マフィアの花嫁〜オレンジの花をきみに〜


 藍は、花屋でバイトをしているごくごく普通の大学生。両親を早くに亡くして、今は育ててくれた祖母とふたり暮らしだ。
 そんな藍の前に、現れたのは、海運会社の社長だというイタリア人・ファウスト。ファウストは、登校途中の藍をさらい、イタリアへと拉致する。
 藍は何も知らなかったが、実は、藍の祖父はマフィアのボスだったのだという。次期後継者の最有力候補は、現在のボスの養子・ファウストだが、ファウストを快く思っていない連中は、先代の孫である藍を担ぎ出して傀儡政権を作ろうと画策しているらしい。
 全くその気もないのにマフィアの後継者争いに巻き込まれてしまった藍を待っていたのは、マンションの一室に軟禁される日々。すべての情報から遮断され、自由はいっさいない。
 何よりもつらいのは、ファウストが藍に向ける冷たい眼差し。それほどに自分は憎まれているのかと、胸が痛くなる。
 なんとかして日本に帰りたい。そう思った藍は、ある日、隙をついて逃げ出そうとするが、すぐにファウストに見つかって連れ戻されてしまう。
 怒り狂ったファウストは、逃げ出した罰だとばかりに、藍を手ひどく陵辱した。
 以来、ファウストによる陵辱の日々が続き、藍は……。

 てなわけで、舞台はイタリアです。
 といっても、前半は軟禁生活なので、マンションの一室からほとんど出ないんですけど、後半は南イタリア・プーリア地方に移動して、観光地めぐりしたり、美味しいもの食べたりしてます。ふたりと一緒に南イタリア観光している気分にでもなっていただけたら幸いです。
 それと、今回、藍は日本人ですけど、ファウストは生粋のイタリア人です。こういう場合、いったい、ふたりは何語でしゃべってるんだろう?、ってのは、お話を書く上でも相当悩むところではありますね。
 よくあるパターンそのいち ファウストは天才なので日本語も堪能だった。
 よくあるパターンそのに  藍がイタリアに興味を持っていてイタリア語が話せた。
 よくあるパターンそのさん 何語かわかんないけど、なんか言葉が通じてる。
 で、どれにするか考えて、結局、そのどれでもないパターンそのよんを今回は採用してみることにしました。
 つまり、言葉が通じない。
 けれども、全く意志の疎通がかなわないと話にならないので、通訳のウノさんに登場してもらうことにしました。ウノさんはナゾの人ですが、まあまあ美味しいキャラになったのではないかと思っています。
 なんにしても、一度、言葉の通じない恋人同士というものを書いてみたかったので、今回が念願がかなってちょっとうれしいです。新井昭乃さん作の『Adesso e Fortuna 〜炎と永遠〜』なんか聞きながら読んでいただけると、雰囲気出るかもです。