ジェリーフィッシュの海


 高橋郁哉は大学で研究室助手を務める28歳。くらげの研究で博士号を持っていると言えば聞こえはいいが、なんのことはない、不器用な性格が災いして就職に失敗し、そのまま、ずるずると大学に居座っていただけ。そのうち、運よく助手の座が空いて、現在に至ってはいるけれど、上司である小笠原教授は横暴極まりない人物だった。いいように顎でこきつかわれて、郁哉はへとへとの毎日を送っている。
 そんなある日、郁哉はいきなり小笠原教授に呼び出され、「うちの娘、珠子を嫁にもらってくれないか」と言われる。
 これって、逆玉?
 悩む暇もなく、あれよあれよという間に、珠子と入籍し、イタリアへのハネムーン・ツアーに出かけた郁哉だったが、交際期間ほとんどゼロの珠子との仲はしっくりいかない。ハネムーンだというのに、エッチどころがキス一つできないありさまだ。
 とまどう郁哉は、同じツアーの参加者で、やっぱり、身重の新妻とうまくいっていないらしい真崎圭司と知り合う。真崎は郁哉と同じ年ながら、飲食店を経営する青年社長だった。あくまでもマイペースで、イタリア人よりラテンな男、真崎に郁哉は翻弄され続け……。

 イタリアはベネツィアを舞台に、ロマンティックを目指してみました。とはいえ、実は、またしても単なる食べ歩きツアーになってしまっただけかもしれません。それでも、郁哉たちと一緒にちょびっと旅行気分を味わっていただければ幸いです。シックなような、ポップなような、コメディのような、シリアスのような、なんというか、一口では言えない、いろんな部分のあるお話ですが、一応、大人の恋愛、かな?だな?(←自信なし)あと、妻帯者同士とはいえ、不倫とか、そういうドロドロした愛憎劇ではありませんので、期待しちゃった人はごめんなさいですぅ〜。
 ところで、今回は、な、な、な、なんと、今市子さんに絵を描いていただけることとなりました。ああっ。感涙っっっ。苦節6年。あきらめずに、なんでも言ってみるものなのねー。