HOLD ME TOUCH ME


  【SIDE1】
 深まりゆくある秋の夜、大学生の和田森省吾(わだもり・しょうご)は、ふとしたことから、男に追われている少年を助ける。少年は名を菅野黎(すがの・れい)といい、男を相手に援助交際をしているのだとうそぶく。
生意気で、自堕落で、モラルの欠片もないような黎を省吾は疎ましく思うが、それでも、なつかれると邪険にはできない。仕方なく、面倒を見てやっているうちに、省吾は黎の悲惨な生い立ちを知り、そして……。
【SIDE2】
 省吾と黎が出会って三年。17歳になった黎は、派手な見かけとは裏腹にそれなりに堅実に日々を過ごしている。そんな黎の胸の中は、いつも省吾のことでいっぱい。自分は省吾に救われた。あの時省吾に出会わなかったら、今の自分はなかっただろう。その思いが、黎の思慕を省吾へと一途に向かわせる。たとえ、報われないとわかっていても。
 そんなある日、省吾に縁談が持ち上がる。相手は、やさしく、愛らしく、家庭的な、自分とは似ても似つかない女性。黎は、絶望し、省吾から離れることを決意する。このままそばにいてもつらいだけ。どうせ、最初から叶うはずのない思いだったのだ。
 だが、しかし、そんな時、省吾が山で遭難したのかもしれないことを知り、黎は……。
【rebirth】(仮)
 できあがったカップルがただいちゃいちゃしてるだけの、その後の短いお話(またかよ)。ノベルズにしていただくにあたって、書き下ろさせていただきました。
 以上、三本での構成となっています。

 えーっと、2000年、ですかね?ですね。その2000年に小説ショコラに前後編で掲載していただいたものをノベルズにしていただきました。
 【SIDE1】【SIDE2】共に、雑誌掲載時とほぼ変わっていません。
 【SIDE1】が省吾の視点による出会い編で、【SIDE2】が黎の視点によるハッピーエンド編(一応)。
 どちらも、せつない純愛系となっている予定です。
 黎は、淋しがり屋で甘ったれなくせに、意地っ張りで、一途で、なおかつ自虐的と、いかにも姫野の好きそうなキャラ(笑)。省吾さんのほうは、雑誌掲載時には、皆さまから「煮え切らない男」と散々言われてしまいました(あうー)。書き下ろしの『rebirth』の中では、決めるところは決めてくれていると思いますので(たぶん)、許してあげてください。でも、省吾さんがしっかりしてくれた分、黎は幼くなっちゃったかも。『rebirth』では、少々、幼児退行しているような気がしないでもないですが……、ま、これも、愛のせいよね、ということで(笑)。
 ゴージャスでも、デンジャラスでもなく、とっても庶民的な(いっそ、貧乏で所帯くさいとも言える?)ふたりのお話ですが、楽しんでいただけたら幸いです(そして、泣いていただけたら本望)。
 挿絵は杉原チャコさんが担当してくださってまして、実は、既にキャララフを拝見したのですが、省吾さん、黎、共に、とってもすてきに描いてくださっていますので、楽しみにしていてくださいね。
 【SIDE2】では【SIDE1】よりもちゃんと三年分年を取っているのですよ! 中学生から高校生になった黎はともかく、最初から大人だった省吾さんの三年分の違いを微妙に描き分けてくださってます。
 やっぱり、漫画家さんってすごいですね(感嘆)。
 あと、健ちゃんは前回と随分雰囲気違いますし(前回は宗真さんがラテン系な健ちゃんを描いてくださってました。杉原さんのはクール系? もちろん、どちらの健ちゃんもカッコいいですよ♪)、それよりも、何よりも! 雑誌掲載時には描いてもらえなかった雪生を、今回描いていただけたのがとてもうれしい!(実は、好きなキャラ。黎以上に自虐的なくせに、その自覚がないところが)しかも、ゆっきー、かわいいんですよ。
 全員、挿絵の指定が入るのかどうか、今のところは不明ですが(※今回はゆっきーが入って健ちゃんが外れました)、もしも、入らなかったら、これは姫野だけのお楽しみってことになっちゃいますね。うふふっ。作者特権だ。うふふのふ。←気持ち悪いって。
 あと、画像では残念ながら再現されてはいないものの、タイトルの文字の細いフチは、実は、シルバーなんですよ。うわー。六色刷りだ〜♪ ゴージャス〜♪ よかったら、こういうところもチェックしてやっていただけるとうれしいです。姫野の本にしては珍しい真っ赤な表紙ですが、派手過ぎず、シックで、それでいてかわいらしいデザインに仕上げていただきました。杉原チャコさま、デザイナーさま、ありがとうございます。
 それと、私ごとですが、この本が、新書・文庫を合わせて、姫野の三十冊目の本になります。このお仕事を始めさせていただいてから9年で三十冊って、遅いのか早いのかよくわかりませんが、皆さまのお陰で心弱き根性なしの姫野でもなんとかここまで続けてくることができました。
 ほんとうにありがとうございます。
 相変わらず無能というか、なんだか有能の道からはどんどん離れていっているような気もする今日このごろ。こんな姫野ではございますが、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

※その記念というわけでもないのですが、『HOLD ME TOUCH ME』から数年後の、省吾さんと黎のお話『years』を、サウンドノベルにしてみました。中身は以前同人誌で出したアレと同じです。textのページからダウンロードできますので、よかったら読んでやってください。