コートダジュールは甘い恋の香り |
![]() デュノワイエ伯爵の目的は、ニースでレベッカをとあるアメリカ人の富豪と『お見合い』させること。 レベッカはこの結婚話がいやでいやで仕方がない。 だって、アメリカ人はみんな下品で野蛮で礼儀知らずだという噂。そんな男の妻になんかなりたくない。 何より、実の娘である自分を家から追い出そうとしている父の魂胆が気に入らなかった。 だからといって、父には逆らえなかった。レベッカにとって、父は絶対なのだ。 このままでは、顔も知らないアメリカ人と結婚させられてしまう。 危機感を募らせたレベッカは、お目付け役のマダム・デュパンの目を盗んで、滞在していたホテルを抜け出して、ニースの町へと逃げる。 レベッカには、気に染まない結婚からのがれることのほかに、もう一つ、目的があった。 それは、母の形見の香水を母に送った人物を探すこと。 レベッカが幼い頃亡くなったレベッカのの母アイリスは、亡くなる間際に小さな香水壜をレベッカに渡して言ったのだ。 この香水は、母がこの世でただひとり愛した人が、母のために作ったもの。どうかその人にこの世で一番愛していたと伝えてほしいと。 レベッカは、手がかりを求めて香水の町グラースへ行こうとするけれど、ニースの旧市街で引ったくりに襲われてしまう。 その窮地を救ってくれたのはアッシュと名乗る青年。 アッシュは、レベッカがグラースへ行くつもりだと知ると、一日千フランの日当でガイド役を申し出る。 アッシュは、背が高くて、腕っぷしが強くて、時々意地悪なことも言うけれど、とても親切だった。何より、明るく人なつっこい瞳が魅力的。 レベッカはアッシュをガイドとして雇うことに決め、そして、レベッカとアッシュの四日間の恋が始まる……。 あとがきにも二点、お詫びを書きましたけれど、更に二点、追加させていただきたいと思います。 まず、アッシュの瞳の色と髪の色ですが、文中では『はしばみ色』となっています。 はしばみ色といえば、ヘーゼル。西洋人の瞳の色でヘーゼルといえば、光の加減によって薄いブラウンにも緑にも見える、ちょっと不思議な目の色のことらしいです。また、髪の色にもヘーゼルという言葉はあまり使わないみたい……。 どうしようか迷ったのですが、『薄茶色』と書くのはなんだか味気ない気がしたので、結局、そのまま『はしばみ色』にしました。 アッシュの瞳と髪の色は、ヘーゼルというよりは、日本語で言うところの『はしばみ色』=ちょっと黄色がかった薄茶色くらいの感じで受け取ってやっていただけるとありがたいです。 それと、ニースの市場のことですが……。 本の中では、レベッカはお昼のごはんの時間が過ぎてから散策したりしていますけど、実は、お昼くらいで店じまいだそうです。 なんだか、いろいろと嘘ついちゃっててすみません。 ほかにもあるかも……。 1950年代初頭のコートダジュールを舞台にしているのですが、意外と資料がありそうでないので困りました(泣)。 寛いお心でお許しいただけたら幸いです。 さて。 今回、編集さまから「ローマの休日っぽいお話で」とお題をいただいたので、そういう感じのお話を目指してみました。 レベッカは、ヨーロッパのとある小国の伯爵令嬢で、世間知らずの箱入りお嬢さま。 一方、アッシュは、ニースの港で荷揚げの仕事をしていて、古くて狭いアパルトマンにひとり暮らし。 ふたりは、ニースの旧市街で出会い、レベッカの母アイリスの香水を探してグラースへと旅をします。 いつしか、引かれ合うふたり。 でも、身分が違う。 それに、レベッカには結婚の話もある。 いくつもの困難を乗り越え、ふたりは無事結ばれるのでしょうか? それとも……。 などと、書いてはみましたが、ご安心ください。思いっきりハッピーエンドです。 姫野は、姫野史上最大のハーレク○ンっぽいお話になったんじゃないかと思っています。 きらきらしたかわいいお話にしたいなー、と思って書いたら、いつしかそんな感じになっていました。 こういうお話は初めて書いた気がするので、なんだか、書いている最中も無性に恥ずかしかったです……。 少しでも楽しんでいただけるとよいのですが……。 なお、イラストは吉崎ヤスミさまです。 吉崎さまにイラストをつけていただくのはこれで三度目なのですが、今回は、レベッカは着替えは多いわ、アッシュは常にTシャツにジーンズだわで、書きにくかったかも……。 ほんとうに申し訳ないです。 でもね、このアッシュがね、かっこいいんですよ〜。 特に、Tシャツの半袖の下からのぞいている二の腕のたくましさと、ジーンズのヒップのラインが、そりゃあ、もうって感じ。 本屋さんでお見かけになった際は、是非、是非、イラストだけでもご覧になってみてください。よろしくお願いします。 |