背徳の薇園 |
![]() 行成の好む服を着て、行成の好む形に髪を整え、行成の好む言葉を使う。 すべては幸成のため。行成の愛を失いたくないため。 晟良は、その一心で、今日も行成の求めるとおりの自分を、人形のように演じている。 晟良は家族の愛を知らない。 母は晟良を捨てて男を選び、父は晟良を顧みることなく死んだ。 両親の死後、晟良を引き取ってくれた叔母は、晟良を疎んじ、事あるごとに「ふしだらな女が産んだ子」と晟良を罵る。 だが、行成との偶然の出会いによって、その日々も終わった。 行成は、いささか強引とも言える手口で晟良を引き取り、以来、甥として、そして、自身の『秘密の恋人』として育てる。 季節になると薔薇で覆いつくされる豪奢な洋館での行成との暮らしは、晟良に安らぎをもたらし、行成は晟良にとって唯一無二の存在となった。 だが……。 二十歳の誕生日を目前に控えた晟良の心の中には、抑えきれない欲望がいつしか育っていた。 もっと、もっと、行成に愛されたい。 もう、子供だましのやさしいキスなんかじゃ満足できない。 二十歳の誕生日のプレゼントには、行成の大人のキスが欲しい。 けれども、晟良のその願いがかなえられることはなかった。 行成は肉欲を拒絶している。晟良にもそれを求めることを許さない。 今まで、自分は愛されていると思っていた。自分こそが行成の『恋人』だと信じて疑わなかった。 なのに、どうして、行成は自分をほんとうの恋人にしてくれないのだろう?晟良は血のつながらぬ叔父の行成を盲愛している。 行成の好む服を着て、行成の好む形に髪を整え、行成の好む言葉を使う。 すべては幸成のため。行成の愛を失いたくないため。 晟良は、その一心で、今日も行成の求めるとおりの自分を、人形のように演じている。 晟良は家族の愛を知らない。 母は晟良を捨てて男を選び、父は晟良を顧みることなく死んだ。 両親の死後、晟良を引き取ってくれた叔母は、晟良を疎んじ、事あるごとに「ふしだらな女が産んだ子」と晟良を罵る。 だが、行成との偶然の出会いによって、その日々も終わった。 行成は、いささか強引とも言える手口で晟良を引き取り、以来、甥として、そして、自身の『秘密の恋人』として育てる。 季節になると薔薇で覆いつくされる豪奢な洋館での行成との暮らしは、晟良に安らぎをもたらし、行成は晟良にとって唯一無二の存在となった。 だが……。 二十歳の誕生日を目前に控えた晟良の心の中には、抑えきれない欲望がいつしか育っていた。 もっと、もっと、行成に愛されたい。 もう、子供だましのやさしいキスなんかじゃ満足できない。 二十歳の誕生日のプレゼントには、行成の大人のキスが欲しい。 けれども、晟良のその願いがかなえられることはなかった。 行成は肉欲を拒絶している。晟良にもそれを求めることを許さない。 今まで、自分は愛されていると思っていた。自分こそが行成の『恋人』だと信じて疑わなかった。 なのに、どうして、行成は自分をほんとうの恋人にしてくれないのだろう? 思い煩う気持ちは、晟良をいけない遊びへと追い立てる。 行成の眼を盗み、禁じられた肉欲を解放する行為は、晟良を惨めにさせる一方で、たまらなく、刺激的でもあった。 叔母は正しかった。ふしだらな母から産まれた自分もまたふしだらなのだ。 どこにも出口のない思いを強引に押し開いたのは、清宮の家で園丁として働く高遠という男。 高遠は「あいつの代わりに俺が抱いてやる」と晟良に言い放つ。 愛しているのは清成だ。晟良の心は、今も、苦しいほどに清成を求めている。 けれども、身体は高遠に与えられる快楽の虜囚となっていき、そして……。 という感じの薄暗いお話です。 一点の曇りもないハッピーエンドというわけではありません。 「ある意味、これってハッピーエンドだよね」くらいの感じです。 そういうのがお好きな方、許せる方は、よかったら、読んでやってください。 拙作、『人形遊戯』や『桜淫』、『彼と彼たち』などと同じ系統になると思いますので、あれなら大丈夫とおっしゃっていただける方にはお許しいただけるのではないかと思います(ちなみに、自分では『人形遊戯』『桜淫』『背徳の薇園』の三作を、勝手にお屋敷シリーズと呼んでます)。 愛している人は抱いてくれない。 だから、別の男に抱かれたくなる。 行成と晟良は結婚しているわけではありませんので厳密には違いますが、書いていて、なんだか不倫カップルみたいだなと思っていました。 文中では、晟良は高遠のことを「愛してもいない男」と言い切っていますが、姫野には、晟良と高遠の間には、晟良と行成の間のそれとは、また違った種類の、何か情のようなものがあったように感じます。 行成には晟良を抱かない理由があり、また、高遠には晟良を抱く理由がありました。 ネタバレになっちゃうのでここには書きませんが、気になる方は、よろしかったら、読んで確かめてやってください。 イラストは吾妻巳緋さまです。 もう、すっかり、すーっっっかり、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。 吾妻さまがすごく早くお仕事に取り掛かってくださって、とても、助かりました。 この場をお借りしてお礼申し上げます。 ほんとうに、ありがとうございました。 吾妻さまには、表紙のほか、本文にも二枚カラーイラストを描いていただきました。 最初のは、行成と晟良のキスシーンなのですが、この時の晟良の、なんと、清楚で可憐なこと。 この子が、のちに、高遠との不倫とも言えるような愛欲に溺れていくのねーと思うと、胸に迫るものがあります。 二枚目のイラストとのギャップを、どうぞお楽しみください。 しかし、この二枚目のイラストを拝見して感じたのですが……。 しみったれた貧乏くさい部屋って、なんか、妙にエロいですね。エロいというか、猥褻な感じ? |