんを意外なほど皆さんに好意を持って受け入れていただいたことが、とてもうれしかった一冊でもありました。
 続編『大人の憂鬱』、番外編『恋の病』なんてのもありますので、合わせてお楽しみいただけると幸いです。