銀の王子と琥珀の姫


 エルウィンは高原の小国の末の姫。初恋の男の子と結ばれることをずっと夢見ている。
 そんなエルウィンの思いを突如打ち壊したのは、争いの予兆。
 エルウィンは、大国アクイラとの軍事同盟の証として、アクイラの王太子との結婚を余儀なくされる。いわゆる政略結婚だ。
 婚礼の席で初めて出会ったアクイラの王太子・ジークフリートは、顔だけはおそろしく美しいけれど、腹黒で、他人を欺くことなどなんとも思っていないような男だった。エルウィンとも、皆の前では仲のよい夫婦を演じながらも、ふたりの間に愛など欠片もない。
 所詮、自分は人質も同じ。政略結婚なんて、こんなもの。
 思う一方で、時折ジークフリートが見せるやさしさに、エルウィンは戸惑う。
 あまつさえ、ジークフリートには自分以外に結婚の噂のあった少女がいたことを聞かされ、エルウィンの気持ちはいっそう乱れて……。

 BLだとなかなか歴史ファンタジーを書く機会がないので(いや、姫野自身は書く気満々なのですが、需要があんまりないみたいね???)、今回、このような機会を得て、大変楽しかったです。
 一応、このお話は、中世でも割と早い時期を想定して書きましたが、調べれば調べるほど、中世ってロマンがない……。
 お砂糖もコットンもオレンジも、もちろん絹も、実は、東方からもたらされたものだったようで、中世前期のヨーロッパでは入手困難だったというあたりはまだよいのですが、お風呂=入らない。下着=洗濯しないし、そもそも着替えない。トイレ=垂れ流し。お食事=手づかみの上、みんなで奪い合って食べる。夜は、お城の床でみんなして雑魚寝……。
 うわー。書けない。そんなこと、書けないよぅ(泣)。
 ローマ帝国が築いた洗練された文化は、なぜか、中世ではあっさり途絶えてしまうようです。絵画にしても、ギリシアやローマの画家はあれほどすばらしいデッサン力を見せつけているのに、どうも、中世の絵って平面的なんですよね。どう見ても、時代を逆行しています。
 というわけで、いろいろと脚色もありますが、そこはそれ、ファンタジーということでお許しください。
 お話の内容に関しては、主人公の旦那さま・ジークフリートのほかに、幼なじみのフロリアン、略奪者・レオニダスと、ヒロインであるエルウィンをめぐる男性陣を三種三様ご用意してみました。全員タイプが違うので、ひとりくらいはちょっとは気に入っていただける子がいましたら幸いです。
 女の子に必要なのは、恋と、おしゃれと、恋バナのできるお友だち(更に、甘いお菓子があれば最高なのですが、お砂糖のない時代だしなぁ……)。 お姫さまだけどナカミは普通の女の子なエルウィンが、三人の男たちの間で少しずつ本物の愛に目覚めていくストーリーになっている予定です。
 さて、表紙をご覧になればおわかりいただけるとおり、天野ちぎりさまが、とってもとってもすてきなイラストを描いてくださっています。
 表紙だけでなく、本文イラストもすてき。なんと、ジークフリートが剣で戦うシーンが二枚もあって(対フロリアンと、対レオニダス、ですね)、どっちも超絶カッコいいのです! 本屋さんでお見かけの際は、是非、このイラストだけでも見ていただきたい! いや、ほんと、カッコいいので。