寵愛プリンス


 アリゾナの砂漠で師匠に置き去りにされた俺―――高崎蒼夜は、なんとかたどりついたマカオのカジノでディーラーとして働いている。腕に覚えはあるつもりだけど、勤めて間がないため新人扱いであまり仕事を任せてもらえないのが、現在ちょっとだけ不満。
 そんなある日、俺の勤めているカジノに、最近マカオをにぎわせているハイ・ローラー(カジノの上客)がやってくる。
 噂のハイローラーは、なんでも、アラブの某王国の王子で、相当の放蕩息子らしい。現在は豪華客船にて各国を周遊中とのことだが、実際には放蕩が過ぎて国には居づらくなったという噂だ。
 ヤツの名はアイヤーシュ・アル=アズハル。金髪碧眼の超絶美形。
 アイヤーシュの噂どおりの金遣いの荒さを目にした俺は、思わずアイヤーシュを非難する言葉を口にしてしまうが、それをうっかりアイヤーシュに聞かれてしまう。
 そのせいか、仕事中にアイヤーシュにからまれ、サシで勝負する羽目に。
 ついでに、
「きみが欲しい。私が勝ったらきみをいただこう」
 なんて口説かれて……。

という感じで始まるお話です。
 結局、このあと、蒼夜はアイヤーシュの船でディーラーとして働くことになるのですが、アイヤーシュには、何か秘密がありそう。それが何かわからないまま、蒼夜はアイヤーシュに翻弄されるばかり。おまけに、アイヤーシュの部下からは「おまえは王子に相応しくない」なんて言われちゃったり。
 さて、蒼夜の運命はいかに???
 って、アイヤーシュとラブラブで終わるのでご安心を(笑)。
 今回はお初の多いお話でした。
 まず、初アラブです。一応、アラブです。でも、全然アラブじゃないです……。編集さんが、アラブの王子さまが出てたら舞台はどこでもいいとおっしゃってくださったので、いろいろと考えているうちに、なぜかマカオのお話に……。自分でもなぜこうなったのかよくわかりませんが、お金使ってる感じのお話にはなったのではないかと思います。
 もう一つ初なのは、このお話には、なんと、女の人が欠片も出てきません。たとえば食堂のおばちゃんひとりだとしても、なんとか女の人を出したがる姫野としては珍しいんじゃないかと思います。意識したわけじゃないんですけど、気がついたらそうなってました。
 更に、初なのが、今回はエッチ減らしてくださいと言われたこと(快挙だ! 今まで「増やしてください」しか言われたことなかったのに!)。そんなわけで、エッチは抑え目にして、その分、ローマの休日やったり、月夜のプールに飛び込んでみたりと、ちょっとロマンティックなシーンを増やしてみました。
 姫野は旅行気分で楽しく書かせていただきました。読んでくださった皆さんにも少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。